基本的に、クラル視点とシオリ視点以外は俯瞰になると思います。
「ヒャッハー!もっとかかってこんかーい!」
「このっ、止まグエッ!?」
「クソがっ、おい!こっちに応援をガッ!?」
うちは、さっそく見つけた小規模ギルドを潰しとるところや。
フウの索敵に引っかかったプレイヤーを狩りながら、1人と敢えて逃がして見つけたギルドや。これくらいならどうってことあらへん。むしろ足りんくらいや!
「ん?なんや、もう終わりか?」
気付けば、拠点内のプレイヤーは全滅しとった。
いつの間にこんなことになったんやろ?
「まったく、張り合いがあらへんなぁ・・・お?モミジちゃんからや」
オーブを回収すると、ちょうどモミジちゃんからメッセージが届いた。
内容を読むと、うちからほど近いところに中規模ギルドがあるってことやった。
「ナイスや、モミジちゃん!んじゃ、フウ!さっそく行くで!」
フウの背中に飛び乗って、モミジちゃんからのメッセージ通りの方角に走らせた。
フウの背中からの攻撃でも【疾風】の効果が乗ることがわかったから、対多数相手ならこっちの方がやりやすい。
それに、巨大化したフウなら、1歩の距離は断然うちよりも長いから、結果的にこっちの方が速かったりするんや。
今回も、走り始めて5,6分くらいで目的のギルドにたどり着いた。
「て、敵襲!白い狼です!」
それなりにフィールドで乗っていたから、うちがメイプルちゃんと同じように白い狼を使役するということはバレとる。それはクラルの黒鷲も同じや。
だから、メイプルちゃんやサリー、他のメンバーはできるだけローブで顔を隠すようにしとるけど、うちとクラルだけは攻撃の時はローブで顔を隠さないようにしとる。
そのおかげで、うちには追手は少ない。
べつに顔を隠して、奪うときと防衛するときの2回やっつけてもええんやけど、たくさんポイントを稼ぐなら、なるべく他のギルドには長生きできる選択肢をとってもらおうってことになった。
これもクラルの作戦なんやけど、作戦会議の時、終始クラルが悪人面で作戦立案と進行をしとったから、基本的にクラル以外の全員がドン引きしながらの作戦会議になった。本人がそのことに気づいとらんのか気づいたうえで無視しとるのかはしらんけど。
「んじゃ、おとなしくオーブを寄こしぃ!」
無作法に敵ギルドの陣地に乗り込んだうちは、槍を左右に振るいながらプレイヤーを倒していく。正面の槍が届かない範囲は、フウが噛み千切ったり前足でお手して踏みつぶしとるおかげで、楽に敵の守りを突破できた。
「これはもらうで。ほんじゃな!」
さっさとオーブをもらったうちは、さっさと敵ギルドの拠点を後にした。
クラルはできるだけ序盤で稼ぎたいって言うとったから、まずは10個くらい稼いどくか!
* * * * *
【楓の木】の攻撃組、特にクラールハイトとシオリが無双している中、モミジは足早に移動してマッピングに努めていた。
「ふぅ。これで半分くらいかな」
イベント開始から1時間。シオリとのレベリングで得たステータスポイントの多くをAGIに割いたこともあって、すでに参加ギルドのうち半分の場所を把握していた。そのうちの何か所かは、マップで最も近いメンバーにメッセージを送って知らせるようにしている。
「ここから先は、私たちの拠点からも遠くなっちゃうけど・・・私は見つからないようにするだけなら問題ないし、他の皆さんの移動も、フウとかクローネがいるから大丈夫だよね」
クラールハイト直々のお願いということもあって、モミジは張り切りながらも思考を冷静に回していた。
すると、モミジがいる枝の下に3人のプレイヤーがやってきた。どうやら、攻撃組のようだ。
「うん・・・せっかくだし、聞いてみようかな」
そう言って、モミジはスッと立ち上がった。
今までのレベリングでモミジはシオリと共にいたが、それによって戦闘に対する恐怖感情をある程度克服できた。
いや、克服したというのは、少し違うかもしれないが。
「【凪】」
モミジは自らの音のすべてを消してから、3人組の背後に降りたった。
「失礼します」
そして、相手には聞こえない謝罪を呟いて、後ろから短剣を1人の首に突き立てた。
メイプルの【毒竜】に次ぐ効果を持つ毒の短剣の被害に遭ったプレイヤーは、なすすべもなく光に変わった。
「なっ、どこだ!?」
「まさか、伏兵!?」
残った2人のプレイヤーは、音もなく仲間が死亡した事実に動揺を隠せず、足元にしゃがみこんだモミジを見失っていた。
「えいっ」
その隙をついて、モミジはイズ特製の麻痺効果付きの短剣を振るい、2人のプレイヤーを拘束した。
「「えっ?」」
「【解除】」
モミジが【凪】を解除すると、そこで初めて2人のプレイヤーはモミジの存在に気が付いた。
「なっ、いったいどこから!?」
「えっと、すみません。あなたは別にいなくてもいいので」
「ぎゃっ!?」
動揺するプレイヤーの疑問には耳も貸さず、あくまで淡々と毒ナイフを突き立てて、光へと変えていった。
残されたプレイヤーは、ただのゲームであるはずなのに、背筋に走る悪寒が治まらなかった。
「えっと、すみません。ギルドの情報を教えてくれませんか?」
「なに、をっ・・・言うわけが・・・」
一見、可愛らしいと思える微笑みを浮かべながら、有無を言わさぬ口調でギルドの情報を引き出そうとする。
が、当然、相手も素直に「はい、そうですか」と応じるはずはない。
だが、
「教えてくれませんか?」
「だから、教えるはずは」
「教えてくれませんか?」
「このっ、しつこ・・・」
「教えてくれませんか?」
ただただ無機質に、モミジは質問を続ける。
麻痺が解けそうになっても、再び麻痺をかけなおすため逃げることもできない。
「教えてくれませんか?」
「わ、わかった・・・」
結局、謎の圧力に押されて自分のギルドの情報はもちろん、知りうる限りの他のギルドの情報を引き出した。
そして、あらかた聞きたいことを聞き終えたモミジは、にっこりと笑い、
「なるほど、ありがとうございました」
お礼を言ってから、なんのためらいもなく毒ナイフを振り下ろした。
【楓の木】の諜報員であるモミジは、『戦うのが苦手なら、戦わずに相手を倒せばいいじゃない』の精神をシオリとのレベリングで手に入れた。結果、スキルと相まって、クラルやシオリ、サリーでも知覚するのが難しい、破格の暗殺者にもなった。
もしこの光景をサリーやクロムが見たら、頭を抱えてしまうだろう。
事実・・・
* * * * *
「・・・見ちゃいけないものを見てしまったかもしれん」
少し遠出してギルドを探していたら、ちょうどモミジが尋問しているところにでくわした。
幸い、俺は空を飛んでいたから、モミジには気づかれなかったようだが・・・。
正直、頭を抱えずにいられなかった。
可愛い童顔美少女に、笑顔で刺される。
これってありですか?
自分は、わりとありな方です。
笑顔で見送ってくれるならうれしいです。それが可愛い女の子ならなおさら。
まぁ、ヤンデレとかメンヘラは勘弁ですが。
*【自白強要】に説明を付け加えました。
精神操作のスキルはさすがに問題があると指摘されたので、大幅に制限をつけました。
*【自白強要】を消去しました。
とある方の作品を見て、やはり個人情報に直結しかねないスキルは消した方がいいと判断しました。