5日目の朝。休憩を終えた俺たちはさっさと移動して、目的地である海辺にたどり着いた。
今日は1日海の探索に費やすつもりだ。
「とりあえず、まずは手分けして探索しよう。2時間後に、この地点に集合で」
「了解や!」
これくらい広いなら、2,3枚くらいはメダルが落ちているかもしれない。
「それじゃあ、また後で!」
「よっしゃー!メダル採ったるでー!」
気合満々に海の中に潜っていったシオリを見送ってから、俺もシオリが向かった方角とは反対の方に泳いで探索をしていった。
* * * * *
「ぷはっ。はぁ、はぁ、な、なかなか見つからないな」
潜り始めてからもう1時間半。休憩をはさみながらとはいえ、いまだにメダルを見つけられないでいる。
一応、装飾品の腕輪は発見したが、ただのVITとHPアップだった。メイプルはともかく、俺もシオリもまったくいらない代物で、いくら上昇値がそれぞれ【+30】とかなり高いとは言ってもまったくうれしくない。これは、メイプルにあげるか、他の誰かに売ろう。俺たちには必要なくても、必要なプレイヤーなら100万Gはふんだくれそうだ。
「さて、と・・・ん?なんだあれ?」
今度はさっきより深いところを潜ろうかと思ったら、視線の先に小島が1つ発見した。ここからの距離は200mほどと、遠くはないが近くもない距離だ。
とはいえ、もしかしたらメダルがあるかもしれない。ボスがいそうなら、シオリも呼べばいい。
ひとまず、海底の探索を中断して小島を目指すことにした。
とはいえ、泳いで向かうだけならそこまで時間もかからない。
数分で小島にたどりつき、上陸して探索を始めた。
だが、小島にあるのはヤシの木が1本と地下に続く階段があるだけで、メダルもない。
そこそこ陸地から離れているし、何かしらあってもいいと思ったんだが。
「いや、そう考えるのは早いか。あとは、この階段だけだ」
さっさと気を取り直して、階段の先に進もうと一歩踏み出した瞬間、背後の海中からわずかに何かが泳いでくる音を聞き取った。
まさか、俺たちと同じように海を探索していたプレイヤーがやってきたのか。
俺はすぐに短剣と片手直剣を手に持ち、臨戦態勢をとった。
そして、海から上がってきたのは、
「あれ?クラル?」
「なんだ、サリーだったか・・・」
顔見知りのサリーだった。
【水泳Ⅹ】と【潜水Ⅹ】を持っているだけあって、考えることは同じだったか。
「なんだってなによ・・・クラルも、ここで探索を?」
「あぁ、今日からな。あいにく、メダルはゲットできなかったが・・・」
「へぇ?私はもう2枚手に入れたわ」
「まじか・・・偶然、探す場所が悪かったのか・・・いや、収穫がないってわけじゃないが」
「ちなみに、何を手に入れたのかしら?」
「VITとHPを上昇させる、大盾必須の指輪だ。ただ、俺とシオリにはまったく意味がないが」
「それは、ご愁傷様・・・」
「あぁ、そうだ。よかったら、メイプルにあげようと思っていたんだ。VITとHPが30ずつ上昇する装飾品なんて、滅多にないし」
「あら、いいの?」
「さっきも言ったが、俺たちにはいらないからな。メイプルの方が有効活用してくれるなら、それでいいし」
「そうね。なら、後でありがたくもらうわ。それで・・・」
サリーが言葉を切ると、視線を例の階段の方に向けた。
「この先には、何かあった?」
「わからん。ちょうど今、それを確認しようとしたところだ」
「なら、一緒に行きましょう?1人より2人の方がいいわ」
「そうだな」
自然な流れで、俺とサリーで階段の奥に進むことになった。
サリーが前、俺が後ろで慎重に進んでいくと、階段は100段ほどで終わり、中には木製の扉があった。とくに鍵がかけられているわけでもなく、見た限り魔法陣もない。
俺とサリーは顔を見合わせ、そっとサリーが扉を開けた。
中はきれいな半円のドームになっており、中央には祠と転移の魔法陣があった。
だが、この祠、かなり見覚えがある。
「・・・なぁ、これって」
「・・・えぇ、私とメイプルが挑戦したのとまったく同じね」
クロムたちのパーティーを瞬殺したレベルのボスモンスターが、まだもう1体いる。
これは、なかなか複雑だ。
「なぁ。サリーがあのとき相手したモンスターって、どんなのだった?」
「そうね、出てきたのは怪鳥のモンスターだったのだけど、すべてのステータスが異様に高くて、使ってくるスキルもほとんど殺傷能力が高かった。あのメイプルのHPが1まで削れたわ」
「・・・それと同レベルが、まだいる・・・いや、もしかしたら方向性が違うか?まったく同じタイプのボスが2体いるとは考えづらいし・・・いや、どのみち厄介なことに代わりはないか」
火力に重点を置いたわけではないのなら、からめ手でくる可能性がある。
これは、俺たちの一存では決められないな。
「とりあえず、メイプルやシオリとも合流しよう。メイプルは、どのあたりにいる?」
「待って・・・ここから一番近い砂浜よ」
「そうか。そこなら、ちょうどシオリと合流場所にしている。時間もいい頃合いだし、シオリを呼び出しておくか」
俺はさっさと予定を決め、シオリにメッセージを飛ばした。
そこで階段を上って地上に出た俺とサリーは、そこで初めてある異変に気が付いた。
それは、サリーの言っていた砂浜に巨大な砂の城が建っていたということだ。
「・・・なんじゃありゃ」
「・・・とりあえず、メイプルと合流しましょう」
やっぱりメイプルの考えることはわからんと、軽くため息をつきながら、俺たちはメイプルのもとに向かった。