スキル探し勝負を始めてから3日目。とうとう最終日だ。
タイムリミットは今日の夜だが、昨日今日は休みだったおかげでレベルもスキルも十分充実し、さらに変わり種のスキルも取得した。
「さて、今日は【魔弾の射手】を試していくか」
スキル【魔弾の射手】
他の武器や魔法を矢として放てる。
ダメージは矢にした武器や魔法の威力に依存する。
使用した武器は確定で壊れる。
取得条件
弓矢を装備した状態で、弓矢以外の武器や魔法によってモンスターを100体倒す。
右手に短剣を装備してモンスターを倒していったら、2日目の終わり際に偶然取得できた。
少し試してみたところ、武器の場合は装備欄とは別に矢にする武器を設定する欄が加わっており、ここに武器を選択して設定することで武器を消費して使用できるようだ。1発ごとに武器を消耗するため乱用はできないが、普通に矢を放つよりも高い威力が期待できる。
魔法については、何も持っていない状態で弓を構えて魔法を唱えることで、火の魔法なら火でできた矢が、水の魔法なら水でできた矢が、といったように魔法に応じた矢が現れる。使い勝手としては、こっちの方がいいが、もちろんMPも消費するし威力もINTに依存することになってしまうから、こちらも使いどころを見極める必要がある。
「んじゃ、始めるとするか」
この3日間で慣れたように、俺は“風の峡谷”に足を踏み入れた。
すると、さっそく上から中型の鳥モンスターが降りてきた。
さっそく、【魔弾の射手】を試してみることにする。
「スチールソード」
今回のために大量に用意した武器の名前を言うと、右手に安価な片手剣が現れた。それを握り、弓につがえてモンスターを狙う。
柄を弦にひっかけて引き絞り、狙いを定めて放った。
放たれた片手剣は胴体に突き刺さるが、モンスターは光となって消え、片手剣もまたモンスターと同じように光になって消えていった。
「威力が上がるってのは本当だな。矢なら倒せなかったところだ。だが、狙いをつけるのが思ったより難しいな」
矢と違って、剣には柄に弦をひっかけにくく、鍔が当たらないようにするのにも注意しなければならない。
威力があるのはいいことだが、おそらく小型のモンスター相手なら外していたところだろう。使うなら、図体のでかいモンスターに絞った方がいいか。
「次は、魔法だな」
先に進んでいくと、また先ほどと同じモンスターが現れてきた。
次は、何も持たないまま弦を引き絞り、魔法を唱える。
「【ファイアーボール】」
火の魔法の中でも初級のものを唱えると、弦を持つ手の先に火の球が出現し、だんだんと細長くなっていって矢のような形になった。
そのまま狙いを定めて矢を放つと、放たれた火の矢はこれまたモンスターに直撃し、炎に包まれて光となった。
「ふ~ん、火の矢だからといって熱いわけでもないんだな」
素手で火を持っているようなものなのだが、不思議と熱さは感じなかった。
まぁ、それで狙いが付けられなくなるようなら大問題だが。
狙いのつけやすさで言えば、武器を矢にするよりかは構えやすいが、魔法のエフェクトで若干相手が見えづらくなってしまう。そこまで支障をきたすわけではないが、無視できるほど小さい問題と言うわけでもない。
まぁ、外さないに越したことはないだろうが、格上とのPvPでは当たらなくなることもでてくるだろうし、なるべく気にしないようにした方がいいか。
さて、レベルも十分上がり、スキルもレアなものから基本的なものまで十分揃ってきた。
装備も、さすがにトッププレイヤーほどではないが、それなりにいいものをそろえている。
道中までのモンスターも、スキルのおかげでだいたいがワンパンか、多くても3回くらいで仕留められるようになった。
少し物足りなくなってきたところだし、ちょうどいい。
「ボスモンスター、1人でやってみるか」
別に無理そうなら、途中で離脱すればいい。
それに、縛りプレイみたいな感じでスリルがあって面白い。
ソロで被弾せずに遠距離武器でボスモンスターを倒す。いいじゃないか。
せっかくだし、撮影機能も使って録画してみるか。
期待に胸を躍らせながら、道中のモンスターをヘッドショットで沈めていく。
余談だけど、このゲームにもヘッドショットの概念があるとは思っていなかった。さすがにレベル差やVITが大きすぎると1発で倒せないが、それでも普通に当てるより数倍のダメージが入る。
余裕があったら、他にも部位ごとでダメージが違うのか試してみよう。
道中は何も危なげなく切り抜け、とうとうボス戦のある大広間の前に到着した。
ここに出てくるボスも、ちゃんと調べてある。
現れるのは、ブラックワイバーンと呼ばれる翼を生やしたドラゴンで、空中からの急襲やブレスを得意にしている。
本来なら、8人のフルパーティーで前衛と後衛をしっかりわけて挑むものらしいが、今回は後衛の俺一人だけだ。
そう考えると、これから行う所業にたぎってきた。
これで1発で成功したら、シオリに動画を見せつけて思いっきり自慢してやろう。
「よしっ、行くぞ!」
気合を入れなおし、俺は大広間に足を踏み入れた。
「ギャアオォオオオ!!」
次の瞬間、上空からブラックワイバーンの方向がとどろいた。
俺はひるむことなく、素早く矢を放った。狙ったのは、ブラックワイバーンの眼球だ。
放たれた矢は狙いたがわず眼球に突き刺さり、ブラックワイバーンは空中で暴れ始めた。
「スチールブレード」
すかさず俺は【魔弾の射手】によって片手剣を取り出し、首に狙いを定めて放つ。
放たれた片手剣は、狙いより少し下にずれたものの直撃して、ブラックワイバーンのHPを1割ほど削った。計算上は、これをあと10回繰り返せば倒せることになる。
とはいえ、これはあくまで速攻からの奇襲で成功したからであり、次も成功する保証もなければ、それこそ10回連続で成功するなんて奇跡に近い。
ここからは、地道に避けながらちまちま削っていくしかない。
幸い、このゲームでは矢の本数に限りはないし、【魔弾の射手】用の武器もそれなりの数を用意してきた。
1時間で、この戦闘を終わらせることにしよう。