俺は今、平和を実感していた。
「クローネ、【ひっかき】。フウ、【かみつき】」
「【喰らいつき】!行けー!頑張れ!【狐火】!クローネとフウも、頑張れー!」
淡々と指示を出してクローネとフウにモンスターを倒させる俺に対し、メイプルは指示を出しながらもシロップと朧だけでなく、クローネとフウことも応援していた。
これを見るだけでも安らぐものがあるのだが、アリが出てこない間はシロップたちと追いかけっこしたり抱き上げたりと、積極的にじゃれ合っているのだ。
もちろん、育成には関係ないのだろうが、見るだけでもシオリの面倒ごとに巻き込まれたことに対する疲労が癒されていくのを実感する。
なんというか、リアルポ〇モンをやっている気分だ。
別に、シオリの肩を持つわけではないが・・・たしかに、今のメイプルは可愛い。見た目の問題ではなく、ゲーム初心者にしても滅多に見ないだろう天然なところを見ると、すごいほっこりする。
「そういえば、クラルくん」
「ん?なんだ?」
子を見守る親のような心境でメイプルを観察していると、不意にメイプルが俺に尋ねかけてきた。
「クローネとフウって、どれくらいレベルが上がったの?」
「そうだな。ここに来る前は、レベルは10だったが、今は14だな」
「そうなんだ!シロップと朧は、今ので10くらいかな」
メイプルの言う通り、俺たちのモンスターとメイプルたちのモンスターの間には、それなりにレベルに差がある。
おそらく、まだ探索途中だったときに手に入れたこともあって、まだ育成が十分にできていなかったのだろう。
それと、STRはクローネとフウの方が高いようで、基本的にシロップと朧が攻撃した後にクローネとフウでとどめを刺す流れになっている。
「それにしても、クラルくんたちのテイムモンスター、強いよねぇ」
「あぁ。苦労に見合った・・・いや、速攻で片付けたから、そこまで苦労したわけでもないが、難易度に見合った強さではあるな。たぶん、ギミックを解除しないで攻略するのが、取得条件だったと思うし」
「なるほど・・・あっ、またでてきたよ!」
メイプルの視線の先では、新たにアリのモンスターが3体湧いていた。
やっていることは、ただひたすら同じモンスターを倒しているだけなのだが、メイプルと一緒にやっていると、よくも悪くも退屈しない。
時折、心臓と胃にダイレクトアタックしてくるような事案を持ってくることもあるが。
最初のスキル暴露会の時とか、典型的な例だし。
それと、時折奥から金属音が反響するような音が聞こえるんだが、シオリとサリーが戦っているのか、あるいは、プレイヤー相手に中ボスみたいなことをしているのか。その場合、俺とメイプルがボス扱いになるが。
とりあえず、キリのいいところで切り上げて、何があったのかシオリとサリーに聞いてみることにしよう。
* * * * *
しばらくレベル上げをしていたが、そろそろ7日目に突入しそうになったタイミングで切り上げることにした。
「ふふ、シロップも朧も、いっぱいレベルが上がったね!」
「当面は、今のままでも十分戦えるだろうな」
元のステータスが高いこともあって、プレイヤーなら低いレベルでも、シロップやクローネたちの場合はそれなりに強いステータスにまで育っている。
そんなことを話しているうちに、毒で蓋をしているところまで戻ってきたが、3人の話し声が聞こえてきた。
2人はサリーとシオリだとして、残りは誰だ?
「2人とも、戻ったぞ・・・って、ん?」
「サリー!レベル上がったよー!ほらほらー!・・・あれ?」
毒の壁を抜けると、シオリとサリーの他に顔だけは知っているプレイヤーが立っていた。
そして、メイプルの反応からして、メイプルとサリーは面識があるらしいようだ。
「カスミ!?なんでいるの!?」
「ん・・・それはまあ、メダルを守るためだが・・・」
カスミと呼ばれた女性は、ちらりと俺と俺たちのテイムモンスターを見た。
一応、こうして話すのは初めてだから、挨拶はしておこう。
「まぁ、知っていると思うが、第1回イベントで1位になったクラールハイトだ。あんたは、6位だったカスミ、で合ってるよな?」
「あぁ、間違いない。そちらのシオリとも、自己紹介は済ませてある」
「そうか。それと、こっちのモンスターは、簡単に言えばボス討伐の報酬だな。俺たちのパートナーだ」
シロップやクローネの簡単な説明に続き、メイプルとシオリが祠のボスについて話し始める。
その間に、サリーからカスミとの関係を聞くと、どうやら同じダンジョンを攻略した仲らしく、それなりに厳しい条件下で共に戦い、フレンド登録したとのことだった。
なんというか、俺の身近な女子はすぐにフレンド登録する習性がある気がするな。
カスミの方も、メイプルたちの戦ったあり得ない強さのボスと、俺たちの戦ったあり得ない難易度のギミックに驚き、それらを攻略したことにかなり驚いているようだった。
また、カスミも他で同じようにモンスターを連れているプレイヤーは見かけなかったことから、テイムモンスターを連れているのは、今ここにいる4人だけだと考えていいだろう。
「もしかしたら、他にもいくつか祠のダンジョンがあったかもしれないな。まぁ、攻略する気にはならないが・・・それに、今後のイベントで入手できる機会があったとしても、相応の難易度になりそうだ」
「それやったら、今後のアップデートでテイムモンスターが追加されるかもー、って話したやん」
俺からフウを受け取っているシオリの言う通りではあるが、俺の言った可能性もまったくの0ではない。
どのみち、、俺たちには今いるクローネやフウたちで十分だろう。
「それで、どうする?この洞窟から出る?」
メイプルもサリーに朧を返してから、今後のことを聞いて来た。
そして、なぜか視線が俺に集まる。自然と、参謀みたいな立ち位置になった感じだ。
「・・・このまま安全なこの洞窟に引きこもる理由はあっても、わざわざ危険のある外にでる理由はないしな。メイプルに入り口に毒の塊で蓋をしてもらって、残りはここで過ごそう」
【毒無効】を持っているプレイヤーはかなり限られるだろうし、その限られ人数なら返り討ちにするくらい簡単だ。
問題は、同じく金メダルを持っていて、俺とシオリとはそこまで仲がいいわけでもないカスミがどうするかだが・・・
「私は、お前たちと戦うつもりはない」
「俺も、わざわざ敵対するつもりもないな」
「うちもや」
カスミの了承も得たところで、メイプルに通路の入り口に蓋をしてもらい、念のため1人見張りをつけながら睡眠をとった。
この後は、メイプルとサリー、俺とシオリで集めた銀メダルを分配し、カスミも交えてメイプルが用意していたオセロやトランプなどの暇つぶしグッズで遊んですごした。
ちなみに、この時にサリーとシオリがお互いの戦利品を報告して勝敗を決めたのだが、カスミの審判のもと、シオリの勝ちということになった。
メイプルとサリーの集めた装備も、どれも優秀なのだが、さすがに【古代の護石】と【目覚めの奇跡】を上回るものはなかったらしい。
今回の勝負の「勝ったら負けた方に何でも1つお願いを聞く」という条件は、シオリはもうどうするか決めてあるようだったが、ひとまずイベントが終わったあとに話すということになった。
そんなことをしていると、あっという間にイベント終了のアナウンスが鳴り響いた。
「んじゃ、後で合流だな」
「そうやな。また後で、や」
「うん、また後でね!」
「じゃあ、戻ったら」
「あぁ、また会おう」
一時の別れを済ませてから、俺たちは転送されていった。
新たな出会いに、新たな力。
今回のイベントでは、これ以上にないくらいの収穫があったな。
ようやく、第2回イベント編が終わりました。
考えてみれば、「名前→技」の流れって、完全にポケモンですよね。
この場合、プレイヤーも攻撃に加わっていますが。
スマブラでも、トレーナーは安置にいるというのに。
あと、シオリがもののけ姫みたいなことになっているのに、今気づきました。
こっちは美少女大好き人間ですけどね。