左手のガンブレードが消え、その隙を見逃さずにペインが左から長剣を斬り上げる。
それでも、なんとか右手のガンブレードを左手に投げて持ち替えたが、しっかりと握る前に弾き飛ばされてしまった。
「やべっ」
「【断罪の聖剣】!」
無防備になった俺に、ペインは光り輝く剣が俺に向かって振り下ろされる。
長剣は、振り下ろされる勢いのまま俺に迫り・・・
「なんてな」
ペインがスキルを発動することを見越した俺は、剣の軌道を見切って最低限の動きで躱し、逆にペインの懐に潜り込んだ。
「なっ!」
「悪いが、ここは俺の距離だ」
スキル発動中で動けないペインが、俺の動きに対応できるはずもなく、俺は拳を握り締めてペインに連打を見舞う。
顎、頭部、肘、腕、膝、胸、腹へと拳を叩き込みながら、なんとか距離をとろうとするペインの逃げ足を読んで肉薄し、俺を弾き飛ばそうとする蹴りや長剣の初動を潰す。
あくまで銃や弓矢を使わず、スキルも伴わない素手による攻撃だからダメージはそこまで高くないが、その代わりペインは逃げることも攻めることも叶わない。
神崎流“火砕流”。相手の動きの一手先を読んで潰しながら何もさせず、自分の攻めだけを成り立たせる剛の型。俺が最も得意な技でもある。
当然、現実でやろうものなら大けがは必至だから、VR内でしかやったことはないが。
「このっ、【超加速】!」
埒が明かないことを悟ったのか、ペインはAGIを上昇させて逃げようとするが、
「逃がすかよ」
「! しまっ・・・」
度重なる連撃で膝をつきそうになるほど体勢が低くなったことによって、鎧にあるマントが地面につきそうになっているところを踏みつけて、完全に俺から逃がさないようにした。
そこからは、ずっと俺のターン状態でひたすらペインをボコボコにし続けた。ペインもマントを踏まれているせいで満足に立ち上がることもできず、近すぎるせいで剣も振るえない。
他のプレイヤーは何とかしてペインを助け出そうとするが、
「おっしゃー!暴れたるで!」
注意が俺とペインに向けられたおかげでシオリの包囲網に乱れが生じ、シオリは包囲から抜け出すことができた。
一度包囲から抜け出してしまえば、あとはシオリの独壇場だ。
俺に近づこうとするプレイヤーを、片っ端からなぎ倒していく。
そして、確定耐えスキルが発動するのも構わずに殴り続け、とうとうペインのHPが0になり、光となって消えた。
* * * * *
「おいおい!あいつは弓使いじゃなかったのかよ!!」
「いや、銃とか使ってた時点でおかしかったがな・・・」
ペインが倒されたことによって、他の【集う聖剣】のプレイヤーに少なからず動揺が走る。
当然、その隙を突くようにしてサリーやカスミたちが他のプレイヤーを倒し始めた。
ここに来て、フレデリカも撤退を決め込む。
「あーもう!さっさと逃げて・・・って、なにこれ?」
フレデリカが辺りを見回すと、いつのまにか広間は霧に包まれていた。
厳密には、霧に包まれているのはフレデリカだけなのだが。
そして、メイプルたちが【炎帝ノ国】を攻めた時に発生した霧の報告を思い出し、まずいと思ったときには、もう手遅れだった。
「【
フレデリカの背後から、赤く輝く2本の短剣が襲い掛かり、すべての条件がそろったモミジの【
「【暴虐】!」
フレデリカの支援がなくなったことでガクンと動きが鈍くなったドレッドとドラグに、メイプルがクラールハイトから使用が許可されたスキルを発動し、巨大な悪魔となって2人を掴み上げた。
「マジかよ!?おい!?」
「あー?・・・まだ変形・・・?」
2人は絶望と困惑の表情を浮かべ、ドラグはそのまま捕食されてしまった。
「いっそ、安らかな気持ちだ・・・」
ドレッドも、目を閉じながら諦念と共にメイプルに捕食されてしまった。
これで完全に指揮系統が潰れてしまい、残っていたプレイヤーも1人残らず死に戻りした。
* * * * *
「ふぅ。何とか、誰も死なずにすんだか」
【集う聖剣】を1人残らず殲滅したのを確認して、俺は大きく息を吐きながら、思わず地面に座り込む。
なんとか勝てたとはいえ、さすがにペインの相手はだいぶ疲れた。
「お疲れさまや、クラル」
「クラル、お疲れ様」
「っと、ありがとな、2人とも」
そこにシオリとサリーが近づいてきて手を差し出してきたから、俺もそれを掴んで立ち上がった。
「は~、マジでやりやがったな。傍から見てても冷や冷やしたぞ」
「それでも、あれだけの相手に誰1人も倒されずに勝てたというのは、これ以上にない大金星ではあるな」
その後ろから、クロムとカスミが感心半分呆れ半分の声音で近づいてきた。
「だが、今夜はこれからだ。予定よりだいぶ前倒しになったが、次の段階に進むぞ」
俺の指示に全員頷き、モミジとシオリ以外の全員がメイプルの背中に、モミジとシオリはフウに乗り、夜の森へと駆け出した。
ふと思ったんですけど、この辺りだと原作では盾を持っていることになってますけど、アニメでも文庫の挿絵でも防振りらいんうぉーずでも盾を使っている描写が全くないんですよね。
そもそも、長剣に盾って(個人的には)ミスマッチですし。
なので、ここでは盾を持っていない体で展開を進めました。