オーブを29個防衛した俺たちは、再びオーブの奪取へと向かった。
だが、今回の出撃はメンバーを大きく変えた。
まず、メイプルとモミジのメンバーに、新たにマイとユイを加えた。
その上で向かわせるのは、【炎帝ノ国】だ。
そろそろ本格的に、大規模ギルドへ侵攻しておきたい。
その上でメイプルたちをNWOの2大ギルドの1つである【炎帝ノ国】に向かわせたのは、相性がいいからだ。
【炎帝ノ国】にも第1回イベントの上位プレイヤーが4人揃っているが、あくまでその特徴は広範囲攻撃が2人と後方支援が2人。メイプルの防御を貫く手段はかなり限られる。少なくとも、メイプルの防御を貫くような即死攻撃は存在しないと断言できる。
ギルマスであるミィも、職業は魔法使い。通用する手があるとすれば、せいぜい閉じ込めてからのスリップダメージくらいだろう。
その時は、メイプルに【機械神】を使っても構わないと言ってあるから、やられる可能性は低い。
・・・にしても、作戦会議の時はビビったな。まさか、メイプルが俺の【
まぁ、それは置いておくとして、もう1つ。
今回は、俺とシオリでタッグを組むことにした。
攻めに行くのは、【集う聖剣】だ。
ペインから宣戦布告を受け取ったとはいえ、向こうから攻めてくるのを待つだけというのは礼儀に反するというものだろう。
徹底的に叩き潰すために、俺とシオリはかなり気合が入っている。
シオリが地上から、俺が空からというのは変わらないが、出し惜しみも容赦も一切しないと決めていた。
そして、拠点を出発してから20分ほど。【集う聖剣】の拠点の近くまでやってきた。わりと早い段階で俺たちの接近を把握していたようで、すでに迎撃態勢に入っている。
こういうときは通信会話なんかができれば便利なんだろうが、NWOにそんなものはない。
仕方なしに、俺はシオリにメッセージを送った。
『俺たちで全滅させるくらいの勢いでいくぞ』
『了解や。任せとき!』
シオリからの返事に俺は笑みを浮かべた。
さて、俺たちで蹂躙劇を始めるとするか。
* * * * *
この時、【集う聖剣】の防衛に残っていたのはフレデリカとドラグだった。
すでにペインにクラールハイトとシオリが接近している旨のメッセージは送っており、あわよくば救援に来てもらおうとたくらんでいたのだが、
「フレデリカ。ペインはなんて?」
「・・・どれだけ急いでも、30分はかかるって。けっこう離れたところまで進んでたみたい」
「・・・30分、もたせられると思うか?」
「いや~、無理でしょ~・・・」
なにせ、サリーを助けに現れた際、100人以上のプレイヤーを30分足らずで全滅させたのだ。今、防衛に回っているプレイヤーも、100人くらいしかいない。
さらに、それに加えてシオリもいるということなのだから、30分はおろか、下手をすれば10分も耐えられないかもしれない。
「最悪、ここでやられるくらいなら、オーブは向こうに渡して、私たちだけでも逃げていいってさ」
「むしろ、ほぼほぼそうなりそうじゃね?」
そういうドラグの視線の先には、クローネの上でミサイルポッドを構えるクラールハイトの姿が。
「・・・うん、逃げよう!」
「ていうか、なんであんな物騒なもんがあるんだよ!聞いてねぇぞ、あんなの!」
「そんなの、こっちだって知りたいよー!【多重加速】!」
悪態をつきながらも、逃走に入るまでの動作にまったく無駄がない。さりげなく、フレデリカもAGI上昇のバフがかけられる。
そして、2人が逃走を始めたのと、クラールハイトからミサイルが放たれたのは、ほぼ同時だった。
大規模ギルドのハンデである、オーブが防衛に向かない平地などの場所に発生するというわりをもろにくらった形で、次々と地上に爆炎の花を咲かせる。
シオリは、着弾地点の間を縫うようにしながらオーブへと接近し、通り掛けにすれ違ったプレイヤーを倒していく。
その頃には、フレデリカとドラグ以外のプレイヤーも生存のために逃走を始めた。
逃げる間際に、フレデリカがペインからのメッセージをそのまま他のギルメン全員に送ったからだ。
ただでさえ初日に打撃を受けたのに、これ以上余計な消耗をするわけにはいかないと機転をきかせた結果だ。
そのおかげで、まんまとオーブを奪われてしまったものの、この侵攻で倒されたプレイヤーは30人ほどで済んだ。
それでも、これが誤魔化しができないほどの敗走であることは、【集う聖剣】のすべてのプレイヤーの誰もが認識したことだ。
事実上、NWOの2大ギルドの1つである【集う聖剣】は、たった2人のプレイヤーにいいように蹂躙され、あっさりとオーブを奪われた。
* * * * *
「ちっ、だいぶ逃げられたな」
けっこうミサイルをばらまいたはずなんだが、フレデリカの防御とほとんどのプレイヤーが逃走に徹したことで、思ったより【集う聖剣】のメンバーを仕留められなかった。
いっそ、ここで追撃してもいいのだが、あまりやりすぎると肝心のペインたちが攻めてこなくなる可能性もあるから、ここいらで我慢することにしよう。
地上に降りると、ちょうどシオリがオーブを回収したところだった。
「オーブは奪えたけど、なんかパッとせぇへんなぁ」
「たぶん、ペインからオーブは捨てても構わないって指示があったんだろう。ずいぶんと思い切りがいいことだ」
もちろん、ただの憶測でしかないが、慎重派であるだろうペインなら十分にあり得る。
「ま、もらえるものはもらっておくとして、さすがにこれだと消化不良だ。また10個集めてから戻るぞ」
「はいは~い」
俺は再びクローネの背に乗って飛び上がり、シオリもフウに乗って森の中へと走っていった。
この後、俺とシオリは決めた通りオーブを9個集めてから、拠点に戻っていった。
油断すると、クラルとシオリのスキルの一部の出番がまったくなくなってしまいます。
クラルの【魔弾の射手】とか、シオリの【大樹の怒り】とか。
僕としては、もういっそ出番がないならないでいいやってなっていますが。