佐々木小次郎を倒してから数日後、俺たちは全員で集まって情報交換をしていた。
とはいえ、これだけの広さを誇るだけあって、その情報量もバカにならない。
一応、カナデとモミジのおかげでかなりの情報を共有できたが、すべてを参考にするのは難しそうだ。
また、フィールドに現れるモンスターなんかは妖怪のような類が増えており、それに伴って魔法を使うモンスターも増えてきた。
そんな中、シオリはもうすでに<漆>の門を開放したらしく、ついでにそこにある店やアイテムなんかも確認してくれた。
そこまで話して、シオリが俺に話題を振ってきた。
「それで、クラルは何か収穫はあるん?ずいぶんと満喫しとるみたいやけど」
シオリの視線は袴を身に纏う俺の格好に向けられている。
「俺は主に、大通りから離れた裏路地を探索していたんだが、けっこう隠し要素が多いイメージがあった。こいつも、そこで手に入れたし」
そう言って、俺は腰にさしてある『備前長船長光』を引き抜いた。
「へぇ、これって物干し竿ってやつやろ?こんなのもあるんか」
「ずいぶんと強い剣士がいてな。そいつに勝ったら貰った」
「ちなみに、名前はなんていうん?」
「佐々木小次郎」
「・・・あぁ、いかにもやばい名前が・・・」
俺の出した名前に、シオリが遠い目をする。
だが、他の面々は違うことが気になるようで、クロムが代表して聞いて来た。
「ていうか、クラールハイトは弓使いだろ?刀なんて扱えるのか?」
「べつに、問題ない。これくらいなら、スキルやシステムアシストがなくとも使えるからな」
さすがに、初めての物干し竿なだけあって感覚を掴むのに苦労したが、自分のものにできた。
それに、ここだけの話、この刀にはさらにギミックがあったのだが、それはここで言わなくてもいいだろう。
「そういうわけだから、余裕ができたら裏路地なんかも探索するといいんじゃないか?」
「そうね・・・強力な装備やスキルが手に入る機会があるなら、たしかに行かない手はないね」
サリーも、新たな戦力強化の可能性があるというだけあって、少しやる気になったようだ。
それじゃあ、最後に、
「んで、メイプルは何かあったか?」
「私は即死効果を手に入れて着物買ったよ!」
「よし、メイプルの話は後にしよう」
これ以上話そうと思ったら、俺の胃と心臓にダメージが入ってしまう。先にまとめから話しておこう。
「それでだが、俺たちは他のプレイヤーと比べて、街の中央部まで行けたよな?」
まず最初に、この街での探索は通行許可証がなければ話にならない。
そして、通行許可証のレベル上げはそれなりに苦労する。
「じゃあ私達の通行許可証は凄いってこと?」
「少なくとも、他のプレイヤーよりもアドバンテージがあるのは確かだな」
他のプレイヤーが踏むべき工程をすっ飛ばすというのは、かなりでかいことであるのに間違いない。
その後、俺たちはどこにどういうクエストがあったのか話し合ったが、メイプルが即死効果を手に入れたというクエストに行きたがる人物はいなかった。
だってさ、壺の中で酸やらなんやらを吐いてくるモンスターを殲滅するとか、絶対に行きたくない。
あと、俺のクエストも行きたくないって言われた。
3回同時に斬ってくるような奴と戦いたくないって。
そして、一通り情報交換も終わり、ひとまずは解散ということになったのだが、終わった直後にカスミから声をかけられた。
「クラールハイト、少しいいだろうか」
「あぁ、俺は構わないが、どうした?」
何か、他に気になることでもあったのか。
そう思っていたが、どうやら俺が思っているのとは少し違ったようで、
「クラールハイトは、こういった和風のものが好きなのか?」
「そうだな、リアルの実家が和風建築だから、こっちの方が落ち着くってのはあるな。それがどうかしたか?」
「・・・こっちに来てほしい」
言われるがままについて行くと、ギルドホームにおけるカスミの自室に連れてこられた。
「カスミの部屋がどうかしたのか?」
「まずは、これを見てくれ」
そう言うと、カスミは自室の扉を開け放った。
そこには、
「おぉ、すげぇな・・・」
部屋のいたるところに、この階層の物であろう陶器や刀が置かれていた。
「カスミって、こういうのが好きだったんだな」
「あぁ。このことは・・・」
「みんなには内緒、だろ?」
カスミとしても、何かにのめりこんでいる姿を見られるのは恥ずかしいだろう。
それはわかるのだが、
「なら、なぜ俺には見せたんだ?たしかに、俺もこういうのはどちらかと言えば好きだが・・・」
俺も、ちょいちょいこの街の骨董屋で買い物をしている。
とはいえ、カスミのように爆買いしたわけではなく、あくまで部屋を魅せるオブジェクトとして厳選し、置き場所や向きなんかもこだわった。
だが、ここでいきなり秘密を共有するようなことはないのだが・・・。
「あぁ。だから、手分けしてこの街の骨董屋を網羅しないか?2人でなら、効率もよくなるだろうし、通行許可証のレベルも上げやすいはずだ」
カスミの提案に、俺も心が揺れた。
もともとゆったりと探索するつもりだったが、先の門にはさらなる骨董が隠されていると考えると、それを確認したくなった。
もしかしたら、俺の部屋をさらに彩る骨董にも巡り会えるかもしれない。
そうなれば、話は早い。
「わかった。ぜひ、協力しよう」
「あぁ。こちらこそ頼む」
俺とカスミは、ガッと熱い握手を交わし、それぞれ街の中を奔走することになった。