「さて、と。ここは・・・」
光が収まると、俺が立っていたのは森の中だった。
マップを確認すると、ちょうど廃虚と荒野の真ん中くらいの位置だ。
このまま森の中で潜みながらプレイヤーを狩るのもいいが、さすがに木の枝が邪魔だ。
とりあえず、プレイヤーが集まりそうな廃虚の方に行ってみよう。
俺は跳び上がり、枝の上を進んで廃虚へと向かっていった。
もちろん、なるべく揺れを少なくして気づかれにくくすることも、道中で見かけたプレイヤーをヘッドショットすることも忘れずに。
そして、廃虚から100mほどにあった高い木に登り、そこから様子を確認した。
プレイヤーがいないか探していると、黒い鎧を身に纏った、メイプルの姿を確認した。
なぜかお絵かきをしていたが。
もちろん、魔法陣とかそういう類ではなく、単純に誰かの似顔絵だが。
索敵も何もしておらず、いっそ無防備と言えるほどに隙だらけだが、先日メイプルのスキルを見てしまったからだろうか、倒せる気がまったくしない。
「・・・まぁ、やるだけやってみるか」
とりあえず、ダメ元で一発攻撃してみることにした。
【鷹の目】によると、俺とメイプルの距離は132m。【百発百中】のおかげで落下位置まで計算する必要はないし、お絵かきに夢中だからじっくり狙いを定めることができる。
外さないようによく狙って・・・矢を放った。
放たれた矢は狙いたがわずメイプルの頭に迫り、カンッ!と音が鳴ってそうな感じにはじかれてしまった。もちろんメイプルにダメージはなく、衝撃でこけただけで、慌てて周囲をキョロキョロしながら探しているが、俺がいる方向には目を向けていない。
「・・・わかってはいたが、実際に見るとけっこうショックだな・・・」
一応、【黒竜ノ息吹】の効果が最大になる距離のはずだが、【魔弾の射手】を使っていないとはいえ、ノーダメージというのは思わず頭を抱えてしまう。
とはいえ、最初からメイプルを倒そうとしていたわけではないから、おとなしく他のプレイヤーを狩ることにした。
幸い、今の狙撃で位置はばれておらず、誰も俺に気づいている様子はない。
運がよかったことに感謝しながら、俺は再び弓を構えて黙々と狙撃を続けていった。
* * * * *
イベントが開始してから1時間くらいたったところで、俺は場所を移動することにした。
理由は、とうとう方向がばれてきたようで、俺から攻撃できないところに隠れるプレイヤーが増えてきたからだ。これ以上は、さすがに分が悪い。
潔く、次の狩場に向かうことにした。
次の目的地は、俺の初期地点から廃虚の反対側にある荒野だ。
あそこは高台や岩場も多く、狙撃にはうってつけの場所だ。
俺は樹から降り、再び枝の上を渡って荒野へと向かった。もちろん、通りすがりのプレイヤーを狩ることも忘れない。
移動し始めてから30分くらいで、荒野に到着した。
遠巻きから確認すると、それなりにプレイヤーが集まっているらしく、そこかしこで戦闘が起こっていた。これなら、漁夫の利も狙いやすい。
とはいえ、荒野の外から狙撃し続けるというのも効率が悪い。狙撃しながら徐々に近づいていこう。
俺は気づかれないように近づきながら、合間に狙撃して順調にプレイヤーを倒していった。
プレイヤー同士が戦ってくれているため、容易に漁夫の利を狙ったり2人同時に倒せたりしている。
荒野の中に入るころには、ここだけですでに30人ほど倒せている。さらに、ほとんどがヘッドショットだから、与ダメージもそれなりに期待できるし、被ダメージはいまだ0だ。この調子なら、いい順位をマークできそうだ。
「いたぞ!あいつだ!」
だが、荒野に足を踏み入れた途端、奥から14,5人のプレイヤーがぞろぞろと現れた。
俺を危険視して一時的に共闘することになったのか、元から上位を狙って手を組んでいたのかはわからないが、俺からすればいい的でしかない。
「弓矢なら、近づけばいけるぞ!」
「よし、前衛と後衛で別れてあいつをやるぞ!」
俺のことを知らないプレーヤーは、これから狩られるとも知らずに陣形を組んでいく。
そして、俺は陣形が整うまで待っているほどやさしくはない。
すぐに矢を3本構えて、前衛の隙間を通して後衛の頭を撃ちぬいた。
「・・・え?」
何が起こったのかわからなかったのか、前衛も後衛も呆然と射抜かれたプレイヤーが立っていた場所を見つめていた。
その隙に、俺はさらに矢を3本構え、残りの後衛の頭を撃ちぬいて光に変えた。
「っ、は、早くしろ!このままだと・・・ぐあっ!」
慌てふためく前衛に俺は容赦なく矢を放っていき、残りが5人になったところでようやく武器を構えて俺に突撃してきた。
「うおおぉぉ!!」
「くそったれぇ!」
「・・・ったく、甘いな」
俺はため息をつきながら、右手に短剣を取り出した。
前衛の5人は勝てると思ったのか笑みを浮かべているが、俺は現実を突きつけるかのように5人の間をすりぬけ、その間に全員の首を跳ね飛ばすように短剣を振るって全員を光に変えた。
俺にとって、短剣に限らず片手剣も槍も
「さて、狩りの続きを始めるか」
そう呟いて、俺は岩陰に隠れながら次の獲物を探すために走り始めた。