「何者だ?」
あまりの異様さに動けないでいると、ゴルゴーンの方から俺たちに反応を示してきた。
「なんだ、小さな人間が2匹だけではないか。私を討ちに来たというのであれば、拍子抜けもいいところだ」
俺たちとしても来たくて来たわけではないのだが、NPC相手に言っても仕方のないことだとわかっているから、先の言葉を待つ。
「だが、貴様らも私のことを化け物だと言うのなら、石となって朽ち果てるがいい!」
「っ、避けろ!」
叫び声と共に目が光った瞬間、俺はミィを突き飛ばして俺もミィとは反対側に飛びのいた。
次の瞬間、俺とミィの間に紫の閃光が奔り、閃光の通った後がコンクリートのような灰色の石に変わっていた。
「まさか、石化するの!?」
「どのみち、当たらない方がいいな。俺が前にいって斬るから、ミィは後ろから援護を頼む!回復できないから、攻撃は絶対にくらうなよ!」
目の前の敵がゴルゴーンだと確信し、警戒と作戦指示を同時に出しながら、俺も抜刀してゴルゴーンに接近した。
「噛み千切ってくれる!」
だがゴルゴーンも髪が変化している蛇を操って俺にけしかけてきた。
「危なっ!」
間一髪、体を捻って避けることができ、すれ違いざまに長刀を一閃した。
俺としてはダメもとだったが、意外にもその一閃で蛇は両断されて無力化することができた。
しかも、ほんのわずかだがゴルゴーンにダメージが入っている。
「なるほど、取り巻きの蛇は1発でやれるのか」
取り巻きの蛇にはHPバーが見えないから、破壊不可オブジェの扱いかと思っていたが、むしろ逆だったようだ。
であれば、やることは決まっている。
「ミィ!できるだけ周囲の蛇を狙ってくれ!」
「無茶を言わないでよ!」
俺のオーダーに、ミィは文句を言いながらもできる範囲で応えてくれ、俺を阻もうとする蛇を迎撃してくれた。
とはいえ、俺を巻き込まないようにしているため、どうしても打ち漏らしはでてくる。
だが、圧倒的に数が少なくなった今なら、すべて斬り伏せながら近づくことができる。
「小賢しいっ!」
そしたら、今度はゴルゴーンの苛立ちの声と共に、蛇からもさっきと同じような紫の閃光が放たれた。
とはいえ、本体が放つものよりも範囲は狭いため、体を捻ったり、その勢いを利用したバク転なんかで回避できる。
ミィの支援もあって簡単に本体に近づいた俺は、蛇を足場にしながら跳びまわって長刀で斬っていく。
やはり蛇を攻撃するよりもダメージが入るようで、みるみるうちにHPバーが減っていく。
「おのれ、子虫の分際で!!」
「おわっ!」
HPが7割をきったところで、ゴルゴーンがその巨体をうねらせて俺を弾き飛ばした。
俺は受け身をとったおかげでダメージはなかったが、せっかく詰めた間合いを離されてしまった。
「ちっ、こっからが本番か。ミィ、HPは?」
「大丈夫。ヘイトがクラルに向いてたから、あまり減ってないよ」
近距離で張り付いた俺にゴルゴーンのヘイトが向いていたおかげで、ミィの方にはあまり蛇が来なかったようだ。
だが、ここからはそうもいかないだろう。
その証拠に、
「塵も残さず消し去ってくれる!」
ゴルゴーンの髪から生まれる蛇が先ほどまでの2倍以上にまで増え、やたらめったらと閃光を放ち始めた。
ここまでされたら、俺はともかくミィがすべて避けるのは難しいかもしれない。
こうなったら、
「くそっ。悪い、ちょっと失礼するぞ!」
「えっ?わわっ!?」
俺は一言謝罪を入れてから、無理やりミィをおんぶして走り始めた。
幸い、魔法使いであるミィの装備は比較的軽いものが多いため、俺のSTRでもミィを背負いながら普段と変わりない速度で走ることができる。
とはいえ、さすがにこの状態でアクロバットをするのは難しいが。
「ミィっ、このまま魔法であいつを攻撃してくれ!」
「わ、わかった!さっきのやつも使うね!」
俺の指示に頷いたミィは、無差別広範囲攻撃である【炎帝】を使わずに、先ほど俺があげた【サンフルーツ】も使用して、通常の炎魔法をメインに使用してゴルゴーンにダメージを与える。
ゴルゴーンの物量に任せた無差別砲撃もかなりの脅威だが、巨体故に動きは遅いし、隙間も多い。
足下に気を付ければ、攻撃をすべて躱すことも十分可能だ。
このまま走り続けなければいけないのはきついが、たまにシオリのスピードに付き合わされることもあって、VR内での体力もそれなりに向上した。今のペースなら、ゴルゴーンが倒れるまで走り続けることも十分可能だ。
そして、走り続けること十数分、ゴルゴーンのHPが後一撃で倒せるところまでになったところで、再び行動が変化した。
「おのれおのれおのれ!こうなれば、我が身を異形に落としてでも貴様らを殺してくれる!!」
ゴルゴーンがそう言うと、紫の蛇を引っ込めたて自らに集中させ、紫の巨大な物体のような姿になり果てる。
だが、頭部だろう部分には穴が空いており、そこから眩いほどの光があふれ出てくる。
「っ、【
それを見て、俺の直感がけたたましく警報を鳴らし、それに従って【
「溶け落ちるがいい!【
その陰に隠れるのと、ゴルゴーンの成れの果てから閃光がほとばしったのは、ほぼ同時だった。
閃光は盾に直撃し、それでも俺たちもろとも破壊せんと言わんばかりに勢いを強め、機械兵は押し戻され盾にひびが入り始めてきた。
「やばいやばい!ミィ!早くとどめを!」
「ちょっと待って!MP回復がまだ!」
俺たちとゴルゴーンの間に機械兵を挟んでいる以上、曲射弾道か直接ダメージを与えられる攻撃手段がほしいところだが、ミィは度重なる攻撃でMP切れだし、俺も攻撃の範囲外に機械兵を生み出すことができない。
そして、機械兵の盾は、もって後数秒。ミィのMP回復を待つ時間はない。
「くそっ、こうなったら、イチかバチかだ!【クイックチェンジ】!ブラックスピア!」
賭けに出なければいけないと判断した俺は、【クイックチェンジ】で装備を弓矢に変更し、【魔弾の射手】で念のためにとイズから譲ってもらった攻撃力の高い槍を取り出して弓につがえた。
そこから、さらにダメ押しでスキルを発動していく。
「【ピアーシングアロー】!【速射】!【拡散】!」
機械兵ごと貫くために防御無視のスキルを発動させ、少しでも当たる確率を上げるために矢を増やすスキルも重ね掛けし、機械兵を巻き込むようにしてゴルゴーンに放った。
「いっ、けーーーーーーー!!!」
放たれた槍は、まず機械兵に直撃し・・・そのまま貫通して、ゴルゴーンに襲い掛かった。
「ァァァアアアアアアア!!!」
貫通した槍はその大部分がゴルゴーンへと突き刺さり、閃光が収まった時にはすでにゴルゴーンの姿はなかった。
本編とは関係ないですが、自分はすでに「冠位時間神殿ソロモン」のアニメが待ち遠しくなっています。
でも、まずはその前に「神聖円卓領域キャメロット」の映画をやるんですよね。
それも見たいと思っていますが、個人的にはこっちでも翁が一番気になりますね。
いい加減【備前長船長光】って打つのがめんどくなったので、これからは長刀で統一しようと思います。