ギルドホームの中に入ると、畳が敷かれていたり囲炉裏や火鉢がインテリアとして置かれていたりなど、4層の雰囲気に合うような和風のもので溢れていた。
あらかた確認し終えたところで、他のメンバーが全員ログインしていることに気付いた。
「メイプル。他のみんながログインしたみたいだ」
「じゃあ、手伝いに行かないと!えっと・・・」
「悪いが、メイプル1人で頼んでもいいか?定員的にも、役割的にもな。その間に、俺とシオリ、サリーで探索を進めるから」
「うん、わかったよ!」
メイプルは元気よく頷き、3層へと戻っていった。
「それじゃ、別々に動くか?」
「それがいいんじゃない?見た感じ、けっこう広そうだし」
「むしろ、全員でやった方がえぇ気もするけどな」
シオリの言う通り、今回の街はかなり広い。
おそらく、この通行許可証の数字が正しければ、まだここから5つ先、あるいはそれ以上あることも考えられるのだ。
下手をすれば、今行ける分でも今日中に探索しきるのは無理だ。
「ならいっそ、しばらくは自由行動にして、数日後に情報共有することにするか」
「それでええんとちゃう?」
「そうね。せっかくだし、じっくり見て回ろっか」
サリーとシオリも、俺の意見に異論はないようだった。
それからメイプルにこの旨のメッセージを送り、俺たちはそれぞれ街の中へと駆け出していった。
* * * * *
とりあえず、まずは今持っている許可証で進める限界まで進んで見た。
この街にはいたるところに鳥居が設置されており、それぞれに<壱><弐>と数字が書かれた木の看板が取り付けられていた。
今の段階で行けるのは<伍>の鳥居までで、<陸>の鳥居の先には行けない。
そして、見た限りは奥に行くほど良いなアイテムやスキルに巡り会える可能性が高くなっている。
とはいえ、今日はまだ初日。本気で探索するのは、また後日でいいだろう。
今日のところは、この世界観を満喫することにしよう。
「なら、まずは服からだな」
世界観に入りこむには、まずは格好から。
適当に服屋を探し、そこで服を購入した。
購入したのは、俺が実家で部屋着に使うような、無地の浴衣だ。予備に袴も買っておくことを忘れない。
「はぁ~。やっぱ、こっちの服装の方が落ち着くな」
別に今の装備が気に入らないわけではないが、やはり普段着ているような服の方が落ち着く。
ついでに、浴衣に合わせた下駄と袴に合わせた足袋も購入した。
一通り買って満足した俺は、カランコロンと下駄を鳴らしながら探索を始めた。
俺が目を付けたのは、大通りに面した場所ではなく、裏路地だ。
こういう和風建築の街は、裏路地こそ風情を感じると言うものだ。
それに、マイナーなところに隠れたスキルやアイテムがあるとも限らない。
僅かな期待感を胸に、気の向くままにあっちへこっちへと裏路地をさまよった。
「・・・ん?」
どれくらい歩いただろうか。ふらふらと歩きまわっていると、ある看板が目についた。
【ふわふわふれあいルーム】
「ふむ・・・」
俺は看板にかかれている文字を凝視し、全力の索敵で周囲にプレイヤーがいないことを確認してから、扉を開けて中に入った。
店番のNPCに入場料を払って奥に進むと、そこにはふわふわと宙に浮かぶ何匹ものネコの姿があった。
俺は席に座り、近寄ってきた1匹の猫をそっと抱いた。
「・・・はふぅ」
俺は思わず至福の息を吐き、頬を緩ませる。
何を隠そう、俺は人並みには可愛い動物が好きだ。
というのも、実家が行政からの依頼で捨てられて野良化した犬や猫を保護しているのだ。
具体的な活動は餌やりや予防接種などで、その分の費用は行政からおりている。
そんな環境で育ったこともあって、鍛錬の合間に犬猫とふれあうことも多かった俺は、こういうモフモフの動物が好きだ。
これを知っているのは、同じく俺の実家でモフモフをあやかっているシオリくらいだ。
別に、恥ずかしいというわけでもないのだが、クラスなんかで俺がどう思われているのかはわかっているつもりだからこそ、こういうところを見せるのは憚られるのだ。
だが、今ここには俺しかいない。
せっかくの機会、存分に楽しんで・・・
「ふわぁ!モフモフがいっぱい・・・あ」
「んぁ?・・・あ」
突然、変な叫び声が聞こえたと思って顔を上げたら、そこには【炎帝ノ国】のギルドマスターであるミィが、頬を紅潮させ、瞳をキラキラさせながら猫を眺めていた。
だが、すぐに俺に気付いたミィは、1つ咳ばらいをして気を取り直した。
「ごほんっ・・・奇遇だな、クラールハイト」
「それで隠せてると思ってんの?」
俺のツッコミに、ミィは瞳に涙をにじませてしゃがみこんでしまった。
どうやら、かなり恥ずかしかったらしい。
「あ~、うん、別に恥ずかしがらなくてもいいぞ。似たような醜態は第4回イベントでも見た。あの時は、サリーにオーブを持ち逃げされてべそかいてたよな」
「言わないで!ていうか、見てたの!?」
それはもう、1㎞先からばっちりと。
「うぅ~、まさか、こんなところでバレるなんて・・・でも、それを言ったらクラールハイトも意外だよね?」
「自覚はある」
そりゃあ、銃剣振り回しながら敵に突っ込むやつが、頬を緩ませて猫を愛でているとか、目を疑うこと間違いなしだろう。
「俺の場合、特別隠しているわけではないが・・・そっちは大変そうだな?」
「うん。最初に演技を始めたら、なんだか引っ込みがつかなくなっちゃって・・・」
原因が自分にあるとはいえ、だからといって素の自分を見せるのは恥ずかしいから、半ばやけくそ気味に演技を続けることになった、ということか。
「まぁ、このことは誰にも言わないでおくから、心配すんな。もちろん、ここのこともな」
特に、シオリに知られたらどうなるかわからない。
「ありがとう。私としても、その方が助かるよ」
こうして、俺は図らずもミィと秘密を共有することになった。
人生、何が起こるかわかんないな。
本来は前回の後書きに書けばよかったのですが、忘れてしまっていたのでここで書かせていただきます。
防振りアニメ、続編制作決定おめでとう!!
放送がいつになるかはわからないものの、マジで楽しみです。