弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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身捧ぐ慈愛

『星見の丘』を訪れてから数日、俺はひたすら【千里眼】の性能確認と慣らしに時間をあてた。

まず、【千里眼】の射程は、俺が確認した中で最も遠いのは4㎞ほどだった。さすがに千里(4000㎞)先まで見えるというわけではなかったが、4㎞でもまだ余裕があったから、実際はまだ遠くまで見えるかもしれない。おそらく、最大で10㎞くらいになりそうか。

また、動体視力や夜目なんかも強化されているようで、シオリのスピードにもある程度は目がついていけるようになったり、夜でも昼間と同じくらいの明度で見ることができるようになった。

これなら、再びPvP系のイベントがやってきたとき、かなり有利に立ち回れるだろう。

俺は望んだとおりのスキルが手に入ったことで軽くテンションが上がっていたが、1つだけ気になることがあった。

それは、イズが工房にこもっているということだ。

イズの話では、メイプルが新たな装備を作って欲しいと頼んできたという。

そう、あのメイプルが、だ。

メイプルが新しい装備を欲しがるとか、嫌な予感しかしない。

いや、メイプルが強化されると考えればその限りでもないかもしれないが、メイプルが新たなスキルを手に入れた場合、基本的に俺たちの胃と心臓にダイレクトアタックしてくるから、思わず身構えてしまうのだ。

そんな複雑な心境を抱きながら、俺が【千里眼】を取得してから5日が経過した。

シオリと共にギルドホームに入ると、ちょうどイズがメイプルに新しい装備を渡しているところだった。

 

「おっ、それがイズが作っとった、メイプルちゃんの新しい装備か」

「あっ、シオリちゃん!クラルくん!」

「へぇ、いつものと真逆で、全身真っ白なんだな」

 

イズの説明によると、名を大天使シリーズと言い、HPに全振りした性能になっているとのことだった。

そうこうしているうちに、残りの5人もギルドホームに集まり、各々感想を言った。

この中で、サリーとカスミは俺と似たような感じで「何があったか怖い・・・」というものだった。

 

「それで、どうしていきなり新しい装備を?」

「じゃあ・・・その説明も兼ねて、戦闘しに行かない?」

 

メイプルの提案に、俺たちも頷いた。イズも、今の装備でもう1回“あれ”を見てみたいということでついてくることになった。

 

 

* * * * *

 

 

「この辺でいいかな?」

 

全員をシロップとクローネに乗せて、手早くモンスターの群れが発生しやすいポイントまで移動した。

 

「じゃあ・・・いくよ!【身捧ぐ慈愛】!」

 

メイプルがスキルの名前を叫ぶと、メイプルにダメージエフェクトが発生し、それが消えると同時にメイプルから半径10mの範囲の地面がうっすらと輝き始めた。

だが、変化はそれだけではなかった。

メイプルの背中から1対の真っ白な翼が生え、頭の上に白く輝く輪が出現した。

さらに、メイプルの黒髪が金に染まり、瞳も深い青色に染まった。

 

「「「「「「「・・・えっ?」」」」」」」

「私も、最初はそうなったわ」

 

メイプルの変化に、俺たちは頭の中が真っ白になった。

エフェクトで地面が薄く輝くのは、まだわかる。

だが、ここまで見た目が変化するスキルが存在するのか?

ていうか、どこで手に入れてきた?

効果はどうなっているんだ?

様々な疑問が、頭の中を渦巻く。

普通なら「かわええ!」と飛びつくだろうシオリも、疑問符を大量に浮かべて固まっている。

だが、「まぁ、メイプルだし」と無理やり納得することで、ようやく目の前の現象を受け入れることができた。

 

「あはは・・・見た目変わっちゃうんだよねー・・・ああ、モンスターきちゃう」

 

そうこうしているうちに、目の前からモンスターの群れが迫ってきた。

俺は矢を構えようとするが、その前にメイプルから声をかけられた。

 

「みんなー!攻撃受けても大丈夫だよ!あっ、でも、クラルくんとシオリちゃんは危ないかも」

「私が受けるわ。皆分からないだろうしね・・・」

 

何を言っているんだろうと思っている中、イズが実際にその身にモンスターの攻撃を受けた。

しかし、イズのHPバーはわずかにも減少しなかった。

 

「は?どういうことだ?」

「・・・まさかと思うが、この光の円の範囲にいるパーティーメンバー全員に【カバー】がはたらく、なんて言わないよな?」

「いいえ、クラールハイトくんの言った通りよ」

「最初にHPを一定値もっていかれちゃうけどね」

 

なるほど、そういうことか。

とりあえず、襲い掛かってきたモンスターはサクッと殲滅して、説明の続きを促した。

言われてみれば、メイプルはVITは高いものの、HPは装飾品による効果を除けば初期値だ。割合ならともかく、一定値持っていかれるスキルだと危ない。だからこそ、イズにHPを確保できる装備を頼んだ、ということか。

 

「・・・つまり、全員がメイプルと同じ防御力になっているようなものってこと、か。うわぁ・・・」

 

エリア内にいる限り、メイプルを倒せなければ他のメンバーを倒せない。だが、その難易度自体がかなりのものだ。

一応、メンバー全員に防御貫通攻撃を当てることができればメイプルのHPも早く減るが、そもそも俺たちはイズとカナデ以外はちょっとやそっとの攻撃をくらう玉ではない。俺とサリーは避けるし、シオリは速すぎて当たらない。クロムは大盾ではじくし、カスミも俺やサリーほどではないにしても避ける。

これなんてラスボス?と思うが、ふと気になることがでてきた。

 

「だが、装備がHP全振りとなると、素のVITで大丈夫なのか?さすがに、実質装備抜きだと厳しいと思うが・・・」

「大丈夫!何も装備してなくてもVITは1000を超えてるから!」

「「ははっ、1000?」」

 

メイプルの返答に、カスミとクロムが乾いた笑みを浮かべるが、俺もそう言えばと思い出す。

メイプルには、【絶対防御】と【大物喰らい】でVIT値が4倍になる。そして、メイプルはVIT極振りだ。今のメイプルのレベルがどの程度のものかわからないが・・・スキル無しで250くらいなら、わりとおかしくないかもしれない。

そもそも、シオリだって装備とスキル有りの条件ならAGIが1000を超えるし、今さらだ。

それにしても、装備抜きでこれなら、【破壊成長】のある装備と組み合わせたらどこまでいくのか・・・。

 

 

ちなみに、クロムは掲示板でメイプルとサリーのことを書いているが大丈夫か、と聞いたところ、どっちも大丈夫だという結論になった。

仮に情報が広まっても、メイプルの防御力は下がらないし、サリーの回避力も落ちない。

肝心のスキルも、クロムは取得方法を知らない。

また、流れで俺とシオリのことも書きたければ書いてもいいということになった。

俺たちの方も、情報が流れたところで俺のエイムは落ちないし、シオリのスピードも下がらない。

仮にスキルが知られても、その程度で負けるほど軟な実力でもない。

もっと言えば、すでに俺とシオリは知る人ぞ知る有名人みたいな感じだから、掲示板の話題のタネになるなど今さらだ。

クロムも、実はメイプルたちと一緒にいることが多い俺とシオリのことが気になっているメンバーもいたからと、感謝してきた。

・・・気が向いたら、その掲示板を見てみようか。




最近、ネタをひねり出すのに苦労するようになってきました・・・。
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