弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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第2回イベント2日目・1

交代しながら仮眠をとっているうちに、あっという間に朝になった。

2人で見回りしながらの休憩だったが、十分に体は休まった。

 

「よっしゃー!元気もりもりやー!」

「そう言うほど、昨日は疲れていないけどな」

 

なにせ、プレイヤーはもちろん、モンスターとの戦闘もほとんどなかったわけだし。

 

「それで、今日は予定通り山の方に向かうんか?」

「あぁ。だが、山頂に向かうかどうかは、まだ未定だな」

 

遠目で見ただけでも、かなりの標高があると考えられるから、登るかどうかは中腹まで保留といったところか。

 

「んじゃ、さっそく行こか」

「あぁ」

 

各々準備を整えた俺たちは、駆け足で山へと向かった。

 

 

* * * * *

 

 

「ほな、ここで降ろすで」

「・・・すまない」

 

出発してから2時間ほど、シオリに背負われていた俺は心底申し訳ない気持ちを抱きながら背中から降りた。

どうしてこうなったのかと言われれば、早い話シオリについていけなくなってしまったからだ。

俺とシオリのAGIの差はただでさえ2倍近くあるのに、シオリは【速度中毒】でさらにAGIが上がる。さらに、【白狼の呼吸】によって走行中なら疲れ知らずであるから、持久力も並ではない。

結果、走り始めて1時間くらいで先に俺がダウンしてしまい、途中までシオリに背負ってもらった、というわけだ。

幸い、シオリのSTRでも装備込みの俺を背負うことができたため、流鏑馬よろしくシオリの背中でモンスターを片っ端から射抜いたから、まったく役立たずというわけでもなかったが。

それよりも、ゲーム内とはいえ女の子に背負われて移動したという事実の方が、俺の精神に何気にダメージを入れていたのだが。

 

「まったく、クラルも情けないなぁ。女の子に担がれて恥ずかしくないん?」

「・・・頼むから、傷口に塩を塗りたくるようなことは言わないでくれ。あと、お前だって【白狼の呼吸】ありきだろうが」

「なはは~、それもそうやな。ま、それはそうと、貸し一やな」

「はぁ~・・・」

 

まったく悪びれる様子のないシオリに、俺は深いため息をついた。

こいつの性格は、それこそ不治の病と同じなんだろうな。

だが、ため息もすぐに引っ込め、俺は弓に矢を3本つがえる。

 

「? どったん?」

「プレイヤーが来る。数は、4人か」

 

俺の言葉に、シオリもすかさず戦闘態勢をとる。

戦闘態勢を維持しつつ待っていると、岩の向こうから4人組のプレイヤーがやってきた。

だが、見知った顔でもなければ、有名な顔でもない。

すると、向こうも俺たちに気づき、こそこそと相談してから、すぐに両手を上げて降参のポーズをとった。

 

「おっとおっと、大丈夫だ。俺たちに敵対の意志はない。勝てるとも思っていないからな」

「・・・そうか」

 

4人を代表して口を開いた片手剣使いに、俺はちらりとシオリを見てから短くうなずき、構えた弓を下ろした。

それを見て、相手も露骨にホッとして、そうだと言わんばかりに話しかけてきた。

 

「そうだ。せっかくだし、俺たちと一時的に共闘しないか?盾役くらいにはなると思うぜ」

 

片手剣使いは「どうだ?」とたずねてくる。他の3人も異論はないのか、俺たちの返答を待っている。

これに対し俺は、

 

「シオリ、やれ」

「【超加速】!」

 

シオリに襲わせることで答えを返した。

シオリはスキルでAGIを上げてから目も止まらぬ速さで近づき、片手剣使いの後ろに控えていた3人のプレイヤーをあっという間に屠った。

 

「なっ、どういうことだよ!」

 

いきなり襲われたことに片手剣使いは怒鳴るが、俺はあくまで冷静に返した。

 

「今のVRゲームっていうのは、基本的に脳波に直接作用することで、リアルな五感を再現している」

「そ、それが・・・」

「簡単に言えば、VR空間は嘘をつくのに極端に向いていないってことだ」

「っ!?」

 

VR空間では情報が直接電子情報として伝えられることによって、現実よりもより正確に五感で情報を感じ取ることができる。

例えば、音なんかも雑多に聞こえるのではなく、風の音、水の音、人の歩く音や話し声などが別々に聞き取れるというわけだ。

俺にかかれば、聞こえてくる音で索敵したり、相手が嘘をついているかどうかもすぐにわかる。

 

「共闘の提案をしたとき、お前の声は不自然に揺れていたし、他の3人もせわしない様子で、すぐに武器を持てる位置に手を伸ばしていた。大方、後ろから俺たちを襲うつもりだったんだろう。1撃でも入れられれば、ってな」

「なっ、なっ・・・」

「残念だったが、俺にその手の奇襲は通用しない。高い授業料だと思って次に活かしとけ。ま、次があればの話だがな」

 

それだけ言って、俺は即座に矢を3本つがえ、片手剣使いの眉間、喉元、胸に矢を放ち、光へと変えた。

 

「これで貸しはチャラだ」

「ちぇ~、案外早く払われてもうたなぁ。せっかく、後であんなことやこんなことを頼もうと思ったのに」

「そういうな。それに、臨時収入もあるぞ」

「ん?あ!メダル!」

 

どうやら初日にメダルを発見できた幸運なプレイヤーだったようで、プレイヤーたちが立っていたところに銀のメダルが1枚落ちていた。

 

「よっしゃ!これで4枚目や!」

「思ったよりペースがいいな。俺たちも運がいい」

 

少なくとも、お相手さんの方は運がなかった・・・いや、いらない欲をかいた、という方が正しいか。

俺としては、素直に回れ右してくれるなら見逃してやったのだが、向こうから襲おうとしたのだ。

こればっかりは、自業自得と言うべきだろう。

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