弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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勝負・1

「うちが背負ってく!」

「私が背負うよ!」

 

街の出入り口付近で、醜い言い争いが繰り広げられている。

正体は、シオリとサリーだ。

俺たちが地底湖に向かうにあたって、1つ問題があった。

それは、メイプルの移動速度が俺たちと比べて段違いに遅いという点だ。

メイプルのAGIは0。レベルの高い俺やシオリはもちろん、今日ログインしたばかりのサリーよりも遅い。

そのために、メイプルに装備を外してもらっておぶった方が速いという結論になったのだが、ここで新たな問題が発生した。

誰がメイプルを背負うか、だ。

男の俺はすぐに身を引いたが、ここでシオリとサリーが揉めてしまった。

シオリの言い分は、自分が背負った方が速い。

サリーの言い分は、親友の自分が運んだ方がいいに決まっている。

そう言うと、お互いに「親友ならうちも同じや!」だの「あんたじゃ速すぎてメイプルが目を回しちゃうし私たちが置いていかれるでしょ!」だのと、まるで子供のケンカのように言い合い、至近距離でがんを飛ばし合っている。

当事者であるメイプルは、どうすればいいのか分からずにあわあわしていて、2人を止められる状態ではない。

かれこれ30分、ずっとこの状態だ。さすがに間に入った方がいいか。

 

「それくらいにしておけ。こんな人目のあるところで」

 

俺はため息をつきながら、2人の首根っこを掴んで引きはがした。

2人も周囲を見渡して、他のプレイヤーから注目を浴びていることにようやく気付き、しぶしぶながらも矛を収めた。

この機に、俺が代案を出すことにする。

 

「いっそのこと、メイプルに決めてもらえ。そっちの方が早い」

 

2人が口論していつまでも決まらないなら、本人に白黒つけてもらったほうがいいだろう。

俺の提案に、シオリとサリーは頷いてメイプルの方を見た。

 

「それで?」

「メイプルちゃんは、どっちがええん?」

「うっ・・・決めなきゃダメ?」

「「ダメ」」「ダメだな」

 

そもそも、メイプルの足の遅さを解決するためのものなのだ。決めてもらわなきゃ困る。

とはいえ、メイプルもシオリとサリーのプレッシャーに気圧されて、すこし戸惑い気味だ。

そうして、数分悩んだ結果、メイプルが選んだのは、

 

「じゃあ・・・クラルくんに運んでもらおうかな?」

 

シオリもサリーも選ばない逃げの一手だった。

この選択に、2人は顎が外れんばかりに口を開いて驚愕し、メイプルは申し訳なさそうにしながらも俺を見て「ダメかな?」と視線で訴えてくる。

・・・俺から言い出したことだし、ここで断るわけにはいかないか。

 

「わかった。ほら、さっさと乗れ」

 

ため息をつきたくなる衝動を必死に抑えながら、俺はメイプルの前に回り込んでしゃがんだ。メイプルもおずおずと俺の背中に乗り、肩を掴んでバランスをとった。

それを見て、シオリとサリーは敗北感たっぷりに四つん這いになった。周囲にはどよんとしたオーラが漂っている。

 

「よし、行くぞ。目的地は地底湖でいいんだよな」

「うん、そうだよ」

「んじゃ、俺たちは先に行ってるから、お前たちもさっさとついてこいよ」

 

周りからの好奇の視線から逃げるためにも、俺は2人を置いてさっさと地底湖に向かって走っていった。

この後、掲示板でどんな情報がさらされるのか、少し怖いが今は考えないようにしておこう。

 

 

* * * * *

 

 

走ること十数分、俺とメイプルは目的地の地底湖にたどり着いた。

メイプルは自分が移動するよりも早いとはしゃいでいたが、たぶんシオリならもっと早く到着しただろうな。

ただ、ここに着くまでシオリとサリーが来なかったのは、どういうことなのか。

まさか、まだ街で敗北感に打ちひしがれているのか。

もしそうだったら、俺とメイプルでさっさと始めようか。幸い、俺のDEXはそこそこ高いし釣り竿も購入済みだから、必要数に到達するのにそう時間はかからないだろう。

ここで待つのも癪だし、さっさと中に入ろうと地底湖の入り口に向かうと、後ろからなにやら走ってくる音が聞こえてきた。

 

「クラルくん。振り返ってどうしたの?」

「いや、後ろからなんか来たんだが・・・」

 

振り返ってみると、遠くからシオリがサリーを担いで全速力で走ってくる姿が見えた。

どうやら、早く到着するためにこの移動法をするのに、かなり長い葛藤があったらしい。

ぼんやりと走ってくるシオリとサリーを眺めていると、シオリが50mほど手前で思い切りブレーキをかけ、その反動でサリーの体が半分ほど前につんのめった。ばつぐんのバランス力で落ちはしなかったものの、かなりきわどかったな。

 

「ちょっと!急に止まって危ないじゃない!」

「落ちなかったんやからええやろ!ていうか、乗せてもらってなんや、その態度は!」

「なにおう!」

「やるか!?」

 

立ち止まって早々、再び口喧嘩を始める2人に、俺はジト目を、メイプルはあいまいな微笑を浮かべ、結局、口喧嘩に花を咲かせる2人を置いて先に地底湖の中に入ることになった。

この調子だと、まだまだ喧嘩は続きそうだが。

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