弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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第2回イベント5日目・4

「わー!本当に攻略したんだ!」

「なんというか、2人もぶっ飛んでるわよね・・・」

 

魔法陣に乗って転移した後、俺とシオリはメイプルとサリーにメッセージを送って合流し、結果を報告した。

ボスを2人のボスよりも短い時間で倒したことに驚くやら呆れるやらと反応はそれぞれだったが、自慢するでもなく例のスキルをサリーに渡した。

 

「これは?」

「イカを倒してゲットしたスキルだ。【太古ノ海】って言うんだが、取得するには水系のスキルを覚えている必要があったから、代わりにサリーにやるよ」

「でも、タダでよかったのかな?」

「実は、メイプルから譲ってもらったゴブリンキングサーベル、もうぶっ壊しちゃったからな。交換したとはいえ、その詫びのようなものだ」

「そ、そう・・・いったい、どういう使い方したら壊れるのよ・・・それと、そこのシオリはまったく納得していないみたいだけど・・・」

 

そういうサリーの視線の先では、俺がシオリの顔を鷲掴みして口と動きを封じている。

シオリは必死にもがくが、静止状態なら俺のSTRで動きを封じれる。

 

「シオリには取得できないからな。他の知らん奴に売るよりかは、知り合いに譲った方がまだマシだ」

「そっか。なら、遠慮なくもらうわ」

 

そう言って、サリーはスキルの書を開いて【太古ノ海】を取得した。

それを確認してから、俺はシオリの拘束を解いた。

 

「ぷはっ!何しとるんや、クラル!」

「なんだ、悪かったか?」

「悪いに決まっとるよ!よりによってその女に渡すなんて!なんでメイプルちゃんじゃないんや!」

 

どうやらシオリは、サリーに渡したというよりはメイプルに渡さなかったということが気に入らなかったらしい。

 

「いや、メイプルは水系のスキルは持っていないだろ。【毒竜】だって対象外だろうし」

「うっ・・・だって・・・」

 

だが、冷静に正論を返すとシオリは言葉を詰まらせて唇を尖らせた。

まったくとため息を吐き、そこで聞いておくべきことがあるのを思い出した。

 

「あぁ、そうだそうだ。2人とも、こういうアイテムに覚えはないか?」

 

そう言って、俺はインベントリから例の卵を取り出した。

 

「これって・・・」

「うん、そうだね」

「ボスの討伐報酬にあったんだが、やっぱ2人とも、これを知っているんだな?」

「うんっ。私たちも山のボスだった怪鳥を倒して、似たようなアイテムをゲットしたんだ!」

「今は、孵化してこんな感じになっているけどね。朧、【覚醒】!」

 

サリーが初めて聞くスキルと何かの名前を口にすると、いつの間にか増えていた指輪からキツネのモンスターが現れた。

だが、危害を加える様子はなく、サリーの肩の上に乗って頬ずりし始めた。

 

「うわっ、なんやそれ!めっちゃかわええやん!」

「ちなみに、私は亀なんだ。シロップ、【覚醒】!」

 

メイプルが同じようにスキルと名前を叫ぶと、亀のモンスターが足下に現れて、メイプルが抱き上げた。

 

「なるほどなぁ。たしか、NWOにはビーストテイマーのシステムはなかったはずだが、イベントの限定アイテムか?」

「たぶんね。もしかしたら、いつか追加されるかもしれないけど」

「たしかに、それはあり得るなぁ。ちなみに、どうやったら孵化したん?」

「説明欄にあった通り、インベントリから取り出して温めたんだよ。私とサリーは、6時間くらいで孵化したかなぁ」

「2時間経つ前にインベントリにしまったから、ってのもあるかもしれないけどね」

「なるほどな・・・なら、今日のところはあとは卵の孵化に集中するか」

「そうやな」

 

その後、メイプルとサリーからテイムモンスターのシステムについての説明をあらかた聞いてから別れた。

 

「さて・・・ひとまずは、あそこの洞窟に移動するか」

「わかったで」

 

2人と別れた後、俺とシオリはちょうど近くにあった洞窟の中に入って、さっそくインベントリから卵を取り出した。

 

「さて、今からやるとして、孵化するのは夕方か夜頃になるだろうが・・・何がでてくるんだろうな?」

「たしか、メイプルちゃんは緑の卵で、サリーは白と紫の卵やったんだけな?」

「らしいな。だが、色というよりは柄でわかるんじゃないか?」

 

メイプルの卵には緑で亀の甲羅のような模様が、サリーの卵には白ベースに紫のしめ縄があったという。

だとしたら、俺とシオリの卵も模様から推測できるかもしれない。

 

「俺のは翼の模様だから、やっぱ鳥とかか?黒色なら、カラスかワシか、どっちかってところか?」

「うちのは毛皮っぽいから、なんかの獣なんかなぁ。でも、この感じ、うちが1層で戦った白狼に似とるしなぁ・・・」

「もしかしたら、本当に白い狼が生まれるかもな?」

「それやったら、ちょっと複雑やなぁ・・・」

 

たしかに、自分が倒したボスと同じ見た目のモンスターのパートナーというのも、いろいろと複雑なところもあるだろう。

そんな感じで雑談をしながら、時折インベントリにしまいながら卵を温め続けた。

 

 

* * * * *

 

 

長かったような短かったような、気づけば、すでに外から夕陽が差し込む時間になっていた。

早く卵が孵らないか心待ちにしながら、インベントリからランタンを取り出して明かりをつけた直後、卵にピシッ!とヒビが入った。

 

「わわっ、クラル!」

「落ち着け。とりあえず、地面の上に置くぞ」

 

突然の変化にあわあわし始めたシオリを落ち着かせ、卵をそっと地面の上に置いた。

そして、寝そべってじっくりと見ながらその時を待つ。

ヒビが入って少しして、とうとう卵が割れて中からモンスターが生まれた。




余談ですが、アニメ版だとサリーの卵って紫要素どこにもないですよね。
どうして、あのような見た目になったのか・・・。
どうせなら、しめ縄を紫にすればよかったのに。

それと、今回は2話連続投稿です。
すこし後に次話を投稿します。

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