25個のオーブを防衛した後、俺は早めの休息に入った。
なぜなら、なるべく夜中に襲撃をしていきたいからだ。
人数が少ない関係上、オーブ集めの効率は大規模ギルドには敵わない。
だから、オーブを奪いやすいギルドが残っているうちに、できるだけポイントを稼いでおきたい。
メイプルはあくまで上位入賞が目標だが、俺とシオリはあくまで1位を狙っている。
すでに俺とシオリで20個集めたが、後半はどうなるかわからない。
今日の目標としては、できるだけもう20個集めたいところだ。そうすれば、トップ3はほぼ確実だろう。
そんなことを考えながら、奥のスペースで4時間ほど仮眠をとった。
「クラル、時間や」
不意に、シオリに揺さぶられて起こされた。
「もうそんな時間か」
「回復は十分みたいやな。攻めに行くん?」
「そのつもりだ。俺の装備は、むしろ夜の方が活きるしな」
俺の装備もクローネも、主な色は黒だ。うまく夜の闇に紛れることができるだろう。
「とはいえ、近くで奪えるオーブも少ないだろうし、防衛のこともある。3時間くらいで戻るつもりだ」
「わかったで。んじゃ、うちもおやすみや」
そう言って、シオリはすぐに寝転がって寝息を立て始めた。
相変わらず、寝るの早いな。
どうでもいいことを考えながら、オーブのある広間に出る。
「あっ、クラルくん!おはよー」
「おう、起きたぞ。んじゃ、早速だがオーブの奪取に行ってくる。3時間くらいでもどってくるから」
「はーい」
それだけ言って、俺は洞窟の外に出てクローネの背に乗って飛び立った。
今回はモミジの情報をもとに製作したマップがあるから、迷わずにオーブの奪取に動ける。
とりあえず、手ごろな中規模ギルドから奪おうか・・・。
そう思ってクローネを飛ばすと、到着したギルドに見覚えのあるプレイヤーが襲撃しているところだった。
「なるほど・・・ま、悪いタイミングでもないか」
俺は矢を3本つがえ、ある程度地面に接近してから飛び降りた。
「なっ、新手だ!」
俺に気づいたプレイヤーは声を張り上げるが、他はそれどころではないらしく、警告に返事を返す余裕もないようだった。
「大人しくくたばっとけ、【速射】」
俺は矢でハチの巣にして仕留めてから、オーブを奪った。
「おい!オーブが奪われてっ、ぎゃあ!?」
オーブを取られたことに気づいたプレイヤーが振り向くが、それは致命的な隙となって、そのまま光へと消えていった。
そして、今しがたそいつを斬り伏せたプレイヤーが、俺の前に立つ。
「・・・まさか、ここで会うことになるとはね。クラールハイト」
「俺も意外だったさ、ペイン」
そう、俺の狙っていたギルドを襲っていたのは、ペイン率いる【集う聖剣】のメンバーだった。
他のプレイヤーは俺を倒そうと武器を構えようとしたが、ペインが片腕を上げて制止させた。
「これまた意外だな。このオーブを奪わないのか?」
「君に奪われる可能性を考えるなら、ここで手を出さない方がいいと思っただけさ」
「利口だな」
俺の挑発に後ろのプレイヤーはわずかに殺気立つが、ペインは気にせずに会話を続ける。
「それで、このまま見逃してくれるのか?」
「それもそうだけどね、先に言っておきたいことがあるんだ」
「なんだ、それは。宣戦布告か?」
「そうだ」
俺の冗談交じりの言葉に、ペインは真顔で頷いた。
「僕たちは、必ず君たち【楓の木】を攻めに行く。その時まで、楽しみにしていてくれ」
「・・・なるほど。そいつはいい。ぜひ、楽しみにさせてもらう」
俺はペインの戦線布告を受けて、犬歯をむき出しにして笑う。
わざわざ、向こうから挑戦しにきてくれるというのだ。歓迎しない手はない。
「なら、次にお前と会うのはその時になるかもな」
そう言って、俺は猛スピードで飛翔するクローネに飛び乗って、その場を後にした。
「さて、楽しみができたな・・・まずは、5つをノルマにしようか」
高鳴る鼓動を感じながら、俺はオーブ奪取に精を出した。
* * * * *
4時間後、結局オーブを7個集めた俺は、そこで拠点に戻った。
「戻ったぞー」
「あっ、クラル!おかえり!」
「「おかえりなさい、クラールハイトさん!」」
広場にいたのは、メイプルとユイ、マイだけだった。
「他のメンバーは?」
「奥でカナデとクロムさんが寝てて、シオリちゃんはついさっき起きてオーブ集めに行っちゃったよ」
「ったく・・・そう言えば、サリーはまだ戻っていないのか?」
少なくとも、この広間にはいない。だが、奥で休憩しているわけでもないらしい。
「うん、まだ戻ってきてないみたいだけど・・・あっ、サリーからメッセージだ」
そう言って、メイプルがサリーから届いたというメッセージを見ると、顔色を変えた。
「どうした、メイプル?」
「く、クラルくん、これ!」
メイプルが俺に画面を見せると、そこには、
『多分死ぬ。ごめん。』
とだけ書かれていた。
おそらく、相当の窮地なのだろうことがわかる。
「は、早く助けに行かないと!」
「待て」
焦るメイプルに俺は制止の声をかけ、僅かに思案する。
サリーの窮地。疲労しているとはいえ、サリーが死を覚悟するほどの相手は多くない。最低でも、実力を伴った大規模ギルドだと考えた方がいいだろう。
そして・・・いいことを思いついた。
横では、メイプルたちが俺の顔を見てビクンッ!とふるえていたが、俺はそれに構わず、すぐに行動に移った。
免許合宿で初めての路上を夜中に走って、心も体も割とボロボロな状態で書きました。
がちがちに緊張して、街灯少なくいのが心臓に悪くて、なぜか左のわき腹よりの肋骨が痛くなってしまって・・・。