クラールハイトとシオリが【集う聖剣】を蹂躙した頃、同じくメイプルたちも【炎帝ノ国】との戦闘は佳境を迎えていた。
シロップから堂々と降り立ったメイプル、マイ、ユイは【トラッパー】ことマルクスの仕掛けた罠を真正面から突破した。
途中から救援に間に合ったミィによるメイプル対策の炎の牢獄も、【機械神】を使用したことで破られてしまい、ミィの苦し紛れの自爆も効かなかった。
【炎帝ノ国】を壊滅させ、オーブを奪おうと拠点を進んだ3人だったが、
「あれ?」
「ど、どういうことですか?」
「・・・・・・オーブを持って逃げた?」
拠点はすでにもぬけの殻で、肝心のオーブもなかった。
このミィの悪あがきによって、最悪の事態は回避することができた。
・・・そう思っていた、【炎帝ノ国】は。
「まぁ、モミジちゃんがいるから大丈夫だよね?」
「はい!そうですね!」
「それなら、私たちは他のギルドを倒していきますか?この辺りには、ちょうどいいギルドがいくつかありますから」
結局、クラールハイトの予想通りだったと、3人は慌てることなく、さらりと恐ろしい計画を立てて実行に移していった。
そんなことも知らず、オーブを持って逃げる役割を任された女性プレイヤーは、3人の護衛とともに何とかして拠点から離れることができた。
「はぁ、はぁ、ここまで来れば大丈夫か?」
「あぁ。仮に見つかっても、なんとか逃げ切れるはずだ」
「そうね。それなら、このオーブをすぐにミィ様のところに・・・」
そこまで言って、女性プレイヤーは周囲の異変に気付いた。
「ね、ねぇ。どうして霧が立ち込めているの?」
「そういえば・・・ここって、そういう地形だったか?」
「いや、少なくとも、昨日はそんなことはなかったはずだが・・・」
4人は困惑を隠せずに立ち往生するが、すぐに次の異変が起きる。
「ともかく、早くミィ様のところに・・・え?」
「おい、どうし、なにっ?」
「ちょっ、待てよ!」
「いったい、なにがどうなって・・・」
突然、4人に麻痺のデバフがかかり、地面に崩れ落ちてしまったのだ。
おそらく、この霧が原因なのだろうと推測したが、動かせない体ではメッセージで救援を呼ぶことも逃げることもできない。
いったい、誰の仕業なのか。
その答えは、すぐにやってきた。
「ふぅ。初めて使ってみましたが、けっこう使い勝手がいいですね、これ」
かろうじて動く首を動かして声のした方を向くと、そこにはぼんやりと浮かぶ人影が立っていた。
言わずもがな、モミジだ。
4人がぼんやりとした認識できないのは、【情報遮断】による効果だ。
これによって、相手はモミジの姿を認識することができない。
そのおかげで、【情報遮断】を使っている間は【暗殺者】の即死効果も簡単に発動するようになった。
また、【霧の都】に状態異常を付与できるようになったおかげで、毒や麻痺はもちろん、速度低下などのデバフもかけられるようになった。今付与しているのは、麻痺効果だ。
さらに、このスキルの凶悪なところは、霧の中にいる間は状態異常にかかり続けることにある。
そのため、一度麻痺になってしまったら、実質脱出は不可能となるのだ。
「それにしても、まさかあんな広範囲に罠を用意してあったとは思いませんでした。それも、1つの罠を避けても、近くにあるもう1つの罠を踏むように仕掛けている。【トラッパー】の異名を甘く見ていました。まぁ、おかげで新しいスキルも手に入れられたわけですが」
この4人を追跡しようとした時、モミジはマルクスによる罠にかかってしまったのだ。
幸か不幸か、植物のツタによる拘束であったため、すぐに短剣で斬り落とすことで事なきを得たが、そこでモミジは【忍術】のスキルレベルが上がり、新たなスキルを取得した。
【破壊工作】
仕掛けられている罠の位置を察知・解除できるようになる。また、特定の種類の罠を扱えるようになる。
このおかげで、他に仕掛けられている罠の位置がわかるようになり、すぐに追いつくことができたのだ。
「試したいことも試せて、予想外の収穫も得られて満足しましたし、もうオーブはもらいますね」
そう言って、モミジは無慈悲にナイフを振り下ろし、1人、また1人とプレイヤーを光へと変えていく。
そして、最後に女性のプレイヤーが残ったところで、モミジは残りのスキルを使った。
「【
放たれたのは、光る2本の短剣による瞬間6連撃。
なすすべもなく切り裂かれた女性プレイヤーは、光となって消えてオーブを落とし、モミジはそれを拾い上げた。
「ふぅ。なんとかクラールハイトさんの指示通りに動けて良かったです」
今回はうまくオーブを奪うことができたが、もともと【遠見】で確認してから行動に移ったため、かなりきわどい部分はあったが、それでも役割を果たせたことに、モミジは満足した。
「それで、メイプルさんたちは・・・近いギルドの襲っているのかな?早く届けにいかないと」
シオリによる魔改造とメイプルに似た天然によって強者と言える領域に踏み込んだモミジだが、直接的な戦闘力はやはり低いため、すぐにオーブをメイプルに渡すために、【情報遮断】を解除してから【凪】を発動し、メイプルたちのもとへと向かった。
この時のモミジのイメージには、アニメ「暗殺教室」の2代目・死神の黒っぽい靄になっているやつですね。
あれ、現実でできるようなものなんですかね?
いや、それを気にしたら、そもそも殺せんせーが生まれるはずもないわけですが。