「よっしゃ!8匹目や!」
「残念ね。こっちは12匹目よ」
「なんやて!?」
なんとか地底湖の中に入ったはいいものの、再び子供のような喧嘩というか、争いが繰り広げられていた。
今度は釣り対決だ。
もちろん、DEXが少し高いサリーの方がよく釣れているのだが、シオリはなぜか「釣りでもPSが反映されるはず!」と、ちょいちょいと竿を動かしたり、魚が多くいそうな場所に狙って投げたりと無駄な努力を続けている。もちろん、NWOの世界では釣りにPSは関係なく、基本的にDEX頼りだ。
だから、
「よし、これで20匹目」
よりDEXの高い俺が一番釣れるのも、当然と言えば当然のことだった。
ちなみに、DEXが0のメイプルは3匹だ。
さらに、俺とサリーは【釣り】スキルもゲットして、シオリとはさらに差が開いていく一方だ。
この状況に、シオリは悔し気に歯ぎしりするが、
「グヌヌ・・・あっ、せや!」
途中で何か閃いたような表情になり、釣竿をインベントリにしまって水中に潜りだした。
「わっ、し、シオリちゃん!?どうしたの!?」
「あ~、まさかと思うが・・・」
メイプルは訳が分からずに混乱しているが、俺はなんとなく、シオリが何をしだしたのか察した。それはサリーも同じなようだが、盲点だったというよりは先を越されたみたいな表情だった。
「ぷはっ!」
シオリが潜り始めてから10分ほど経ったところで、シオリが水中から上がってきた。
「成果はどうだ?」
「ふっふっふっ・・・これや!」
そう言うと、シオリはインベントリから白い鱗を30枚ほど取り出した。
単純計算で、20秒に1枚はゲットしたことになる。
「わぁ!すごいよ、シオリちゃん!」
「うちにかかれば、ざっとこんなもんや!」
シオリは驚いているメイプルに得意げな表情を見せながら、ちらっとサリーにドヤ顔を向けた。大方、「あんたにはできんやろ?」とでも言いたいのだろう。
自分よりも30以上レベルが低いプレイヤー相手に、なんて大人気ない。
だが、サリーもシオリに言われっぱなしなのは癪に障るようで、
「いいわよ。私だってやってやるんだから!」
そう言って、きれいな飛び込みで水中に潜った。
「あっ!ちょっと待ちや!」
後に続いて、シオリも水中に潜っていった。
「ど、どうする?」
「俺も一応、スキルの効果の確認をしがてら、2人と一緒に水中を泳いでみる。それで、あとどれくらい粘ってみる?」
「う~ん・・・一応、1時間くらいかな?」
「わかった。時間になったら、フレンドメッセージで知らせてくれ」
「わかったよ!」
「んじゃ、俺も行ってくる」
そう言って、俺も2人の後を追って水中に飛び込んだ。
* * * * *
俺が水中に潜ってからきっかり1時間後、メイプルからメッセージが送られてきて、俺は一足先にメイプルのところに戻った。
「おかえりー。スキルの方はどうだった?」
「コツはつかんだ。にしても、水中でも矢が真っすぐ飛んでいくっていうのは、不思議な感じだな」
俺が試したスキルは、【黒竜ノ威厳】だ。
説明欄にある「あらゆる条件で威力の減衰を受けなくなる」というのが、どこまで効果を及ぼすのか試していなかったことを思い出して、手始めに水中から試すことにしたのだ。
結果、矢は水中でも真っすぐ飛んでいき、狭かったからあまり検証できていないが、少なくとも100mは問題なく飛んでいった。100mで大丈夫なら、きちんと【百発百中】の効果も重複していると考えていいだろう。
ついでに、【水泳Ⅰ】と【潜水Ⅰ】も取得できたのもラッキーだった。せっかくだし、しばらくは水中探索に精を出してスキルを強化していくことにしようか。
俺が陸に上がってからしばらくして、ようやくシオリとサリーも戻ってきた。
「ぜぇ、ぜぇ、め、メイプルちゃん、いっぱい持ってきたで」
「はぁ、はぁ、こ、これだけあれば、素材には十分でしょ」
2人とも息を切らしながらホラー映画のように這いつくばりながら陸に上がり、シオリは150枚、サリーは100枚、インベントリから白い鱗を取りだした。
この枚数に、さすがのメイプルもちょっとだけドン引きし、
「こ、こんなにたくさんはいらないかな・・・」
必要な分だけもらうことにした。
がんばった結果の、あんまりといえばあんまりな仕打ちに、シオリとサリーは完全に力尽きるが、俺からすれば自業自得でしかない。
今日はそろそろ切り上げようかと声をかけようとすると、サリーが「そう言えば」といったように顔を上げた。
「そういえば、今確認されているダンジョンって、3つだっけ?」
「掲示板に載っているのはそうだな。あと、シオリが迷い込んだ特別なやつも含めれば4つになるのか・・・まさか、ここにもあったのか?」
途中で言いたいことが分かった俺はサリーに尋ねると、神妙な顔で頷きを返してきた。
「地底湖の底に、小さな横穴があった」
「なるほど、泳げることが前提のダンジョンか・・・」
たしかに、あまり出回るようなものではないだろう。攻略できるプレイヤーは、そこそこ絞られてくる。
少なくとも、メイプルが挑んだら溺れ死ぬのは確定だ。
「それで、そこでユニークシリーズを狙うのか?」
「そうするつもり。それで・・・」
そこで、サリーはわずかに言いよどんだが、サリーの言いたいことを察したメイプルが食い気味に言った。
「うん、地底湖まで来るのを手伝うよ!借りは即返すってね!」
「俺も、まぁ構わない。どのみち、しばらくはここで【水泳】と【潜水】のスキルレベルを上げるつもりだったからな」
「・・・うちも、クラルに同じく」
足下から渋々シオリからも参加の意思表明がでてきた。
「さっすが、メイプル!クラルさんもありがと!」
「うちにも礼を言え!」
シオリがガバッ!と起き上がり、メイプルがおかしそうに笑い、俺もつられるように苦笑を浮かべた。
その後、メイプルはログアウトし、俺たちはスキルレベル上げのために再び潜り始めた。