「さて、実戦でこれをやるのは初めてだな・・・スチールブレード」
偽シオリと対峙し、俺は【漆黒の弓】を消し、代わりに【魔弾の射手】によって片手直剣を右手に出現させ、もともと装備している短剣を左手に出現させた。
【魔弾の射手】の上方修正によって可能になった二刀流。誰もいない訓練場で試したことはあるが、実戦はこれが初めてだ。
「きゃははっ!!」
偽シオリは、俺が片手直剣を取り出したのを見計らったかのように、いきなり突撃してきた。
本物のシオリより速い踏み込みを、俺は片手直剣の先端で軽くいなし、逸らした。
攻撃を外した偽シオリは、そのまま広場の中を駆け回り始め、【速度中毒】によってAGIを上昇させていく。しかも、何かしらの強化があるのか、最高速に到達するのも断然早い。もうすでに、 偽シオリの動きを目で追えなくなってしまった。
「なるほどなぁ。ステータスだけじゃなくて、スキルもいくつか強化されてるのか」
だが、俺は偽シオリの方を見ずに、ふらふらと体を動かし、時には両手の武器でシオリの猛攻を捌き続ける。
たしかに偽シオリの動きは速いが、俺の“超聴覚”によって攻撃してくる方向くらいはすぐにわかる。
俺の“超聴覚”は、足音だけでなく風や空気の揺らぎなんかも敏感に感じ取るから、俺に奇襲はまったく通用しない。俺を真正面から攻略するには、それこそ音よりも速く動く必要があるのだ。
まぁ、それを言ったら、戦争系シューティングゲームではスナイパーライフルにちょくちょく撃ち殺されたわけだが。音より速い攻撃の1つなわけだし。
だが、少なくともNWOには音より速い攻撃はほとんどない。もしかしたらレーザーのような魔法もあるかもしれないが、魔法なら詠唱でバレバレだから問題ない。
だが、俺が偽シオリの攻撃を捌いているのは、それだけが理由ではない。
いくらシオリを超えたスペックを持っていようと、所詮、相手はAI。本物のシオリに比べれば攻撃パターンが単調だし、回避行動を調整すれば【大樹の怒り】を封殺できる。
とはいえ、偽シオリが俺より速いのは事実であり、なかなか攻撃の機会を掴めない。
と、思っていたが、
「【超加速】!」
いくら攻撃しても当たらないことにいら立ったのか、偽シオリはスキルでさらに加速した。
このタイミングを狙っていた俺は、後ろから襲い掛かってくる偽シオリを察知し、偽シオリの槍をすれ違いざまに避けながら、流れるように回転しながら両手の武器を二閃させ、シオリの首を斬り飛ばした。
自分から突っ込んだ勢いと、もともとのHPが低かったというのもあって、それだけで偽シオリは光となって消えた。
「これは・・・シオリ相手にはあまり使えない戦法だな」
今の戦法が通用したのは、今の攻防がAIに設定された反応速度を超えた領域だったからだ。だから、ただでさえ速いのに【超加速】でさらに加速した偽シオリは、俺の攻撃に対応できず、あっさり倒されたのだ。
だが、本物のシオリなら、ゾーンによって今の速度領域でも対応できるだろう。そして、俺のカウンターが届く前にシオリの【大樹の怒り】によって迎撃されるのは、すぐに想像できた。
もっと戦い方を考えないとなぁ、なんて考えながら偽シオリが倒れた場所に行くと、メダルが1枚落ちていた。奥には、転移の魔法陣も光っている。
「さて、シオリは問題なく突破しているだろうな」
俺はメダルを拾い上げ、そんなことを呟きながら魔法陣の上に乗った。
* * * * *
「はっはっは!ほらほら、どうした!」
「あー、もう!うざったいなぁ!!」
洞窟の中で濃霧を抜けきったと思ったら、後ろからいきなり殺気を感じて、しゃがんだら頭上を矢が通り抜けた。まさかと思うたら、やっぱりクラルが弓を構えていて、うちに狙いを定めていた。
この時点で、「あっ、偽物さんと戦えってことやな!」って理解して、さっそく広場の中を走り始めたんやけど、なかなか近づけないでいた。
本人よりのそれなりに強化されとるんか、クラルが覚えていないはずの魔法をバンバン使うし、どう再現しとるのか索敵能力もバカみたいにあるしで、うかつに近づけん。
せやけど、うちがこの偽クラルに勝つには、やっぱり近づくしなないわけで。
多分やけど、あのクラルは接近戦を嫌っとる。うちが近づく前に迎撃しようとしとるのが、その証拠や。本人なら、むしろ近づいてきたうちの足音を聞き取って迎え撃つやろうし。
そこまで考えて、うちはちょうどええ作戦を思いついた。
「【超加速】!」
うちは温存しとった【超加速】を発動して、一気に加速して偽クラルに近づいた。
すると、偽クラルはわかっとったかのように、うちの方を振り向いて弓を構えた。
ここが勝機!
「こうやっ!」
うちは【大樹の牙】の石突を思い切り地面に突き立てて、無理やり方向転換した。
偽クラルは、いきなりうちの姿が消えたことに困惑して、左右をキョロキョロとし始めた。
そこを、うちは真後ろから思い切り薙ぎ払って、さらに心臓を一突きして偽クラルのHPを消し飛ばした。
偽クラルは光になって消えて、メダルを1枚落とした。
「ふぅ、上手くいってよかったわぁ」
今回の戦い、偽クラルが本物みたいに耳がいいわけやなかったおかげで、なんなく後ろをとれた。
もしこれが本物のクラル相手やったら、まず間違いなく反撃くらっとったやろなぁ。
「まぁ、本物のクラルを倒す算段はまたの機会に考えるとして、さっさと合流しよか!」
うちはメダルを拾い上げて、さっさと魔法陣の上に乗った。