「・・・さて、困ったぞ」
光が収まると、長テーブルが置かれた食堂らしき場所にいた。
結局、まんまと分断されて1人になってしまった。
いや、俺が1人になっても大して問題はない。
本当に問題なのは、
「サリー、大丈夫なのか?」
この階層のパターンから考えて、誰かと一緒に転移される、なんて甘いことはないだろう。
おそらく、サリーとメイプルも分断されていると考えていい。
となると、見た限り超がつくレベルでホラーが苦手なサリーが、果たして無事でいられるのか。
最悪、ログアウトするという手段もあるが。
そう考えていると、ピコンと音を立てて、サリーからのメッセージが送られてきた。
内容は、ログアウトできないから助けてほしいというものだった。
「・・・無理か」
前に情報掲示板を見たときに、一部にログアウト制限がかかるという情報があった。おそらく、サリーがいる場所もそこだろう。
そして、そこで徘徊しているモンスター。そいつらにダメージ判定はないが、触られるたびにAGIが減少していき、0になったら即死攻撃が飛んでくる、という厄介な性質を持っている。
とはいえ、普通に気を付けつつ動き回れば大して問題にはならないし、メイプルも【天王の玉座】があれば死ぬことはない。
ただ、サリーがその普通のことができない精神状態にあるのは火を見るよりも明らかであって。
「・・・さっさと探してやるか」
そう言いながら、後ろから起き上がってくる気配を感じた場所に向かって、振り向かないまま火縄銃で撃ち抜いた。
振り向いてみると、黒い人影らしきものがちょうど消滅しているところだった。
人影が消滅した直後、扉からガチャリと鍵の開いた音が響いた。
「なるほど。こいつらには【天下布武】の効果はでかいみたいだな。まさか1発で沈むとは。んで、閉じ込められたら、十中八九こいつらが出てくると」
冷静に分析を続けながらも、まずは例のログアウト制限のあるエリアを探すところから始めようか。
* * *
クラルとメイプルにメッセージを送った後、サリーは机の下に隠れていたのだが、メイプルの返信の着信音に驚いたことで物音を立ててしまい、近くにいた幽霊に位置がバレて慌てて逃げだしたものの、極限の恐怖でまともに逃げることができず、何度も幽霊に掴まれた影響で下がったAGIのせいでさらに感覚が狂って回避の精度が下がり、最終的にクローゼットに引きこもる頃には、AGIは0になっていた。
もはや今のサリーに自力で脱出するという選択肢はなく、クローゼットに隠れていることと、返信はいらない旨のメッセージをクラルとメイプルに送った。
それからしばらくして、ようやくサリーにとっての救いがやってきた。
クラルから、おそらく近くまで来たこと。そっちで自分を確認したら、弱くてもいいからノックをして知らせてほしいというものだった。
それとほぼ同時に、この部屋に近づいてくる足音が聞こえた。
「あ、足音・・・!クラル?」
サリーは早く助かりたいがために、また、入ってきたのがクラルであると思い込んでしまったがために、そっとクローゼットの扉を開けた。
それが間違いだった。
「ぁ・・・」
入ってきたのは、先ほどまでサリーを追いかけてきた幽霊で、不運にも、ばっちりと目が合ってしまったのだ。
「ひっ・・・!」
慌ててクローゼットを閉めるものの、時すでに遅く、足音はだんだんサリーのいるクローゼットに近づいている。
「や、やだ、やだ!」
なんとかして扉を抑えようとするが、震える手ではそれもうまくいかず、ゆっくりと開かれていく。
そして、ゆっくりと開かれた扉の隙間から、幽霊の暗い眼窩がサリーを覗いた。
「あ・・・」
その瞬間、サリーから一切の力が抜けて、クローゼットの床にぺたんと座り込んでしまう。
その間にも扉は開き切ってしまい、幽霊がゆっくりと手を伸ばす。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
サリーは逃げることもできず、意味のない謝罪を繰り返し、
「【
その直後、サリーの目の前で、幽霊が数多の銃弾に貫かれた。
* * *
「っと、このあたりか」
こまめにインベントリを開きながら探索して、ようやくサリーがいるだろうログアウト制限のエリアにたどり着いた。
「返信はいらないって言ってたが・・・一応、送っておくか」
これで、少しは精神的にも楽になるだろう。
あるいは、メイプルも近くにいるかもしれない。
「さて、クローゼットの中ってことらしいが・・・どこだ?」
とりあえず、限界まで耳を澄ませてサリーの気配を探る。
そして、駆け足で進んでいると、不意に声が聞こえた。
「・・・やだ、やだ」
微かに聞こえた弱々しい声は、明らかにサリーのもので、同じくらいの場所に足音も聞こえた。
この2つの意味するところは、どう考えても・・・。
「っ、やべぇ!」
床を砕く勢いで蹴りつけ、即座に声の聞こえた場所に向かう。
幸い、すぐ近くだったようで、バンッ!と扉を開け放つ。
そこにいたのは、泣き顔になって怯えているサリーと、どこからどうみてもおどろおどろしい幽霊で。
「【
即座に空を飛ぶ火縄銃を召喚し、30丁ほどで乱れ撃つ。
幽霊は呻き声を上げて後退し、顔を両手で覆って動きを止めた。
「【超加速】!」
次いで、AGIを上げて一気に接近し、お姫様抱っこの要領でサリーを抱き上げて、その場を脱出した。
「っと、大丈夫か?」
「うっ、ううぅ・・・クラルぅ~・・・」
ようやく助かった安堵から、サリーは涙を流しながら俺の胸に顔をうずめて、さらにしがみついてきた。
とりあえず、目先の脅威は去ったが・・・。
「・・・さて、どうしたものか」
こうもしがみつかれると動きにくい。
とりあえず、幽霊はまだしばらく牽制できるし、メイプルに場所を伝えて待機してるか。
何気に初めて使った特殊タグ。
これからは使えるときは使ってこうかな。
いきなりですが、この作品の投稿に間を空けることになるかもしれません。
UAが伸びなかったりweb版防振りの更新が止まったりでモチベーションが(ryってのもありますが、なんとなく気分転換にまた新作を書こうかなと思いまして。
内容はまだ未定です。というか、書きたい原作が多かったり、なんならオリジナルも挑戦してみようかという考えもあったりで、どうしようかはっきりとは決まってないんですよね。
それでも、多分これを投稿した後は間を空けることになると思います。
とは言っても、長期的に投稿期間を空けるわけではなくて、あくまで投稿頻度をおとす程度ですが。