シオリがウキウキしながら新しいスキルの取得を報告してから数日後、短いアップデートを終えて新たなスキルとモブが追加された。
追加されたスキルは【毛刈り】。そして、追加されたモブは羊だ。
【毛刈り】はその名の通り、羊の毛を刈るためだけのスキルだ。
だが、それによって取れる羊毛は優秀な素材らしく、イズからも暇があれば取って来てほしいと頼まれていた。
主に毛刈りを行っているのは、俺、シオリ、サリー、カスミだ。
一応、メイプルも参加しているが、【毛刈り】を取得できるはずもないため、主に足止め係を担当している。
他のメンバーは、基本的に単独行動だ。
幸い、【毛刈り】は移動しながらでも使える。そのため、俺たちの中ではシオリが最も荒稼ぎしていた。
なにせ、NWOでおそらく最速のプレイヤーだ。この前の計測でマップの外周を1時間かからずに走り抜けた猛者だ。そのシオリが動き回れば、他のプレイヤーに発見されてからでも狙える。
結果、シオリとその他メンバーの合計を比べても、シオリは倍以上の羊毛をかき集めた。
「相変わらず、ぶっ飛んだスピードだなぁ・・・」
「そうね。メイプルみたいな極振りではないけど、それに近いのよね・・・」
「一応、今のSTRでギリギリあの槍を装備できているらしいから、ステータスポイントの振り直しが実装されてもしないだろうが・・・」
「シオリなら、関係、ないわよね・・・」
そんなことを、街のカフェでサリーと2人でドリンクを飲みながら話していた。
なぜ俺とサリーだけかと言われれば、シオリとメイプルが【毛刈り】にでかけており、俺たちは休憩したかったからだ。
ちなみに、シオリがステータスポイントをAGI極振りにしなくても関係ないというのは、俺たちの中で最もレベルが高く、上がるスピードも尋常じゃなく早いからだ。
圧倒的なAGIと上乗せされるSTRのおかげで、シオリは高速移動状態ならそこらの雑魚モンスターはワンパンできるし、ボスも数回殴れば沈む。そのため、経験値が溜まるペースが俺たちと比べても異常に早い。おそらく、ペインとタメをはるレベルだ。
つまり、現在進行形でシオリのAGIがどんどん上昇している、ということだ。
さらに、最近になって条件付きでステータスアップするスキルを手に入れてきたし。
俺もサリーも、決して一般的なプレイヤーとは言えないが、それでもメイプルやシオリほど異常ではない・・・はず。あの2人が際立っているだけ、というのもあるだろうが。
「ていうか、メイプルもつい最近、羊毛を生やすようになったし・・・」
「え?なにそれ?」
「メイプルから来てくれってメッセージが来てな。なんだろうと思って指定された場所に行ったら、毒がしみだしている羊毛の塊があってだな」
「ちょっと待って、いきなりなんのことかわからないのだけど・・・」
「俺だって、最初は何が何だかわからんかった。んで、中から声が聞こえたから【毛刈り】を使ったら、中からメイプルが出てきた、というわけだ」
あの時の俺の気持ちを、はたしてどれだけの人物が理解できるだろうか。
「・・・本当に、どうしてメイプルの周りには普通のプレイヤーが少ないのか・・・」
「それ、激しくブーメランだからな?いや、俺も人のことは言えないが・・・今のところ、一般枠はカスミだけだな」
クロムもまた、異常枠に片足突っ込んじゃったし。
「普通にプレイできなくなっちゃったな~(ね~)」と遠い目をしていると、運営から通知が届いた。
内容は、第3回イベントの開催についてだ。
今回のイベントは、期間限定のイベントで現れるモンスターを倒して得られるアイテムを集める、いわば周回に近いイベントだ。
集めた数によってそれぞれ個人報酬とギルド報酬が存在し、ギルド報酬は規模によって必要な個数が変わるということだった。
まぁ、
「俺たちは心配いらないな」
「そうね、シオリがいるしね」
まさに、シオリが大活躍するイベントだ。どれだけ集めてくるか、楽しみでもあるし不安でもある。
逆に、
「メイプルには、つらいイベントになりそうだな」
「それも、そうね」
AGIが0のメイプルには、なかなか厳しいイベントだと言える。
おそらく、最低限集めたらそれで終わるだろう。
とはいえ、暇になった時間でメイプルが何をするかは不安だが・・・さすがに、立て続けにわけのわからないスキルを手に入れることはないと思いたい。