カスミと意気投合してから数日、時間があるときはお互いに通行許可証のレベルを上げる手伝いをしたり、時には小物なんかを買う資金を集めたりしていた。そのおかげで、俺とカスミはこっそり通行許可証を<陸>にしていた。
唯一、勝手に俺の自室に入りこむシオリは変化に気付きつつあるようだったが、「まぁ、クラルが好きそうなものが多いからな~」と、深く詮索しないでくれたのは助かった。
それに、シオリの方もかなりはかどっているようで、<捌>まで解放していた。
「こういうおつかい系はシオリの独壇場とはいえ、よくここまで進めたな」
「すごいよ、シオリちゃん!」
「たしかに広いけど、これくらい、うちならすぐや」
この作業スピードに、誰もが賞賛したり感嘆する。
まず間違いなく、鳥居を最も早く進めているのはシオリだ。
この調子なら、<玖>の鳥居を開放するのも、そう遠くない。
「そんじゃ、うちはもう行くわ。頑張れば、あと1時間ちょいで鳥居を開放できるやろうし」
「マジか」
まさか、そこまで進んでいるとは思っていなかった。
本当に、頼もしい限りだ。
「それなら、俺も出かけるとするか。俺も、早く先に進みたいしな」
「なんなら、後でクラルが好きそうな店をチェックしとくわ」
「頼む」
そう言うと、シオリは足早にギルドホームから出て行った。
俺も、今回は1人で探索をする。
というのも、今日は気分的にあそこのモフモフに行こうと思ったのだ。
最初に行った時以来、いろいろとあって行く機会を見失っていたから、気分転換にいいだろう。
それに、メイプルが即死効果をゲットしたという衝撃が未だに抜け切れていないというか、その分の癒しがほしいし・・・。
そんなことを考えながら、格好を外出向けの袴+刀に変えて、街の中を歩いた。
ぶっちゃけ、すでに今の格好の俺も出回ってしまっているのだが、気が楽なことには変わりない。
それに、敢えて俺について行って、一緒に裏路地に入って行くようなもの好きもいないから、【もふもふふれあいルーム】に行く分には問題ない。
道を思い出しながら裏路地を歩き、【もふもふふれあいルーム】と書かれた看板の扉に入る。NPCに入場料を払って中に入ると、そこにはすでに先客がいた。
「あっ、クラールハイト」
「なんだ、ミィも来てたのか」
ちょうど、ミィが猫と戯れているところだった。
何気に、こうして会うのはあの時以来か。
「クラールハイトも来たんだ?」
「あぁ、気分転換にな。メイプルが、また変なスキルを取得しちまったから・・・」
「えっと・・・お疲れ様?これ、はい」
ミィも、第4回イベントでメイプルのスキルの洗礼を受けている。だからこそ、俺の複雑な内心もわかるのだろう。
自分が撫でていた猫を、そっと俺に渡してくれた。
「ありがとよ・・・はぁ~、癒される・・・」
「それで、参考までに、どんなスキルか聞いてもいい?」
ぶっちゃけ、ここでミィにメイプルの情報を渡すというのも、それなりに問題ではあるが、すでにミィと秘密を共有している仲だし、極端にメイプルの戦力を削るようなものでもない。
詳細を伏せれば、まだいいか。
「なんか、即死効果を手に入れたと」
「えぇ・・・」
俺の簡単な説明に、ミィがドン引きする。
即死効果というのは、それだけで強力だ。少なくとも、対プレイヤーか対雑魚であれば、メイプルの攻撃力の低さが関係なくなったと考えられる。
もちろん、どのような即死攻撃かは教えないが。
ちなみに、メイプルが得た即死効果というのは、毒攻撃全般に付与されるものということらしい。
つまり、広範囲攻撃である【致死毒の息】や【毒竜】でできた毒沼なんかにも即死効果がのるから、やろうと思えば辺り一帯を即死エリアに変貌させることが可能になってしまったわけだ。
これ、ペインは近づけなくね?
一応、ペインも広範囲攻撃を持っているとはいえ、それだとメイプルの装甲を貫くには足りない可能性もある。
ペインが本格的にメイプルに挑戦するのは、まだまだ先になりそうだ。
そんなこんなで、ミィとの会話に花を咲かせていると、突如、すぐにわかる地鳴りが発生した。
「ちょっ、なんだこれ!?」
「わわわっ!?」
慌てながらも猫をしっかり抱えていると、地鳴りはすぐに治まった。
そして、運営からメッセージが届いた。
【プレイヤーが初めて<玖>の鳥居を突破したため町が本来の姿を取り戻しました。またこれによりアイテム、クエストが追加されました】
言われて、ふと店の中を見渡すと、店員のNPCが猫娘のように、猫耳や髭を生やし、目も縦に割れていた。
「ちょっと、外に出て確認してみるか」
「あっ、私も行く」
さすがにただ事ではないと、ミィもすぐに変装を解き、立ち上がって外に出た。
大通りに出ると、明らかに異なる点があった。
それが、NPCのほとんどが鬼などの妖怪に変わり、あちこちに読めないような字で怪しげな薬なんかが売られるようになっている。
「・・・なるほどな。あそこの猫が宙に浮いていたり、外のモンスターが妖怪っぽいのが多いと聞いてはいたが、まさか街自体が妖怪の街だったとは・・・」
「おそらく、この妖怪と呪術の街こそが、4層の真の姿ということだろうな。だがしかし、いったい誰が・・・」
人目があるということで、すぐに演技を始めたミィだが、俺は心当たりがあった。
「間違いなく、シオリだな。早ければ1時間で解放できるとは聞いていたが・・・」
シオリの働きが速かったのか、俺たちが思っていたより時間が経つのが早かったのか。たぶん、後者だろう。
俺たちも十分驚いたが、変貌させた張本人であるシオリは、さらに驚いていそうだな。
* * * * *
「なっ、んや、これ・・・びっくりしたわぁ・・・」
<玖>の通行許可証を持って鳥居をくぐったら、いきなり街が様変わりしてびびってもうた。
べつにうちは、妖怪とかお化けの類は平気やから大丈夫やけど、単純に地鳴りと突然の変化にびびったわ。
まぁ、新しいNPCに害はないみたいやし、次の門や。
幸い、場所はわりと近い。
鳥居に近づくと、鳥居の隣に立て札があった。
【次代の主は赤鬼の角、龍の逆鱗、天の雫を持つ者に託す】
なにやら、今までとはちょっと違う感じがするけど・・・。
まぁ、がんばって探してみよか。
最近、ちょっとマンネリ化し始めてきて、危機感を覚えてきた自分がいます。
もう少し面白いネタを思いつきたいところなのですが、今の段階だとまだ・・・。