4日目と5日目は、メイプルの神輿以外は特に何事もなく過ぎ去り、運営の終了の知らせと共に俺たちは通常のフィールドへと転移された。
転移してから数秒後、俺たちの目の前に結果発表を告げるパネルが開かれた。
そこに表示されていた順位は、
「すごい!1位だよ!」
「まぁ、狙っていたからな。とはいえ、これで一安心だな」
「落ち着いとんなぁ。もっとはしゃいでもええんとちゃう?」
シオリの言う通りかもしれないが、もともと何かにはしゃぐ性分でもないしな。
それに、10位以内に入れば報酬は変わらないし。
そんなことを話している間に、最高ランクの報酬が表示された。
まず、ギルドメンバー全員に銀色のメダルが5枚と、何かの気の札が1枚。ギルドマスターであるメイプルには、設置すると全ステータスが5%上昇するギルド設置アイテムが贈られた。
気になるのは、この木の札だ。
「【通行許可証・伍】・・・なんや、これ」
「次の階層で必要になるアイテムみたいだが・・・まぁ、細かいことは今、考えなくてもいいだろ」
ちなみに、木の札には下に小さく自分の名前も彫られており、貸し借りができないようになっている。
「何はともあれ、こうして無事に終わったわけだが・・・せっかくだし、打ち上げでもやるか?」
「あっ、いいね!それ!」
「なんや、珍しいな。クラルから、そういう提案すんの」
「ギルメン全員で頑張ったのは、これが初めてだからな。1位にもなったし、記念にいいと思ったんだが・・・」
「いいんじゃない?」
「あぁ、俺も異論はない」
「私もだ」
「「はいっ、いいと思います!」」
「なら、料理を作るのは私ね。【料理】スキルも最大まで上げてるし」
「私も、いい食材を探します!」
「じゃあ、全員で集まれる日を確認して、それぞれで準備しよっか」
俺の提案は快く受け入れられ、数日後に打ち上げを行うことになった。
俺もDEXはそれなりに上げてるし、せっかくだから俺も【料理】スキルを取得してみようか。
* * * * *
打ち上げ当日。無事、全員で集まることができ、それぞれ準備を進めていたのだが・・・
「・・・なぁ、メイプルはまだ戻ってこないのか?」
「・・・まだね。やっぱり、私も一緒について行った方がよかったかな・・・」
メイプルが「何か買ってくるよ!」と言って飛び出したきり、なかなか帰ってこないのだ。
メイプルを1人にした場合、たいてい碌なことがおきない。
たとえ、それが打ち上げのための買い物だとしても、微塵も油断できないのだ。
やっぱり、俺かサリーで探しに行こうかと話していると、ギルドの扉が開いてメイプルが帰ってきた。
さぁ、今度は何があったのか・・・
「ただいまー!」
「おう、おかえり、メイプル。それで、後ろのみんなについて聞きたいんだが・・・」
メイプルの後ろには、【集う聖剣】と【炎帝ノ国】のトップ4人ずつが並んでいた。
いや、まじで何があった?
割と本気で疑問に思っていると、メイプルが明るい調子で答えた。
「外で出会って話してたら、流れでフレンドして貰えたから招待したから?あれだって、えっと、強い人同士の繋がりを持つみたいな?私も強い人になってきたんだよ!」
「あぁ、うん、そうか・・・」
もうすでに、十分強いんだけどな。
ていうか、メイプルがこの8人とフレンド登録をすると、いろいろな意味で違ってくるんだが・・・。
もうさ、メイプルがラスボスでいいだろ。俺の脳裏に玉座に座るメイプルが浮かんで離れないんだが。
とはいえ、もともと11人だったから、8人増えたところで定員に問題はない。
イズも、突然のゲストに対応して、料理を追加で作り始めた。
そういえば、
「考えてみれば、ペインとはけっこう会ってるが、まだフレンド登録はしてなかったな」
「言われてみれば、たしかにそうだな。せっかくだし、ここで登録するかい?」
「親しい間柄とも違うが・・・まぁ、これも何かの縁だろうしな」
ペインとは、これからも良きライバルでいたいし、フレンド登録するのも悪くないか。
そう思ってペインとフレンド登録したところで、ようやく料理が出そろった。
「んじゃ、メイプル。音頭を頼むぞ」
「えっ!わ、私!?」
「そりゃ、そうだろ。【楓の木】のギルドマスターだし」
「わわっ、え、えっと、第4回イベント、お疲れ様でした!乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
こうして、総勢19人の打ち上げが始まった。
しばらく食事を楽しんでいると、運営からメッセージが届いた。
内容を確認すると、どうやら第4回イベントのハイライトのようだ。
「せっかくだし、ギルドのモニターで見るか?」
「そうだね。みんな、同じ動画みたいだし」
メイプルが立ち上がってギルドのモニターをいじり、動画を再生した。
とはいえ、動画に映るのは、ほとんどここにいるメンバーだ。
ペインが映ったかと思えば、今度はサリーと俺、フレデリカのシーンになった。
「あー・・・これ、あの夜の・・・」
「どうせなら、あそこでフレデリカも仕留めたかったんだがなぁ」
「さらっと怖いこと言うねぇー!?」
動画を見返すと、どうやら確定耐えスキルで難を免れたらしい。くそ、あそこは2連射にすべきだったか。
あの時の反省をしていると、今度はサリーが挑発気味にフレデリカに話しかけた。
「まぁ、私ももうちょっと元気だったら、フレデリカもいけたんだけどなぁ」
「そんな簡単にはいかないけどねー」
「じゃあ後で一回どう?」
「いいよー!?今度は当てる!絶対当てる!」
まんまとサリーの挑発に乗ったフレデリカは、決闘の約束をした。
あぁ、これあれだ。後で戦闘パターンを分析されるやつだ。
そんなことを考えていると、今度はメイプルが映った。
「まだ人型なんだな」
「7匹になるんだろ、知ってるぜ」
「思い出すだけでつらい・・・」
これに、ドレッドとドラグが遠い目になり、マルクスが突っ伏した。
まぁ、この3人は特に化け物メイプルにしてやられたからな。マルクスに至っては、トラウマを植え付けられているみたいだし。
すると今度は、俺とペインの一騎打ちの場面が流れ始めた。
「改めて見るとわかるが・・・どっちも動きが人間をやめてるな」
「ペインの斬り返しもそうだが、クラールハイトもどういう体幹と平衡感覚を持ってるんだよ。ていうか2人とも、あれだけ回転していると目が回らないか?」
「別に?」
「慣れればどうにでもなるさ」
ペインの言う通り、この辺りは感覚よりも慣れでどうにかなる部分だ。
だが、そうなると、
「ここで聞くのもなんだが、もしかして、ペインは剣道かなんかを習ってたりしたのか?」
「まぁね。そういうクラールハイトも、武術の経験が?」
「俺の場合、実家が道場だからな。体術とか、かなり身近だったし」
どうやらお互い、武術の経験者だったようだ。
道理で、スキルを使わなくても動きに無駄がないわけだ。
俺たちのカミングアウトに、周りもなぜか納得の表情をしていた。
「なるほどな。道理で・・・弓使いなのに、素手であんなに強いわけだ」
「ていうか、弓使いのやることじゃないだろ。銃を使っていたことといい、機械の兵隊を生み出してたことといい、弓使えよ」
ドラグの言うこともその通りではあるけど、ずいぶんな言い方だな?
弓使いが素手で殴り倒して何が悪いんだ?
そんなことも話し、最後の方でクロムが【カバームーブ】による変態機動と超回復力によってマイ、ユイ、イズ、カナデの4人を守り切った映像が流れた際は、「比較的まともだったのに・・・」みたいな視線がクロムに注がれた。
やったな、クロム。お前も俺たちの世界に足を踏み込んだぞ。
ハイライトがだいたい終わったあたりで、ペインが今後のことを意気込んだ。
「なに、次は勝つさ。負けたままでいるのは嫌いなんだ。それに、スキルも確認できた」
「いや、俺はともかく、メイプルは無理なんじゃないか?ちょっと目を離すと毛玉になったり悪魔になったりするんだぞ?」
少なくとも、俺はメイプルの初見殺しで動揺したことはない。
「少なくとも、メイプルの行動予測については、俺はもう諦めた」
「・・・まぁ、メイプルについては、予想外になれる必要はあるね。でも、まずは君だ、クラールハイト」
ペインの宣言に、俺も牙を剥くようにして笑う。
「あぁ、いつでも受けて立ってやるよ」
シオリに誘われる形で始めたゲームだが、存外、長い間楽しめそうだ。
fateシリーズでもアーチャーの弓は飾り。
これ基本。