弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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脱出と夜更かし

「あっ!サリー!クラル君!」

「メイプル!早く玉座を!」

 

しばらく幽霊を【三千世界(さんだんうち)】で釘付けにしていると、ようやくメイプルと合流できた。

メイプルが急いで近づき、【天王の玉座】を出して即死を無効にした。

 

「ふぅ、助かった・・・サリー、少しは落ち着いたか?」

「・・・・・・うん」

 

サリーの返答がいやに遅い。だいぶ消耗したようだな。

たぶん、恐怖が限界値を振り切っていたとはいえ、男の俺に思い切り抱きついたことが恥ずかしいのかもしれないが。

 

「それで、まだいる・・・?」

「いるなぁ」

「うぅ・・・早く、どっか行って・・・」

 

まだ微妙に恐怖が残っているようで、まだ怯え気味だな。

だが、こうも密着されると動きにくいし、そもそもメイプルはどうやって・・・あっ。

 

「・・・なぁ、メイプル。この上に玉座を乗せることはできるか?」

「え?どうだろう・・・わからないけど、とりあえずやってみよう!」

 

飛行している火縄銃を並べて即席の板を作り、その上にメイプルの玉座を置けるか試してみることにした。

幽霊は他の火縄銃で足止めしつつ、メイプルは【天王の玉座】をいったん解除し、火縄銃の板の上に展開するように発動した。

結果、目論見通り玉座は火縄銃の上に乗っかり、メイプルが座っても俺の方で移動させることもできた。

 

「よし、上手くいったな。それじゃあ、さっさとここから脱出するぞ。サリーはしっかり掴まってろ」

「う、うん・・・」

 

サリーをお姫様抱っこに持ち替えてから、俺も火縄銃の上に立ってバランスをとった。

 

「よし。それじゃあ、いくぞ!」

 

サリーを抱えながら、火縄銃を操作して一目散に出口へと向かう。

途中、狙いを変えた幽霊の被害に遭ったプレイヤーの悲鳴が聞こえたが、聞こえなかったふりをして無視する。

道を覚えていたのと意外と火縄銃飛行が速かったこともあって、あっという間にログイン可能なエリアにたどり着いた。

 

「無事に脱出できたな。追手の類もなさそうだ」

「そ、そう・・・ありがとう、クラル、メイプル」

「気にするな」

「えへへ、私は最後しか役にたてなかったけどね・・・」

 

サリーから礼を言われて、俺は特に気にするでもなく返し、メイプルは出遅れたことが気まずいのか曖昧な笑みを浮かべつつも素直に受け取る。

すると、

 

「ひっ・・・!」

「んっ!」

「うおっ!?」

 

突然、背後から白い腕が現れて、寒気と共に俺たちを背後から抱きしめた。

突然のことで一瞬動きが止まるが次にスキル獲得の通知がでてきた。

 

「【冥界の縁】・・・例のアイテムの効果を2倍にするやつだな」

 

効果を確認してからメイプルとサリーの様子を見ると、どうやら同じスキルを習得したようだ。

スキルに書かれているフレーバーテキストには、「時折背後からそっと手を貸してくれる誰かとの奇妙な縁」という言葉がある。

 

「・・・そんな縁いらないよ」

「まぁ、あって困るものじゃないけどな」

 

サリーは嫌そうに顔をしかめるが、俺としては協力してくれるのなら別にかまわない。

さて、

 

「それで、サリー。この後の探索は・・・」

「ログアウトする。帰る」

 

尋ねるまでもなく、即決でサリーが答える。

メイプルも予想はついていたようで、小さく手を振った。

 

「だよね。じゃあ、バイバイ!」

「今日はありがとう。埋め合わせは必ずするから」

「いいよいいよ。今までいっぱい手伝ってもらってたし!ようやく1つ返せたかなーって」

「俺の方も、新しい装備の使い道を再確認できたからな。これだけでも手伝った甲斐があった」

 

俺とメイプルが気にしなくていいと笑顔で答えると、サリーも表情が少し明るくなった。

 

「ありがとう。じゃあ、7層が追加されたときにでも」

「そう言って、また戻ってきたりして」

「しないよ・・・さすがにね」

 

今回で6層は絶対に無理だと再認識したのか、そう答えたサリーはそそくさとログアウトして帰っていった。

 

「さて・・・俺たちはどうしようか?」

「う~ん、いい時間だし、私はもう終わろうかな?」

「それなら、俺もログアウトしようか。他にも火縄銃の面白い使い方を編み出したいし」

 

そう言って、俺とメイプルもその場でログアウトして帰った。

 

 

* * *

 

 

ログアウトしてから、理沙はずっと落ち着かなかった。

寝汗がひどくて風呂に入ろうかと思ったが、なんだかその気になれなくて晩御飯を先に食べることにした。

1階では理沙の母が晩御飯の準備をしていたが、途中で急用が入ってしまって家から出て行った。父は仕事の関係で帰りが遅くなると聞いていた。

テレビを見ながら、1人晩御飯を食べていたが、箸の進みは遅く、足とふらふらと揺れて落ち着きがなかった。

晩御飯を食べ終わって、他にやることもなくなり、あとは風呂に入るくらいなのだが、

 

「ちょっと・・・怖い・・・」

 

6層での探索の影響で、今の理沙はどうしても恐怖を拭えない状態になっていた。

扉やカーテンを隙間なく閉め、ソファーにおいてあるクッションを抱きしめて縮こまるが、一向に落ち着かない。むしろ、より鼓動が速くなっているいる気さえする。

 

「・・・そうだ!」

 

そこで、あることを閃いた理沙は、スマホを持って風呂場に向かった。

衣服を脱いで湯船につかり、持ってきたスマホで電話をかける。

その相手は、楓だ。

以前にも同じようなことがあったのだが、その時は楓と電話することで幾分か落ち着きを取り戻すことができた。

だから、今回も楓を頼ろうとしたのだが・・・

 

「あ、あれっ?出ない・・・どうしようっ・・・」

 

いつもなら数コールで繋がるはずの楓が、なぜか電話に出てこない。

サリーは知りようがないのだが、この時の楓は携帯を充電しており、さらにイヤホンをつけて音楽プレーヤーで音楽を聞きながら勉強していたため、携帯のコールに気付いていなかった。

さらに軽くパニックになった理沙の頭からは、もう少し待ってから電話をかけなおすという選択肢は消え去っており、他の誰かに電話をかけようとする。

だが、両親は仕事中であり、他に連絡先を交換している異性は栞奈くらいしかいない。

だが、栞奈にホラーが苦手なことを知られたくない理沙は論外だと切り捨てる。

そうなると、他にこの時間帯に電話をかけれるような人物は1人しかいないわけで。

 

「・・・すぅー、はぁー・・・よしっ」

 

深呼吸をして覚悟を決めた理沙は、ある人物に電話をかけた。

 

 

* * *

 

 

プルルルル、プルルルル

 

「んぁ?なんだ?」

 

食事も風呂も済ませて、自室で手持ち無沙汰な時間を過ごしていると、不意に誰かから電話がかかってきた。

誰からだ?とは思いつつも、なんとなく相手は察していた。いや、その予感が当たってほしいとは思ってないけど。

着信相手を確認すると、携帯に表示されている名前は『サリー』だ。

ちょっと逡巡したが、ここで放置するわけにもいかないと電話に出た。

 

「・・・もしもし?」

『あ、神崎君?今、大丈夫?』

「大丈夫だが・・・ん?なんか声が響いているっていうか、まさか風呂に・・・」

『待って!それ以上何も言わないでっていうか考えないで!!』

「お、おう。わかった」

 

まさか、風呂に入ってるのか?

一瞬、白峰の裸を想像しそうになり・・・慌てて頭を振ってその想像を振り払った。

 

「っていうか、何で俺なんだ?本条はどうした?」

『楓にもかけたんだけど、なんでか電話にでなくて・・・』

「・・・まさか、変な気を遣ったとかじゃないよな」

 

たしかに、何度か本条が俺とサリーを見て微笑ましいというか、ちょっとニヤニヤした笑みを浮かべることはあったが、だからってここで放置するか?

 

「ていうか、同性なら栞奈が・・・」

『バカにされたくないからヤダ』

「だよな」

 

俺も言っておいてなんだが、「え?なに?お化けが怖くて電話をかけたん?うはははは!笑えるー!!」ってこれでもかとバカにする栞奈がくっきりと脳裏に浮かび上がった。

だとしても、風呂入った女の子が同年代の男に電話をかけるのはいかがなものかと思うが・・・。

それはさておき、理由は察しているが、とりあえず尋ねてみる。

 

「んで?改めて、なんで俺に?」

『・・・実は、今、家に誰もいなくて』

「おう」

『ちょっと・・・心細いというか・・・』

「だろうな」

『しょ、正直・・・怖いからっ・・・電話続けていい?』

「・・・まぁ、しゃーないか」

 

今のサリーを無責任に放り出すのは、男としてちょっとない。

お望み通り、サリーの話し相手になることにする。

 

「にしても、まさか楓にも似たようなことをやったのか?」

『えっと・・・うん。小学校のころに、今みたいにおふ・・・から、かけることはなかったけど、次の日に楓が寝不足になるまで話したことがある、かな』

「小学校って・・・まったく成長してないな?」

『うっ・・・それは、言わないで・・・』

 

白峰も自覚はあるのだろう。気まずそうに声をすぼめる。

 

「それなら、軽いホラーゲームで慣らしたりするのはどうだ?栞奈はともかく、本条は喜んで協力しそうだが」

『う~ん・・・ちょっと、考えさせて』

 

前向きとは言い難いが、選択肢の1つとして保留することにしたようだ。

その後も他愛無い話を続けて、白峰がベッドに潜り込むころにはだいぶ落ち着いたようだ。

 

『ありがとう。おやすみ、神崎君』

「おう。気にするな・・・とは言わんぞ?さすがにそれなりの埋め合わせを要求する」

『うっ・・・』

「ふっ、冗談だ。おやすみ、白峰」

 

それだけ言って、俺は電話を切った。

俺も、白峰と電話をするうちに眠くなってきた。

もう、寝よう・・・。

 

 

 

プルルルル、プルルルル

 

電気を消し、目を閉じて少し経ったところで、再び電話がかかってきた。

相手は考えるまでもない。

 

「白峰・・・」

『ごめん・・・本当、ごめん、神崎君・・・』

 

まじで埋め合わせを要求してやろうか。

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ~・・・」

「なんや、あくびなんて珍しいなぁ~。夜更かしでもしたん?」

「あぁ、ちょっとな・・・」

 

結局、白峰の電話は夜遅くまで続いて、俺もしっかり寝不足になった。

はぁ・・・こんなことになるとは・・・。

 

 

* * *

 

 

「ごめんね、理沙!理沙の電話を無視しちゃって・・・」

「いや、その、大丈夫よ。なんとかなったから・・・」

「なんとかって、誰に電話を・・・もしかして」

「言わないでいいからっ!」




やっぱりクラルとサリーをイチャイチャさせたくなったので、「くっつかない程度のラブコメ」を「くっつくか、くっつかないか、微妙なラインのラブコメ」にすることにします。
推しキャラとオリ主をイチャイチャさせて何が悪い。

それと、突然ですが本作を一時投稿停止にしようかなと思います。
Twitterでハーメルン運営のツイートに原作別の検索頻度ランキングが出てきたんですが、防振りがまぁまぁ順位が低くて、この調子だとUAが伸びそうにないと考えまして。
なので、しばらく「弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果」を投稿停止にしようかと思います。
いつ再開するかは未定ですが、たぶん防振りアニメ2期が放送されるタイミングになるかと。
防振りは面白いので、アニメ放送で復活できるポテンシャルは十分秘めていると思うのでね。
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