弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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メンテナンス

メイプルとサリーが2階層に到着した後日、運営がイベントの2週間前に、いきなりメンテナンスを実施した。

まぁ、それくらいなら、別に俺もシオリも大して文句はないのだが、内容が内容だった。

 

「これは・・・なんというか・・・」

「運営が何を考えとるのか、手に取るようにわかるなぁ・・・」

 

ログインした後、俺とシオリはメンテナンス内容を見て盛大にため息をついた。

主な内容は3つ。

1つ目、

 

「フィールドモンスターのAI強化、か」

「たぶん、メイプルちゃんの大量製造を防ぐためのもんやろなぁ」

 

俺たちもメイプルのスキルの詳しい取得条件は知らないが、VITに関するものなら、おそらくモンスターの攻撃を受けることなどが条件だと考えられる。

おそらく、モンスターが無意味な攻撃を繰り返さないようにしたのだろう。そうすれば、モンスターの攻撃を受けることが条件のスキルは格段に取得しづらくなる。

2つ目、

 

「一部スキルの調整、ねぇ」

「これは、うちもクラルもあったな」

 

本人の確認はとってないが、おそらく【悪食】が大幅に弱体化をくらったはずだ。第1回イベントのあれを見れば、容易に想像がつく。

それと、俺とシオリにも調整が入った。

ただ、俺たちの場合は一概に弱体化とも言えないが。

調整されたスキルは、俺が3つ、シオリが1つだ。

まずシオリは、

 

「うちは、【大樹の怒り】が弱体化されたわ。内容は、消費する葉の増加。イベントの時に使った【大自然】も、規模によって消費する数が増減するようになってもうた」

「まぁ、固定消費であれは、さすがに燃費が良すぎたからな」

 

おそらく、ドレッド戦での様子から弱体化されたのだろう。

シオリは【疾風】か【速度中毒】が弱体化されそうだと言っていたが、おそらく特定の条件下で発動するスキルだから見逃されたのだろう。このスキルの強みが活かされたのも、【大自然】によるものが少なからずあったし。

 

「俺ので調整が入ったのは、【黒竜ノ加護】、【黒竜ノ息吹】、【魔弾の射手】だな」

「ずいぶんと多いなぁ。どんな感じになったん?」

「俺としては、プラマイ0って感じだな」

 

まず、弱体化が入ったのが【黒竜ノ加護】。遠距離攻撃無効の効果が削除された。

俺としては、どのみち回避主体のプレイスタイルだし、【空蝉】もあるから、どっちつかずな感じだが、それでも精神的な余裕がまた減った感じは否めない。

次に、プラマイ0な感じなのが【黒竜ノ息吹】。適用距離が50mから100mに引き上げられ、最大効果が300mで【STR+100】になる、というものだ。単純計算で、100mから2mごとに【STR+1】されるといった感じか。

最大火力を出しにくくなった点は否めないが、それはあくまで狭い空間で戦うボス戦の話であり、第1回イベントのようなバトルロイヤル形式なら特に問題にはならない。今の俺なら200mは軽くいけるし、300mを成功させるのも時間の問題だ。

そして最後に、【魔弾の射手】。これは大幅な上方修正だと言えた。

 

「スキルで使用する武器に耐久値が適用される、か。消耗速度が通常の2倍になるとはいえ、これはかなりありがたいな」

「もしかしたら、運営さんはペインと戦ってほしいんやろなぁ」

 

シオリの言った通り、これはおそらく俺が第1回イベントのインタビューで言ったことが影響していると考えられる。

イベントの映像はNWOの広告にも使用されるから、俺とペインの派手な戦闘で新規プレイヤーを呼び込みたい考えもあるのだろう。あるいは単純に、運営が見たいだけかもしれないが。

俺としては嬉しいが、それでいいのかと思うところはある。さすがに同じスキルを2回修正以上するなんてことはないだろうから、おそらくはずっとこのままだ。

いいの?こんな修正いれたら、マジで無双しちゃうぞ?俺。

とまぁ、ここまでは俺もシオリも、これならまだわかる、といった感じだった。

だが、最後の内容が露骨過ぎた。

 

「防御力貫通スキルの実施と、それに伴う痛みの軽減、か」

「こればっかりは、明らかにメイプルちゃんを意識しとるよなぁ」

 

スキルは各武器に3~5種類あり、威力もそこそこ期待できるとのこと。

まぁ、防御貫通スキル自体、他のゲームでも特に珍しくないものだ。そのシステムを実装したこと自体に文句はない。

ただ、タイミングが露骨過ぎたというか、たぶんメイプルがいなかったら実装されることもなかったという感じが否めない。もちろん、運営としても苦肉の策だったのだろうが。

そういうわけで、以上3つが、遠回りなものも含めてすべてメイプルが関係しているであろうアップデートになったわけだが、

 

「うちのメイプルちゃんになんちゅーひどいことを!これは運営に直訴を・・・!」

「アホ言え。それを言ったら、むしろ誰もメイプルを倒せない現状に耐えられない他のプレイヤーが運営に直訴してたと思うぞ」

 

ステータスポイントをすべてVITに極振りし、なおかつスキルによってさらに強化されたメイプルの防御を真正面から破れるプレイヤーが、果たしてどれだけいるというのか。

個人ではまずいないだろうし、倒せるにしても強力なバフをましましにしなければHPを減らすことすらできないだろう。

こればっかりは、運営も動かざるをえなくなる。

トッププレイヤーだけでなく、一般プレイヤーにも多少は勝てるチャンスを与えた方がいいだろうし。

それに、

 

「俺からすれば、この程度のテコ入れで倒せるほど、メイプルは柔くないと思うんだが・・・」

「・・・言われてみれば、うちもメイプルちゃんが倒される光景が思い浮かばへん」

 

通常のプレイヤーの持つ常識よりも1歩2歩先にいるメイプルのことだ。たぶん、さらに進化を遂げることになると思う。

 

 

そんな証拠も根拠もない俺たちの考えが証明されるのはまだ先だが、まさかあんなことになるなんて、このときの俺たちはまったく想像できなかったのだ。

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