あれから2週間後、第3回イベントが開催された。
対象のアイテムを落とすモンスターは、赤い牛だ。
今日のところは、俺とシオリはトップ陣に少し遅れてから参加したが、シオリの稼ぎ方が尋常ではなかった。
一応、イズから以前の羊毛を使った、今回のアイテムのドロップ数を上昇させる装備を身に付けているとはいえ、すでに2万近く集めている。
さすがに早すぎる気もするが、今回はフウもフル活用しているということだった。
一休憩したところで尋ねたところ、レベルが上がったことでフウが【スピードシェア】というスキルを覚えたらしい。
AGIを分け合うスキルで、本来ならフウの圧倒的AGIをプレイヤーに反映させると言うものなのだろうが・・・シオリの場合はむしろ逆、シオリの異常スピードがフウに反映される形になったのだ。
このスキルのおかげで、フウもシオリのスピードについてこられるようになり、索敵と追い込みを担当させることで効率的に狩れるようになったのだとか。
正直、やばいと思う。1000越えのAGIなんてシオリだけで十分なのに、フウもそのスピードを出せるようになってしまったのか。
ていうか、【巨大化】した巨体でそんなに速く動けるものなのか?
いろいろと思うことはあったが、アイテムを稼いでくれていることに代わりはないから、そっと目を逸らすことにした。
かくいう俺は、クローネの背中に乗ってひたすら狙撃していた。もちろん、【拡散】による広範囲爆撃も忘れない。
それに、今回試してわかったのだが、矢を3本つがえて【拡散】を使用した場合、射た3本がそれぞれ最大150本に分裂することが判明した。つまり、最大で450本の矢の雨を放てるようになったわけだ。
当初の狙撃手というプレイスタイルもちゃんとこなせているとはいえ、上空からの広範囲爆撃も可能になったことに、どうしてこうなったのだろうと首を傾げざるを得ない。
とはいえ、さすがに効率ではシオリには負ける。
まず、【拡散】は1時間に一度しか使えず、1度使ったら1時間はちまちま矢で射抜くしかない。
一応、【ボムアロー】や【エクスプロージョン】のような爆発による広範囲攻撃もあるが、【ボムアロー】は爆発半径がそこまで広くなく、【エクスプロージョン】は【黒竜ノ息吹】の恩恵を受けないから1発で仕留めることもできない。
一応、ほとんどその場を動かなくても牛を仕留められているが、群れを見つけても丸ごと倒しきるのは難しい。
結局、今回のイベントはひたすら遠距離からプチプチとつぶしていくことしかできなかった。
「はっくし!・・・? なんだ?」
途中、なぜかくしゃみが出て謎の悪寒が背中を走ったが・・・特に何もない・・・よな?
* * * * *
「ふぅ、だいぶ集まったなぁ」
走り始めてから、だいたい3時間くらいか。
確認してみたら、うちの名前が個人ランキング1位に載っとった。続いて、ペインやドレッドなんかが並んどる。
「クラルの名前は・・・あまり順位は高くないなぁ」
一応、名前が載るくらいには上位やけど、うちらトップ勢に比べたらやっぱり少ない。
まぁ、狙撃が本業のクラルなら、こんなもんかぁ。そもそも、弓矢であんな規格外広範囲爆撃を何度も撃ち込まれたら、完全にバランスが崩壊してまうし、しゃーないか。
メイプルちゃん?あれは論外や、論外。
なんちゅーか、メイプルちゃんのはビギナーズラックにしても上振れがおかしいことになっとるしなぁ。
というか、個人的にはモミジちゃんも十分おかしいと思っとるんやけど・・・。
なんかのスキルなのか、焦点を合わせようと思っても上手く合わんし、スキルで音とか姿が完全に消えたりするし、完全に暗殺者って感じや。
あのクラルですら、何回か気配を掴み損ねたって言うとったし。
モミジちゃんはあまり攻撃向きじゃないから、レベリングには主にうちかクラルが一緒におることが多いけど、気づくと場所が変わってるんやんなぁ。
ただ・・・モミジちゃんの能力を確認したクラルが、ニヤ~ってあくどい笑みを浮かべとったのが、少し不安だったり頼もしかったりする。
あの笑みを浮かべるときは、たいてい意地の悪いことを考えとるからな。
いつか来るだろうギルド対抗戦に向けて、すでにクラルの中じゃいろいろと方針が固まっとるのかもしれへん。
まぁ、今はともかくこのイベントに集中するけど、終わったらクラルに聞いてみるのもえぇかもな。