弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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第2回イベント4日目・3

俺が外に転移されるのと、シオリと合流したのは同時だった。

ほぼ同じタイミングで俺の隣に魔法陣が現れ、そこからシオリが現れた。

 

「・・・念のため聞くが、本物のシオリだよな?」

「当たり前やろ?そういうクラルこそ、本物で合っとるな?」

「当然だ。なんなら、俺たちしか知らないようなことで確認し合うか?」

「・・・いや、その必要はあらへん。その意地の悪い提案するとこ、まんまクラルや」

「そういうお前も、しゃべり方のイントネーションで本物だとわかる」

 

どうやら、お互い無事に突破できたようだ。

 

「そっちは、どんな感じだったんだ?」

「そうやなぁ、すごい先読みしてきたけど、耳がえぇわけやなかったから、簡単に裏取って2撃で仕留めたわ」

「俺も似たようなもんだな。速いだけだったから、簡単にカウンターとれて2撃で仕留めれた。まさかここにきて、被弾しない前提でHPやVIT にポイントを振らなかったことが役に立つとは思わなかったな」

「せやなぁ。もしメイプルちゃん相手やったら、こうはいかなかったもんなぁ」

 

ただでさえ硬いメイプルがさらに強化されているとか、たとえAIが賢くなくて、防御貫通スキルがあるとしても、こうも早く終わらせることはできなかっただろう。

【空蝉】だって、あると分かっていれば2撃当てて終わらせるだけだし。

逆に言えば、ペインにはそのことを知られている可能性が高いということでもあるが。

 

「とりあえず、現在位置を確認しておこう。おそらく、さっきの洞窟付近だとは思うが・・・」

 

そう言いながら、俺はマップを開いて、覗き込んできたシオリと一緒に確認した。

予想通り、現在位置は洞窟からほど近い位置で、僅かだが海にも近づいている。

結果的に、メダルをゲットできたことも含めて収支は大幅にプラスだと考えていいだろう。

 

「・・・それで、クラル」

「言われなくてもわかっている」

 

マップを覗き込むふりをしているシオリが、ぼそっと呟き、俺もシオリの言いたいことを察して簡単に返す。

俺たちの背後に、プレイヤーが潜んでいる気配がするのだ。俺たちが転移した瞬間、草むらから葉がこすれるような音が聞こえたから間違いない。

偶然潜んでいるところに俺たちが現れたのか、それともここを狩場にしていたのかはわからないが、少なくとも俺たちを狙っているのはたしかだ。

向こうはばれていないと思っているのかもしれないが、俺は超聴覚で、シオリは【白狼の呼吸】でバレバレだ。

ここは、向こうから仕掛けてくるのを待って、襲い掛かってきたところを返り討ちにしよう。

言葉を交わさずとも、腐れ縁による以心伝心ですぐに何を考えているのか理解できる。

内心でどう迎撃してやろうかと考えながら、表面上はどうやって進むか議論している風を装う。

・・・だが、

 

「・・・クラル。まだ襲ってこぉへんのかなぁ?」

「・・・もう数分は経っているぞ。そろそろ来てもおかしくはないんだが・・・」

 

演技を始めて数分が過ぎても、襲い掛かってくる気配がまるでなかった。

まさか、俺たちのことに気づいて襲撃するのをやめたのかと思って、試しに移動したところ、ぴったりと俺たちについてきた。

やはり、俺たちを狙っているのは間違いない。

間違いないのだが、どうして襲ってこないのか。

まさか、どこかの偵察部隊か?

ギルドシステムはまだ実装されていないが、それに近い集団はいくつか存在しており、早いところでは大規模な集団もできている。

そのどれかが、俺とシオリを探るために尾行しているのか?

だが、それにしては1人だけというのもおかしいし、何より近すぎる。

安全に俺たちを探るなら、アイテムなりスキルなりで、なるべく遠くから複数人で観察した方がいいに決まっている。

とはいえ、相手も手練れなのは間違いない。俺に筒抜けとはいえ、後ろからついてくる時の音は一般プレイヤーなら確実に聞き逃すほど小さい。あるいは、風で揺れていると勘違いしそうなくらいだ。

俺も、僅かな息遣いが聞こえなかったら無視していたかもしれない。

このまま全速力で走って撒くのも手だが、シオリはともかく俺が追い付かれる可能性も否定できない。

さて、どうしたものかと思案していると、

 

「あっ、【凪】!」

 

僅かに聞こえた声を最後に、聞こえていた足音が消えた。

 

「シオリ!」

「合点!」

 

即座にシオリに合図を送り、シオリも俺の意図を察して最後に気配を感じていた位置に疾駆した。

 

「うわぁ!?」

 

いきなり攻撃されたことに驚いたのか、尾行していたプレイヤーは間抜けな声を上げながら転がりこんできた。ついさっきまで頭があった位置を槍が通り抜けたら、驚くのも当然だろうが。

だが、転がり込んだ先にいたのは、弓に矢をつがえていつでも放てる用意が整った俺だ。

プレイヤーも影が覆いかぶさっているのに気づいて、おそるおそる上を見上げた。

そんな、見るも哀れな襲撃者の正体は、

 

「ごっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・!」

「・・・くノ一?」

 

忍者装束に身を包んだ、茶髪の小柄な少女だった。

たぶん、メイプルよりも小さい。

 

「あっ、女の子やったん!?ごめんなぁ、怖がらせてしもて」

 

相手が少女だとわかった途端、シオリの態度が急激に柔らかくなり、「これ、舐める?」といつの間に購入していたのか、飴玉を差し出していた。

少女も「うぅ、ありがとうございますぅ」とお礼を言いながら、ためらいもなくパクっと口の中に放り込んだ。

ちょっとは警戒心とか抱かないのかね。まぁ、飴の見た目をした毒なんて情報、聞いた事もないが。

とはいえ、このまま無罪放免というわけにもいかないだろう。

 

「さて、落ち着いたか?」

「は、はい・・・」

「それで、どうして俺たちを尾行していたんだ?どこかのギルドが偵察に向かわしたのか?」

「え、えっと・・・」

 

少女は、あわあわしながらも、なにやらステータス画面を操作し始め、

 

「く、クラールハイトさんにシオリさん!サインください!!」

 

ペンと色紙を2つずつ取り出して俺たちに差し出した。

いや、こんなのどこに売ってたんだ?俺は見たことないんだが。

でも、雑貨売り場とかはほとんど覗かなかったから、そういうところにあったかもしれない。

とりあえず、

 

「・・・えっと、一から説明してくれないか?」

「あっ、はい、えっとですね・・・」

 

そうして、少女から説明がもたらされた。

まず、少女の名前はモミジ。 NWOがリリースされた初期からプレイしている古参の短剣使いだそうな。とはいえ、NWO自体けっこう新しいゲームで、俺たちがプレイし始めたのもNWOリリースの1ヵ月後だから、そこまで古参というわけでもないが。

ステータスはAGI重視で振ったのだが、低い火力と引っ込み思案な性格が災いして、周囲と比べてあまりレベルを上げられず、どこかのパーティーやギルドに所属することもできずにズルズルやってきたとのこと。

幸か不幸か、スキルは隠密系のものが揃っており、かろうじてモンスターを倒すことはできるが、とてもトッププレイヤーについていけなかったそうな。

そんなときに、衝撃的なシーンを目の当たりにすることになった。

 

「第1回イベントをスクリーンで見ていたのですが、そのときに名の知れたトッププレイヤーを瞬殺したクラールハイトさんとシオリさんを見たのです!」

「あぁ、ペインとドレッドか。俺たちが来る前から有名だったのな」

「はい。特にペインさんは、NWOでトップクラスの実力を持った最前線組として有名でした。それを、まだ名無しだったお2人が倒したのを見て、それで憧れたんです!」

 

多分だけど、メイプルから目を逸らした結果じゃないか?俺も後で公式の紹介PVを見たが、思わず目をそむけたくなるような惨状だったし。

 

「それで、お2人にサインを書いてもらって家宝にしようと思っていたのですが、なかなか見つけられなくて、見かけても声をかけづらくて。今回のイベントに参加したのも、あわよくばお2人に会うためですし」

「なんか、アイドルの追っかけみたいやなぁ」

 

みたいじゃなくて、まんま追っかけだけどな。やってること。

 

「それで、偶然ダンジョンを攻略したあとの転移場所の近くにいて、思わずこっそり尾行、あわよくばサインを書いてもらおうとした、と」

「そういうことです!」

「なるほどなぁ・・・そんなに、俺たちって話しかけづらいか?」

「ご、ごめんなさい!話しかけようと思っても、つい緊張しちゃって・・・」

「クラル!この娘ほしい!」

「ダメだ」

 

顔を赤らめながら涙目になるモミジを前に、シオリはハートを射抜かれたらしい。

メイプルもいるっていうのに、本当に尻軽だな、こいつ。

 

「も~、それやったら、気軽に話しかけてくれてよかったんやけどなぁ。サインどころか、フレンド登録だってしちゃうで?」

「えっ、いいんですか!?」

「モミジちゃんみたいな可愛い子は大歓迎や!」

 

そう言って、興奮するモミジにフレンド申請し、流れで俺もフレンド登録することになった。

まぁ、モミジちゃんはなんと言うか、妹に向けるような庇護欲の塊みたいというか、かまってあげたい、守ってあげたいみたいな感じの子だし、今回ばかりはシオリの気持ちもわからなくはない。

ついでに、サインも書いてモミジに渡したところ、たいそう喜んでくれた。

ちなみに、さっき発動しようとしたスキル【凪】は、自分が発する一切の音を消す効果らしく、まさに俺の天敵と言ってもいいスキルだった。他にも、気配を遮断するようなスキルはいくつも持っているとのことだった。

 

「それと、これ・・・」

 

最後に、モミジがステータス画面を操作すると、メダルを3枚差し出してきた。

 

「えっ、いいのか?」

「はい。もともと、できればお2人にあげれれば、と思って・・・」

 

なんといういい子なのか。

こんな善意の塊のような人間は、数少ないだろう。

とはいえ、

 

「悪いが、それは受け取れない」

 

モミジの申し出を、俺はきっぱり断った。

シオリも珍しく同意見らしく、うんうんとうなずいている。

 

「えっと、いいんですか?」

「あぁ。それはモミジが持っているといい。どうしてもというなら、また違うときにお願いするよ」

「・・・はい、わかりました」

 

そう言って、モミジはメダルをインベントリにしまった。

 

「それじゃあ、イベントが終わったらまた会おう」

「モミジちゃんも、メダル集め、頑張ってな!」

「はいっ!クラールハイトさん、シオリさん、ありがとうございました!」

 

最後に別れの挨拶を交わし、俺とシオリは目的地へと向かった。

ちなみにその後、別れ際に教えてもらった中規模のギルドが夜営している地点を襲撃してメダルを3枚手に入れたところで、俺たちも夜営地を探して1日を終えた。

これで、メダルは全部で16枚。かなり集まったな。




新たなオリキャラです。
そろそろ出したくなったので。
次に出てくるのは、イベント終了後になりそうですが。

*オリキャラのスキルの【神隠し】が原作の朧のスキルと被っていたので、名前を【凪】に変更しました。
たぶん、この子ならいつかは自力で習得してそうですが。

*ギルドシステムについてのニュアンスを変更しました。
ギルドではなく、あくまでそれに近い集団という表現にしました。
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