街の外に出た後は、シロップの上に乗って移動することになり、巨大化させたシロップの上にメイプルが【身捧ぐ慈愛】を使用したあと、玉座を設置してから移動した。
ちなみに、この玉座は【天王の玉座】というスキルらしく、玉座から発生するフィールドの内側だと一部のスキルが封印され、ついでにメイプルに自動回復がつくらしい。封印されるスキルの種類は具体的にはわからないが、なんだが悪い感じのスキルが封印されるらしい。それは使用者も適用されるようで、メイプルも【毒竜】とか【滲み出る渾沌】が使えなくなるらしい。
幸い、俺の方は封印されて困るようなスキルは封印されなかった。
その道中で、俺は昨日ゲットした装備について話していた。
「へぇ~、あの信長さんがでてきたんだ~」
「あぁ。今まで使う必要がなかったスキルを使わされて、俺としては少し悔しいが」
「いやいや、3000丁の火縄銃の攻撃を全部躱しきるなんて、それこそすごいと思うよ」
「まぁな。それで・・・サリーは大丈夫なのか?」
俺とメイプルが話している間、サリーは一言も話さずにうずくまっていた。
ここまでくると、しおらしいというより、もはや弱々しい。
「う~ん、ダメージは私がいるから大丈夫だと思うけど・・・」
「まぁ、いざというときは俺たちでどうにかするかッ」
「あっ!」
言い終える直前、サリーの目の前に青白い顔をした女性が浮かんでいるのが見えて、メイプルが思わず声をあげた。
「え?なに・・・」
メイプルの声に、サリーは思わず顔を上げてしまい、その結果、サリーの顔にスッと手を伸ばそうとする女性の幽霊を間近で見てしまって・・・
「動くな!」
マズイと思った直後、俺は腰から火縄銃を早撃ちのように構え、サリーの顔の横スレスレに銃弾を通して幽霊に当てた。
幸い、サリーは俺の指示にビクッ!と震えながらも従ってくれたおかげで、サリーに銃弾が当たることはなかった。
そこでようやく復帰したサリーは真っ先にメイプルに飛びついた。
「あ、っあれ!だ、駄目でしょ!」
「う~ん、けっこう近くに湧いてくるんだな~。しかもまだいるし」
「でも、玉座のおかげでただ触ってくるだけだから、安心できるね!」
そう言っている間にも新しい幽霊が現れて、辛そうな呻き声をあげながら近寄ってきた。
実害がないとはいえ、サリーの精神的な被害と【天下布武】の実証を考慮して片っ端から火縄銃で撃ち抜いていく。
だが、効果のほどはまだ何とも言えない。
「多分だが、こいつらはモンスターじゃなくてNPCかギミックに近いな。どれだけ撃っても倒せないし、なにせHPバーがない。接触判定はあるみたいだが、ダメージ判定はないし追い払うくらいしかできないな。いや、【天下布武】だからこそなのか?【クイックチェンジ】」
ためしに黒竜シリーズに装備を変えて弓矢で攻撃してみると、放たれた矢はスッと幽霊を通り抜けて、幽霊もそのまま近づいてきた。
「ふむ?【
今度は【機械仕掛けの神《デウスエクスマキナ》】で拳銃を作り出して発砲すると、今度は幽霊は消えていった。
「なるほど。MPを使った物理以外の攻撃手段なら倒せるのか?いや、やっぱり追い払っているだけか?」
その後も、マフラーで完全に顔を隠したサリーを尻目に、目的地に着くまでの間、幽霊に関する分析を続けた。
* * * * *
それからしばらく進んで、ようやく目的地である洋館にたどり着いた。
その周りは他と比べて霧が濃く、全体をはっきり確認するのは難しい。
「クラル君!ここでいいのかな?」
「あぁ、そのはずだ。サリー、着いたぞ」
「・・・何もいない?」
「いない」
そう言うと、サリーはわずかにマフラーをずらして隙間から下を確認した。
「うん・・・大丈夫、合ってる。よし・・・よし!行く!」
「じゃあ降りるよー」
メイプルがゆっくりとシロップを下ろし、サリーの手を引いて降ろした。
俺も周囲を警戒しながら、最後にシロップの背中から降りた。
メイプルは玉座を消してからシロップを通常のサイズに戻し、サリーもさすがにマフラーを解いて元の姿に戻った。
「それで、クラル君はけっきょくその格好で行くの?」
「あぁ。どうやら、あの幽霊に【天下布武】は有効らしいからな」
今の俺は魔王シリーズを身に纏っている。
道中でも長刀で幽霊を撃退できることは確認しているため、たぶんこの階層にいる間はだいたいこの姿のままだろうな。
その横で、サリーはひたすら自己暗示をしていた。
「一回駄目だと思ったら無理・・・心を無にする、無にする・・・」
「行くよ?サリー」
「ま、待って。まだ心の準備が・・・」
「・・・昔、1時間かかっても準備が終わらなかったのを知ってるから、私は心を鬼にします!」
そんなことがあったのか。これは貴重なことを聞いた。
そんなことを考えていると、メイプルは武装を展開して、サリーの裾をガシッと掴んだ。
「クラル君も掴まって!」
「はいはーい」
なんとなく、これからメイプルがやることを察した俺は、大人しくメイプルの腕を掴んだ。
その直後、メイプルは武装を爆発させて、その勢いで洋館に突っ込んだ。
「豪快にお邪魔しまーす!」
「ああああああああっ!!」
「うおっ、危なっ!」
危うく手を離しそうになってしまったが、ここで意地でもメイプルの腕を掴み続けた俺は、素直に褒められてもいいと思う。
そうして、洋館の中に入ると、俺たちの背後で扉がバタンッと閉まった。
「っとと・・・相変わらず無茶苦茶な・・・」
「はーい、サリー立って立って!目的のものがあるんでしょ?」
「あ・・・うん。メイプル・・・離れないでね」
「もちろん!」
とりあえず、サリーのsan値はメイプルのおかげで保たれているようだ。
改めて辺りを見渡してみると、入り口から見て正面と左右に扉が1つずつ。階段もあることから、2階もあるらしい。
「なるほど、随分と広いな・・・そういえば、ここのスキルの取得条件ってなんだったっか」
「え?知らないの?」
「ぶっちゃけ、取る予定のなかったスキルだし。サリーは・・・」
「・・・そういえば、ちゃんと調べられてなかったかも」
どうやら、恐怖心のせいか情報収集に漏れがあったらしい。
むしろ、漏れた部分が多すぎる気もするが。
「なら、1回全部見て回るか?」
「うーん、そうだね」
俺の意見にメイプルが賛同すると、今度はサリーがブンブンと首を横に振ってきた。
「ちゃんと調べてから来ようよ。そうしよう?今このまま探索しても効率が悪いし、モンスターも弱くはないよ。戦闘回数も増えるだろうし、最短距離を確認してから・・・」
「いや、ここを出たとして、もう1回来れるのか?」
「うっ」
「ていうか・・・出れないみたいだし」
「えっ!?」
俺が試しにドアを開けようとすると、鍵がかかっているかのように硬く閉ざされていた。
「多分、スキルを手に入れるかここで死ぬかでしか出られないんだろう。こういうの、本当にホラーっぽいな」
「一度入ったら出られない、ってやつだね」
「そこから脱出するのが映画の定番だが・・・まぁ、ここは諦めて探索しよう。幸い、俺がいれば幽霊はどうとでもなるし」
「うん・・・」
俺の正論にサリーも折れて、大人しく探索することになった。
「それで、メイプル。どっちに行く?」
「私が決めていいの?」
「こういう時は、メイプルに任せた方がいいかと」
「う~ん・・・じゃあ、私の勘で右!」
とりあえず、俺が右手に長刀を、左手に火縄銃を持って前衛兼斥候として前に進み、後ろをメイプルとサリーがついてくる。
右の扉をゆっくりと開けて中を見て、敵がいないことを確認する。
「よし、何もいないな」
扉をくぐって廊下を進んでいくと、左に曲がれるポイントがいくつかあり、さらにどこかの部屋に繋がるだろう扉も複数あった。
「さすがに広いな・・・」
「どこから行こうかな・・・うわっ!」
メイプルの叫び声を聞いて振り向くと、メイプルとサリーの足下に無数の透けた白い手が現れており、2人の体を掴もうとしていた。
いや、気づけば俺の足下にも同じように白い手が現れている。
さらには、メイプルたちの方に道中にも現れた女性の幽霊が壁から現れた。
「このっ!」
2人の援護にまわりたいところだが、ここは仕方なく自分の方を優先し、長刀で切り払っていく。
この白い手もHPバーがないことから倒すことはできないようだが、なんとか追い払うことはできた。
メイプルたちの方も、メイプルの武装のおかげで切り抜けられたようだ。
「ふぅ。よし!もう大丈夫だよ?」
「うん・・・メイプルと一緒でよかった」
「急いで探索して帰ろう!」
あらら、もう半分くらい心が折れちゃってる。
ここにシオリがいなくてよかったな。
とりあえず、今は先に進んで・・・
「んなっ」
前を向こうとした瞬間、俺たちの足下が鈍い青色に光った。
直感的に、これは転移の光だと悟り、メイプルたちの方に駆け寄ろうとしたが、距離を取り過ぎたせいで間に合わない。
サリーなら、あるいはメイプルを避難させて自身も逃げることができただろうが、サリーは今それができるコンディションではない。
光は大きくなり、ついに光に包まれた俺たちはどこかへと飛ばされてしまった。
amazonでswitchのゲームをあさっていたら、金色ラブリッチェ(エロゲー)がswitch版で発売されることを知ってびっくりしました。
動画で「いい話やな~」「面白いな~」って見てはいたんですが、値段的な問題で買ってなかったんですよね。
発売日はまだ先ですけど、いっそ買ってしまおうか・・・。