弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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第4回イベント1日目・5

ちょうどクラールハイトが拠点に戻った頃、サリーは絶体絶命の状況に陥っていた。

上位入賞のために無理を承知でオーブを10個ほど集めたサリーだったが、長時間集中していたせいで索敵の精度が落ちてしまい、知らないうちに囲まれてしまったのだ。

その数は100を超える。

サリーを包囲したのは、フレデリカを指揮官とした【集う聖剣】のプレイヤー。

サリーは、都合がいいと戦闘を開始した。

なにせ、【集う聖剣】にはダミーの情報を流してある。それなら、上手く戦えるはずだと踏んだのだ。

また、限界状態を超えたからか、感覚は今まで以上に研ぎ澄まされ、重かったはずの体も軽くなっている。ギリギリのカウンターも、遅くなった世界の中で容易に決まっていく。

さらに、ドレッドと戦った際に得た恐怖センサーも、今やドレッドよりも上手く扱えていた。

だが、それでも30人が限界だった。

サリーを追ってきたプレイヤーが第3勢力となって包囲に加わった段階で、急に足の動きが止まって、ガクンと膝から崩れ落ちたのだ。

その時に放たれた追撃はなんとかしのぐことができたが、もはや体は少しも動かず、相手もわずかばかりの油断もない。

 

「次は負けないから」

 

それは、サリーなりの負け惜しみだった。

 

「【多重炎・・・」

 

フレデリカがとどめを刺そうと詠唱を唱えようとした、その時だった。

 

「フレデリカさん!上です!」

「【速射】」

「っ、【多重障壁】!」

 

突如降り注いだのは、矢の雨。

フレデリカは咄嗟に詠唱を切り替えることで防げたが、サリーにとどめを刺すことはできなかった。

そして、サリーを救ったのは、

 

「よう。ずいぶんとボロボロだな」

 

漆黒の弓を構える、クラールハイトだった。

 

 

* * * * *

 

 

ぶっちゃけ、かなりギリギリだった。

サリーからメッセージが届いてから、速攻でクローネに乗ってここまで来たのだが、あと一歩遅かったらやられていた。

 

「く、クラル?」

「ったく、無茶しやがって。いっちょ叱られてこい!」

「えっ、ちょっ、きゃあ!?」

 

俺は問答無用でサリーの首根っこを掴み、思い切り上空に放り投げた。

何人かのプレイヤーが無防備になったサリーを狙おうとしたが、その前にクローネがサリーを回収した。

そして、一緒に来た人物がサリーを一喝した。

 

「もうっ、サリー!無茶しちゃだめだよ!」

「ちょっ、メイプル!?」

 

そう、今回はメイプルも一緒に連れてきたのだ。

メイプルの【身捧ぐ慈愛】があれば、クローネが落とされる心配はない。

 

「メイプル!いったんサリーを頼んだぞ!・・・さて」

 

メイプルに声をかけてから、俺はフレデリカに視線を向けた。

視線を向けられたフレデリカは、ビクンッと体を震わせて杖を構えた。

 

「ず、ずいぶんと余裕だねー?メイプルが一緒じゃなくてもよかったのかなー?」

「別に?お前ら相手なら、俺1人で十分だ」

 

俺の挑発に、俺を囲むプレイヤーがにわかに殺気立つ。どうも、俺の言葉が気にくわないようだ。

この挑発は、モミジからの情報を聞いたうえで放ったものだ。

 

『【集う聖剣】における、クラールハイトさんの認識ですが、やはり弓使いというくくりで見ているようです。クラールハイトさんの第1回イベントの表彰での発言もあって、ペインさんを倒したのは不意打ちによるまぐれ、人数で囲って近づけば倒せると考えているようです。それは、ペインさん以外のほぼ全員に見られます』

 

モミジの情報通り、向こうは俺を()()()()()だと勘違いしてくれているようだ。

であれば、その勘違いの代償を払ってもらうことにしよう。

 

「【創造(クリエイト)】」

 

俺は詠唱を呟いて、拳銃に片刃の刃がついたガンブレードを両手に持って構えた。

未知のスキルに、相手は動揺する。

その隙を見逃すほど、俺は優しくない。

 

「せっかくだ。お前たちで対ペインのウォーミングアップをするとしようか!」

 

俺は獰猛に笑い、敵陣のど真ん中に突撃した。

 

 

* * * * *

 

 

「うわっ、始まった・・・」

「うん。どうなるんだろうね・・・」

 

上空からクラールハイトの様子を見る2人は、ドキドキしながら見守っていた。

最初は 防衛をほっぽり出したメイプルに混乱していたサリーは、クラールハイトの指示だと聞いて「あっ、またなにか悪だくみを思いついたのか」と納得した。

だから後は、クラールハイトの方の心配をするだけなのだが・・・

 

「まぁ、大丈夫だよね?」

「たぶん、そうね」

 

2人は大して気にしていなかった。

なにせ、以前のオフ会の時、2人は動画で知ったのだ。

クラールハイトが残した伝説の1つを。

それは、とある剣戟アクションVRの大会で優勝したクラールハイトが行ったエキシビションマッチ。

その内容は、1000人組手。言葉通り、1000体のモブと一斉に戦うというものだ。

さすがの開催者や観客も、「クリアできるか」ではなく「何体倒せるか」とか「いつまで耐えれるか」といったものがほとんどだった。

なにせ、このゲームにNWOのような攻撃スキルはなく、すべて己の腕1つでプレイするゲームなのだから、どうあがいても体力がもつはずがないのだ。

()()()()()()()()()()()

クラールハイトも、その例外の1人であり、あろうことか、ただ1度のダメージも受けずに1000人組手をクリアした。

これには運営や観客も絶句し、その時にクラールハイトが得た称号が、そのゲームにおける二つ名となった。

その名も、【一騎当千】。

クラールハイトは、それこそスキルも使わず、ただの1人で1000人の敵を相手取れるのだ。

そんなクラールハイトにとって、プレイヤーとはいえ百数十人はごく少ない数でしかない。

かかった時間は、およそ30分。

その30分で、フレデリカを除いたすべてのプレイヤーが全滅した。

 

 

* * * * *

 

 

「ちっ、逃がしちまったか」

 

最後に残っていたプレイヤーを撃ちぬいたところで、フレデリカがその場にいないことに気が付いた。

一応、逃げる足音がしたプレイヤーも撃ちぬいたから、討ち漏らしはいないと思っていたが、ぎりぎり耐えられたか。

本音としては倒しておきたかったが、仕留め損ねたものはしょうがない。

大人しく帰ることにしよう。

それに、戻ったら()()の報告も聞いておかないとな。

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