シオリが<玖>の鳥居を開放してから、しばらく後、俺も頑張って通行許可証を<漆>にまで上げた。このまま頑張れば、2週間以内に<玖>まで上げることができるかもしれない。
ちなみに、シオリは次の素材集めに行き詰っていた。
話によると、次の鳥居の解放には赤鬼の角、竜の逆鱗、天の雫が必要だという。
だが、探し始めたはいいものの、街の中の店にはそれらしき物は置いておらず、フィールドに探しに行こうにも情報がまったくない。
だから、俺やカスミ、ペインあたりが<玖>の鳥居にたどり着いたら手伝ってもらうつもりだと聞いた。それまでは、店の方をぐるぐる回っている、とも。
まぁ、シオリも鳥居の解放に明け暮れて、あまり観光できていないようすだったから、たまにはいいだろう。
そして、しばらくの間、カスミとは別行動をとることになった。
なにやら、今までにないくらい強いモンスターを見つけたとのことで、その攻略に集中したいと言われた。
あのカスミがその日のうちに倒せなかったということらしいから、よほど強いのだろう。
とりあえず、しばらくは1人で探索しようか。
今回はフィールドに出るから、【備前長船長光】はそのままに、防具を黒竜一式にした。
このまま外に向かおうとしたのだが、その前に知ったプレイヤーと遭遇した。
「クラールハイト」
「おっ、ペインと、ドレッドもいんのか」
「奇遇だな」
後ろから声をかけられて振り向くと、ペインとドレッドが俺の方に近寄ってくるところだった。
「俺たちはこれから、通行許可証のレベル上げに行くところなんだが・・・」
「俺もだ。だったら、一緒に行くか?人数は多い方がいいだろ」
「あぁ、構わないよ」
「俺もだ。欲を言えば、支援役が1人欲しいところだが・・・」
たしかに、今の俺たちでは基本的に
だが、俺の方は今はカナデはいないし、ペインたちの方もフレデリカは来れないらしい。
「どうしたもんか・・・いや、回復できる奴ならいるな」
「そうなのか?」
「あぁ、ちょっと待ってろ」
そう言って、俺は目的の人物にメッセージを送った。
それからおよそ10分後。
「クラールハイトさーん!」
「おう、モミジ!こっちだ、こっち!」
俺が呼び出したのは、斥候役のモミジだ。
「あ?その子はたしか、例のくノ一少女だろ?回復なんてできるのか?」
「えっと、気休め程度ですが・・・」
モミジの【簡易治療】はDEX分しか回復できないが、このパーティーなら気休め程度の回復で十分だ。
それに、回復ポーションもそれなりに用意してあるから、そこまで心配しなくてもいいだろう。
さらに言えば、【霧の都】で状態異常の援護もできるから、それなりに支援役もできるのもモミジの長所だ。
そういうことで、俺たちは目的の場所に向かった。
* * * * *
「そう言えば、今さらではあるが・・・」
少し歩いたところで、ドレッドが忘れていたと言わんばかりに俺に尋ねてきた。
「クラールハイト、お前、どこでそんな武器を手に入れたんだ?ていうか、装備して意味あるのか?」
ドレッドが言っているのは、俺の背中にかけている【備前長船長光】のことだろう。
「街の中のイベントで、偶然手に入れた。スキルを度外視すれば、使うには問題ないぞ」
NWOでは基本的に、初期装備を決めたら、アカウントを作り直さない限りはそれを使い続ける。なにせ、1つの武器でもスキルを手に入れるのに、それなり以上に時間がかかるし、スキルを手に入れたことにはその武器に慣れているから、他の武器に乗り換えることもまずない。
さらに、俺みたいに2種類の武器を装備しても、武器スキルのレベルは片方しか上がらない。
むしろ、俺みたいに複数の武器を使いこなす方が異常なだけだ。
「それになぁ、刀に限れば、他のゲームで散々システムアシストなしで使って来たから、これくらいは今さらなんだよな」
「・・・さすがは、【賢者】ってところか」
「その呼び方はやめてくれ」
またシオリから「脳筋賢者(笑)」とか言われるから。
そんなことを話しているうちに、目的の洞窟にたどり着いた。
ここには、野盗まがいの小鬼のモンスターが現れるのだが、そいつが低確率で落とすアイテムが素材として必要なのだ。
「さて、こっからだな」
そう言って、俺は背中に背負っている【備前長船長光】を抜いた。
すると、俺の体が一瞬、ほのかな光に包まれる。
「これは、ちょっと驚いたな・・・」
「おい、なんだよ、その格好」
「わわわっ、お侍さんの格好です!」
3人が驚いているのは、刀を抜いた俺の姿が変わっていたから。
今の俺は、クエストで戦った佐々木小次郎そのままの姿になっているのだ。
【備前長船長光】を抜刀すると、自動的にこの姿になる。逆に、納刀すれば元の姿に戻る。
あくまで見た目が変わっただけなため、他の装備のスキルは問題なく発動する。
「クエストで戦った、剣士の霊・・・か、なんかの姿だ。刀を抜くと、勝手にこうなる」
「ほんと、【楓の木】は面白いやつばっか見つけてくるな」
ドレッドの言葉に、俺も思わずうなずく。なにせ、カスミも面白そうなイベントを見つけたばっかだし。
「まぁ、メイプルに慣れるための予行演習とでも考えておこうか」
「いや、メイプルはこれの比じゃないんだが・・・」
この世界に、天使になったり悪魔になったり機械を生やすメイプル相手に、初見で動揺しない奴なんているのか?
少なくとも、【楓の木】にはいない。相対したミィやペイン、ドレッドも、がっつり動揺して負けてしまったプレイヤーの代表格だし。
「まぁ、メイプル対策は違うときにするとして、きたぞ」
洞窟の奥から、刀を振りかぶって俺たちに向かってくる小鬼がでてきた。さらに奥には、札を持った術師の小鬼も控えている。
とはいえ、俺たちならてこずることもない奴らばかりだから、あっという間に殲滅する。
「ふぅ。さて、そろそろ・・・」
素材も必要数集まったから、もう戻ろうかと思ったが、ここで予想外のことが起きた。
突然、地響きが起こり始めたのだ。
「な、なんですか!?」
「こいつは、足音だ。奥からなんか来るぞ」
「そんな情報、聞いた事ねぇぞ?」
「おそらく、ここのモンスターを一定数倒すと現れる、エリアボスなのだろう」
ペインの推測が当たりなのかハズレなのかはわからないが、強力なモンスターであることには変わりないはずだ。
「そういえば、ペインとドレッドと一緒にボスを攻略するのは、これが初めてか?」
「言われてみれば、たしかにそうだな」
「むしろ、戦ってばっかりだったな」
「この3人なら、負ける気がしません!」
しれっと自分を戦力外通告したのは気にしないが、モミジの言う通りだ。
初めてのメンバーでのボス戦に胸を躍らせていると、洞窟の奥から地響きの主が現れた。
洞窟の奥から現れたのは、3つの首を持った大鬼だった。
ちょっと今回から、投稿頻度を減らすことにしました。
具体的には、2日に1回くらいですかね。
今もこのペースだと、ちょっとネタに困ってきてしまうので。