洞窟の奥から現れた5mほどの三つ首の大鬼は、異様の一言だった。
頭が3つあるのもそうだが、両手に持っている武器が武器だ。
右手に持つ大太刀は普通だが、左手に持っている木剣には卒塔婆のように文字が書かれている。
「作戦はどうする?」
「この面子だと、各自突っ込むしかねぇんじゃねぇか?」
「どうやって突撃するか、ということだろう」
「とりあえず、私は後ろから援護します」
攻撃役3人に斥候1人だと、やることがかなり限られてくる。
これならいっそ、メイプルを誘った方がよかったかもしれない。
だが、俺たちで作戦を考えていたら、先に大鬼が攻撃を仕掛けてきた。
左の木剣を大きく後ろに振りかぶると、突然木剣が炎を纏った。
「やべっ、散開!」
「わかっている!」
「言われなくとも!」
「はっ、はいぃ!」
やばいと判断した俺の指示を聞くまでもなく、ペインとドレッドもその場から飛びずさる。
次の瞬間、大鬼が木剣を振り下ろし、さっきまで俺たちがいたところは炎に飲み込まれた。
「なるほどな。物理攻撃と魔法攻撃を両方こなすモンスターってことか。ここまでバランスのとれたモンスターも珍しい」
今まで相手してきたモンスターは、基本的に物理か魔法のどちらかしか攻撃手段がなかったが、両方を使いこなすモンスターは初めてだ。
だが、大柄なだけあって、動きはさほど速くない。
「俺が右から攻撃するから、ペインとドレッドで左から攻撃して、できるようなら、その木剣を壊してくれ!」
「了解した!」
「破壊判定があればいいけどな!」
ドレッドの言うことも尤もだが、確かめないよりはマシだろう。
それに、他の雑魚敵にも武器破壊の判定があったから、ボスのこいつにもできる可能性はある。
「モミジは背後から攻撃を仕掛けてくれ。状態異常は効果は薄いだろうが、ないよりはマシだ!」
「わ、わかりましたぁ!」
モミジも、シオリとのレベリングの甲斐あって、なんとか戦える状態を保てている。
幸い、あの大鬼のヘイトはモミジに向けられていない。これなら、十分に戦えるだろう。
俺も、まずは【備前長船長光】を納刀し、すぐに【
ペインとドレッドも、それぞれ至近距離まで近づいて木剣や大鬼にダメージを与える。
「くそっ、木剣に破壊判定はねぇ!」
「だが、接近すれば魔法攻撃はしてこない。このまま押し切るぞ!」
ペインとドレッドは、木剣が破壊不可能だと分かると、今度はペインが魔法を撃ってくるパターンを見切って、魔法攻撃を封殺した。
「うぅ、またイズさんに製作を頼まなきゃいけません・・・」
モミジは、状態異常のナイフではなくイズ特製の投擲武器を駆使して攻撃し、上手く大鬼の死角を移動することで大鬼のタゲから外れる。
このまま上手くいけばいいのだが、こういうボスはHPが一定値以下になれば行動パターンが変わるもの。油断はできない。
そして、この大鬼も例外ではなかった。
HPが半分を切ると、俺たちから距離をとって力を溜め始めた。近づこうにも、大鬼も周りに紫炎の壁が現れて先に行けない。
「なんだか、嫌な予感がすんな・・・」
「それよりも、今、気づいたことがあるんだが・・・」
「奇遇だな、俺もだ」
「な、なんですか?」
「あの大鬼の後ろを見てみろ」
今、大鬼が力を溜めているその背後、そこには、槍、手斧、メイス、杖が壁にかけられていた。
そのどれもが、あの大鬼が片手で持つのにちょうどいいサイズだ。
「あそこに4つの武器がある。そして、あの大鬼は三つ首。ここまできたら・・・」
「ま、まさか・・・」
モミジが、顔を真っ青にして大鬼の方を見る。
「「「グゥアアアアアア!!」」」
その直後、大鬼の方から新たに4本の腕が生え、壁にかけられている4つの武器を持った。
これで、6本の腕に6つの武器を持っていることになる。手数は単純計算で3倍だ。
「まさか、阿修羅をモチーフにしていたとはな・・・」
「ちょちょっ、どうするんですか!?」
「どうするもなにも、ごり押しするしかないだろ」
「くそっ、マジでフレデリカを連れて来ればよかったな・・・」
俺の方も、本格的にメイプルを誘わなかったことを後悔してきたよ。
だが、ここで弱音を吐いても仕方ない。
・・・そういえば、さっきまでの攻撃で、大鬼は顔への攻撃が最もダメージが通っていたな。そして、最低でも1つの首を、攻撃をくらわないように守っている節があった。
「ペイン、ドレッド、できるだけあの大鬼をひきつけてくれ。俺は、あの三つ首を
「はぁ?」
「本当に、そんなことができて・・・いや、それよりも、勝算があるのか?」
「賭けだが、最低でも1つの首を守るように動いていた。試す価値はある」
「なるほどな・・・そういうことなら、任せとけ」
「あぁ。その代わり、クラールハイトも頼むぞ」
「わかっている・・・それじゃあ、いくぞ」
掛け声をかけて、俺は【備前長船長光】を抜刀し、大鬼に向かって疾駆した。
大鬼は、雄たけびを上げながら俺に向かって武器を振り下ろすが、ペインによって逸らされたり、ドレッドによってバランスを崩されて外れる。モミジも、苦無を投擲してできるだけ注意を散乱させる。
しびれを切らした大鬼は、俺に向かって思い切り大太刀を振り下ろしてきた、
それこそ、俺の狙い通りだった。
「はぁっ!」
ガァン!
俺は大太刀をギリギリで避けて、地面に振り下ろされた大太刀を思い切り踏みつけた。
それは、僅かな時間しかもたない、顔まで続く大太刀と腕の橋だ。
他の腕の動きはいっさい見ずに、思い切り大太刀と腕の上を走り抜ける。
そして、一気に大鬼の顔面まで近づき、
「【秘剣・燕返し】!」
1日3回限りの、同時三連続斬撃を放った。
斬撃は狙いたがわず大鬼の3つの首を同時に斬り裂いた。
すると、大鬼はすべての武器を手放し、腕を顔に当てて苦しみ始めた。
「ここが攻め時か!【断罪の聖剣】!」
「【クインタプルスラッシュ】!」
「【霧の都】!【
この隙を見逃さず、ペインたちはそれぞれの持つ高火力スキルをたたきつける。
俺も、抑える手の指の隙間を縫うように攻撃し、弱点に斬撃を当て続ける。
腕を増やした代償なのか、先ほどよりも速いペースでHPは削れていき、あっという間にHPは0になった。
「ふぅ、思ったより楽勝だったな」
「あの、クラールハイトさん。このパーティーだと当然だと思いますけど・・・」
たしかに、NWOでもトップに入るプレイヤーが集まったわけだから、野良湧きのボスくらいならどうにでもなるか。
そして、ボス限定の装備品が落ちていた。
『阿修羅の数珠』
【HP+100】【STR+20】【INT+20】
「う~む・・・いらんなぁ」
「あ~、クラールハイトさんなら、そうかもしれませんね」
効果自体は破格の性能だが、俺はHPが上がったところであまり意味はないし、最近は魔法を使うこともないからINTも腐ってしまう。
俺が持ったところで、焼け石に水だろう。
「こいつは、カナデへの土産にするかな。INTも上がるし」
「ずいぶんと贅沢なことだな」
モミジと話していると、ドレッドとペインも近づいてきた。
「俺たちは、ありがたく使わせてもらう予定だぜ」
「まぁ、他の装飾品との兼ね合いになるだろうけどね」
どうやら、この2人は2人ですでに強力な装飾品を身に付けているらしい。
かくいう俺も、チートレベルの装飾品2つにテイムモンスターの指輪という超がつく贅沢仕様だからな。ステータスアップだけだと物足りない。
結局、この日はこのまま街まで戻って解散となり、【阿修羅の数珠】もカナデに渡してログアウトした。
コロナの影響でずっと家の中にいるせいで、なかなかいいネタが思い浮かばない・・・。
後書きすら思い浮かばなくなりかけた時点で、かなりやばいですね。
リフレッシュの手段が絶望的に少なくて、頭の回転が悪くなっている気がします。
やばいときは文章を書く気すら起きなくなりかねないので、適度に頭をほぐしながら活動していけたらと思います。