ゴルゴーンが消滅したのを確認した俺たちは、疲労が重なってドサッと床に座り込んだ。
「はぁ、はぁっ、ミィ、大丈夫か?」
「う、うん。HP的には・・・」
「そうか・・・俺も、似たようなもんだ」
今回の戦いでは、ゴルゴーンからダメージを受けるようなことはなかったものの、最後が心臓に悪すぎた。
まさか、あんな隠し玉があるとは思わんって・・・。
「ブラックスピアは・・・あぁ、やっぱ壊れちまったか」
やはり300倍の消耗には耐えられなかったようで、インベントリからブラックスピアの名前は消えていた。
一応、イズにも1発で壊れかねないことは話した上で、イズも了承して俺にくれたものだが、やはり1回で壊れてしまうと申し訳なく思ってしまう。
いっそ、【破壊不能】持ちの武器があればいいのかもしれないが、そんな贅沢なことも言ってられない。
やっぱ、割り切るしかないんだろうなぁ・・・。
「あっ、クラル!宝箱が出てきたよ!」
思わずぼうっとしていると、ミィから声をかけられた。
ミィが指を差す方を見れば、宝箱が2つ現れていた。
おそらく、今回の報酬だろう。
「さて、なかなか厄介なボスだったんだ。報酬も期待していいんだろうな」
「かもね」
宝箱の中身に思いを馳せながら、俺とミィは宝箱の前に立って、同時に開けた。
結果として、俺とミィの中身はスキルの巻物だった。
「スキルって。もしかして・・・」
「とりあえず、取得してから効果を確認しよう。俺が先にやる」
若干躊躇するミィに変わって、俺が先にスキルを取得することにした。
開いた巻物は消えて、スキル【ゴルゴーン】の取得を知らせるメニュー画面が現れた。
それを見てから、俺は【ゴルゴーン】の効果を確認した。
【ゴルゴーン】
使用するとゴルゴーンと同じような姿に変身し、【ゴルゴーン】に属するスキルを使用できるようになる。
使用可能回数は1日1回。
「ゴルゴーンと同じような姿に変身って・・・」
「ま、まさか、あんな女の人みたいな?」
「・・・とりあえず、今ここで使ってみるか」
説明文に不安しか感じないが、使わずに眠らせるのも惜しいから、ミィ以外の人目がないここで確かめることにした。
「【ゴルゴーン】」
俺がスキル名と唱えると、俺の体が黒い光に覆われ、すぐに解かれた。
視線は・・・変わっていないから巨大化とかはしていないな。
足元も・・・蛇になっているわけでもない。
と、なると・・・
確かめにインベントリから手鏡を取り出そうと操作していると、ミィから遠慮がちに声をかけられた。
「く、クラルくん」
「ん?なんだ?」
「その、髪と目が・・・」
「髪と目?」
やっぱ、そっちが変化したのか。
とはいえ、いったいどうなっていると・・・
「・・・なんだこりゃ」
手鏡で自分の顔を確認すると、俺の髪が黒い蛇に変わっており、目も瞳孔が縦に細い長方形のような形になっていた。
よく見れば、爪も鋭いものに変わっている。
だが、見た目の変化らしい変化といえばこのくらいだ。
「まぁ、こんなもんか」
「なんか、落ち着いてるね?」
「そりゃあ、メイプルのとんでも変身と比べればな・・・」
「あー・・・」
あっちは天使になったり悪魔になったりだから、相対的にマシに見えてしまう。
ミィも俺の言葉に納得したのか、曖昧な声を上げながらも【ゴルゴーン】を取得した。
「私はどうなるかな。【ゴルゴーン】!」
もはや興味すら持っているようにスキルを唱えると、今度はミィは赤い光に包まれ、髪の蛇も赤色になっている。
「なるほどなぁ。髪の色によって変わるのか。これはこれで面白いな」
少なくとも、一様に紫になるってよりは、多様性があっていいと思う。いや、俺とミィ以外に誰か取得するのかは知らんけど。
それと、地味ではあるが全ステータスが20上がるようで、デメリットも特にないようだった。
まぁ、見た目の変化は思ったより・・・
「ん?どうしたの?」
引き続き効果を確認していた俺の動きが止まったのを不審に思ったのか、ミィが尋ねかけてきた。
俺は、少し悩んだものの、あまり受け止めたくない事実を告げることにした。
「えっとな、スキルであれみたいなでかい姿になれるらしいぞ、なんか」
「え?」
俺もまさかとは思ったが、今のうちに確かめるだけ確かめておかねばと、渋々使うことにした。
「【変転の魔】」
スキル名を呟くと、再び俺の体が黒い光に包まれ、次の瞬間には俺の視点が目算で5,6mほどになっていた。
「ちょっ、クラル!なにそれ!」
「これが、さっき言った化け物の姿に変身するスキルだが・・・なるほど、こんなことになるのか」
見た目で言えば、ゴルゴーンの最初の姿がまんま俺に置き換わったようなものだ。
というか、下半身が蛇になっているから、動くのがむずい・・・。
「ねぇ、それってどういう効果になっているの?」
「えっと、HPは10000で固定、すべてのステータスが100上昇するけど受けるダメージも2倍。この形態で死亡するとデスペナが2倍、任意で解除もできるけど、その場合はすべてのステータスが1時間半減する」
要するに、メイプルの悪魔がさらに強力になったけどリスクもバカにならない形態、ということか。
ついでに言えば、髪の蛇はMPを消費することで取得している魔法の属性を纏わせることができるようだ。威力は、魔法のスキルレベルに依存するようだが。
なんというか、どうして俺の取得するスキルはピーキーなやつが多いんだ?
もっと使いやすいやつがいいんだが・・・。
「ちなみにだが、あいつが最後に使ったあの攻撃も使えて、使用した場合は【ゴルゴーン】を強制解除、ステータスもきっちり1時間半減するとさ」
「うわぁ・・・取得しといてなんだけど、私は使わないかも・・・」
「俺も、使うとしてもタイミングは考えないとな・・・」
一応、人型状態でも一部のスキルは使えるが、強力なものはやはり化け物形態でしか使えない。
それと、この説明文で石化の状態異常のことも書いてあった。
どうやらINT依存の拘束系状態異常のようで、相手よりINTが高いほど拘束時間も伸びるということだ。
とはいえ、俺たちが使う分には石になるわけではなく、あくまで体が動かなくなるだけのようだ。
効果を一通り確認したところで、俺は【ゴルゴーン】を解除して地面に降り立った。
ミィも解除したところで、いったん落ち着いて話し合った。
「さて・・・このスキルを教えてやるかどうかだが・・・」
「うーん、教えるのはいいけど、取得はおすすめしない、かなぁ。そもそもこの空間を見つけるのが難しいし、ボスもかなり強い。仮に取得できても、こんなリスクのあるスキルなんて使いたがらないだろうし」
「俺の方も、こういうスキルを取得したって程度に収めるか・・・他のプレイヤーに知られる分にはいいが、絶対にメイプルには取得させないようにしよう」
「あ、あはは・・・」
【ゴルゴーン】というスキル自体INTとMPに依存気味なスキルとはいえ、メイプルが【変転の魔】を使おうものなら【暴虐】よりも手が付けられないことになる。
「それで、この後はどうする?」
「俺はここで出る。ステータスが半減しちゃってるし」
「私も、今日のところは疲れちゃったから、もういいかなぁ。でも、クラルくんへのお返しも探したいし・・・」
まだ気にしてるのか。律義と言うべきか、考えすぎと言うべきか。
「別に焦らなくても、今回のイベント期間内じゃなくてもいいって」
「う~ん、わかった。でも、この借りは必ず返すからね」
「へいへい」
あくまで借りの返済を頑なに譲らないミィに苦笑いを浮かべながらも、俺とミィはイベントエリアから出て、街に戻ってから分かれた。
多分、死にスキルとは言わないまでも、初期に出たスキルより影が薄くなりそう。
でかくなるってだけで、クラルのスタイルとはかみあわないですからね。
とはいえ、さすがに封印しっぱなしてのもあれなんで、最低でも5層内で1回は出したいところ。