俺たちが部屋の中に入ると、扉はゴゴゴッと音を立てながら閉じた。やはり、ボスが出てくる流れで合っているだろう。
「なぁ、クラル。どんなボスが出てくると思うん?」
「さぁな。今までモンスターが全く出てこなかったからわからんが、こういう遺跡っぽいダンジョンのボスはゴーレムが妥当じゃないか?」
「あ~、たしかになぁ。こう、でっかい奴が出てくるパターンやな」
先へと進みながら、俺とシオリは他愛ない会話を交わしていた。
少し歩くと、いかにもボスが出てきますと言っているような巨大な広場が現れた。障害物はなく、直径は100m以上はありそうだ。
「オオォォォ!!」
そして、広場の中央に魔法陣が出現し、そこから巨大な石レンガで構成されたゴーレムが出現し、どこから声を出しているのか咆哮を放った。
だが、
「・・・あ~、そういうパターンね」
「・・・いや、でかすぎひん?」
シオリの言う通り、俺たちの想像を絶する大きさだった。
現れたゴーレムは上半身しか出現していないが、それでも高さは軽く見積もっても50mはあるし、両腕を広げたら広場の端から端まで到達しそうだ。
実際、衝撃も含めたらこの広場の全域がこいつの攻撃範囲になるだろう。
あまりのスケールに、俺とシオリも呆然とするが、すぐに立ち直って散開した。
「とりあえず、シオリは遠慮なく攻撃してくれ!俺も弱点を探す!」
「了解や!」
返事をしたシオリは、さらに加速してゴーレムの腕や肩に乗り、槍を振るってゴーレムを攻撃し始めた。
この調子なら、問題なくいけると思ったのだが、
「なっ、硬すぎひん!?」
シオリの攻撃でダメージを入れることはできているものの、その削りは微々たるもので決定打には程遠い。
さらに、
「って、危なっ!」
ゴーレムの動きも見た目より断然速く、攻撃に集中していたとはいえシオリをあと少しのところで掴みそうだった。
これは、思ったより苦戦しそうだ。
「さて、どこから狙おうか」
冷静に状況を分析しながら、俺は矢をつがえて狙いを見定める。
まず最初に、たいていのゴーレムの弱点だろう目玉に放つが、シャッターのような防壁が瞼のように目玉を守ることではじかれてしまった。
次に、腕の関節を狙って射抜くが、こちらも大したダメージにはならなかった。
だが、腕の岩石がそれなりに崩れ落ち、その部分が再生されないことに気づいた。
よく見れば、シオリが削ったところもはっきりしており、最初と比べて若干細くなっているように見えた。
なるほど。攻略法が見えたぞ。
「シオリ!おそらく岩石で覆われている中身が弱点だ!岩石の鎧は攻撃ではがせる!」
「なるほど、そういうことか!」
シオリも俺の言葉に頷き、さらに加速しようと槍を構えなおした。
だが、それに俺が待ったを入れる。
「ちょっと待ってくれ!外装は俺がはがす!」
「え?クラルにできるん?」
「まぁ、見ていろって」
そう言って、俺は矢を持たずに弓を引き絞った。
「【エクスプロージョン】、【拡散】!」
俺が魔法を唱えると、火でできた矢が形成されたが、【ファイアーボール】と違って周囲がバチバチとはじけている。
そして、俺が矢を放つと、放たれた矢は100に分裂し、ゴーレムに着弾すると同時に次々と爆発していった。
「・・・クラル。いつの間に、そんなやばい攻撃を身に付けたん?」
俺の近くでステップを刻みながら速度を落とさないようにしているシオリが、若干引いたような声で尋ねてきた。
「【エクスプロージョン】は普通に【ファイアーボール】を使い続けたら習得して、【拡散】は第2層の弓使い限定の激難クエストをクリアして手に入れた。まぁ、俺も2つを合わせて使うのは初めてだったんだが・・・」
最初は対多数攻撃を手に入れたと嬉しかったが、【魔弾の射手】によるえげつない魔法の爆撃まで可能になってしまった。
実際に、土煙が晴れるとゴーレムのHPは半分ほど消し飛んでおり、石レンガの外装はすべて崩れ落ちていた。
中から、全長10mほどの黒いゴーレムが出現し、体に紋様を走らせたと思うと背中から丸鋸などの武器を出現させ、動作で怒りをあらわにしている。
「んじゃ、ここからはシオリに頼んだぞ。【拡散】は1度使ったら1時間使えない」
「わかったで。あっちゅうまに終わらせたる!」
そう言って、シオリはステップしながらさらに速度を稼いでいたようで、先ほどよりもさらに速い。
「【超加速】!」
さらに、ダメ押しで【超加速】を使用し、シオリのAGIがさらに上昇した。黒いゴーレムは必死にシオリを攻撃しようとするがすべて空振り、逆にシオリの攻撃はさっきよりも高いダメージがでて、あっという間に黒いゴーレムのHPを削っていく。
気付けば、黒いゴーレムのHPは1分足らずで残り1割ほどになり、
「これで終わりや!」
その1割も、シオリの身体を回転させながらの連続薙ぎ払いで消し飛んだ。
HPが0になった黒いゴーレムは石くれとなって崩れ落ち、いくつかの素材と宝箱が現れた。
「うし、こんなもんやったな」
「あぁ。見た限り、このゴーレムの素材もけっこうよさそうだ」
これを使って、俺の【魔弾の射手】用の武器も作ってもらおうか。
そして、宝箱の中身を確認すると、メダルが3枚と小さな宝石がはまっている指輪が2つ入っていた。
「なんやろ、これ?【古代の護石】?」
「なになに・・・【スキルエンチャント】?」
内容を見てみると、スキルの効果を増加させる効果があるらしく、ステータスアップの上昇量やダメージが1.5倍になるとのことだった。
これは、かなり強いぞ。特にシオリは、さらに速くなるってことだし、俺も【拡散】で増やせる上限が増えるかもしれない。
「よっしゃ!これでメダルももっと集めればサリーに勝てるで!」
「そう簡単にいくといいけどな」
俺たちのメダルは、今手に入れたのも合わせて10枚。メイプルたちは、最低でも昨日の祠で5枚ゲットしたって話だから、メダルの枚数が同等だと考えるのは早計だと思うが・・・。
「それじゃ、今日のところはさっさと出て、休憩場所を探すとするか」
「わかったで」
俺たちは魔法陣の上に乗り、遺跡の中から脱出した。
この後、偶然近くにあった小さめの洞窟で一晩を過ごした。