「は~、やっとだ」
ペインたちと大鬼のエリアボスを倒してから数日後、ようやく<捌>の鳥居を開放することができた。
これで、シオリの待つ<玖>の鳥居まであと1つだ。
ちなみに、そのシオリは完全に休憩モードに入っていて、買い物なんかを楽しみ始めた。
というのも、<拾>の鳥居の先は、あの街の中央にあった塔くらいしかなく、必要素材の情報も碌にないから、いったん鳥居の解放は後回しにするということだった。
素材集めで暴れまわったから、ゴールドには困らない様子だったし、息抜きも重要だから、俺も構わなかった。
なんならいっそ、
「まぁ、やめた方がいいか」
俺は今、<捌>の鳥居を開放した自分へのご褒美として、【もふもふふれあいルーム】に訪れていた。
シオリも俺の家にしょっちゅう遊びに来ることもあって、俺と同じか、あるいはそれ以上に可愛い動物が好きだから、きっと気に入るだろう。
だが、それだとミィの素顔がバレる可能性もあるわけで。
正直、俺としてはミィをシオリの毒牙にかけたくない。
それは、第4回イベントで偶然、ミィの可哀そうな姿を見てしまったという後ろめたさもあるが、シオリは可愛い動物よりかは美少女の方が好きだから、ところかまわずミィに抱きつきに行きかねない。
そうなったら、すでにカリスマ溢れる実力者として通ってしまっているミィの体面に少なからず影響が出るのは想像に難くない。
だから、内心ではシオリにばれないか冷や冷やしながらも、常連としてここに通っている。
「ふぅ・・・至福だ・・・」
モフモフの可愛い猫を撫でていると、いい意味で体から力が抜けていくのを実感する。
この一時があれば、メイプルやシオリのトンでもスキルや、シオリの突拍子な行動が相手でも頑張れる気がする。
そんな時間を過ごしていると、誰かが入店したことを知らせる鈴の音が聞こえた。
俺以外でここに来る人物は限られている。
「あっ、クラル。来てたんだ」
「おう、ミィ」
俺と同じくここの常連になっているミィとは、すでに俺を略称で呼ぶようになるくらいには打ち解けていた。
最低でも3,4日に1回は会ってれば、こうなるのも時間の問題だっただろうが。
「今日はどうしたの?」
「通行許可証が<捌>になったから、頑張った自分へのご褒美って感じだな」
「おー、すごいね!」
「このペースなら、1週間以内には<玖>の鳥居まで行けそうだ」
恒例となった、猫を撫でながらの世間話に花を咲かせるが、この時の俺は完全に失念していた。
あらゆるトンでもイベントを引き寄せた
カランカラン
「ん?」
「? クラル?」
「いや、誰か入ってきたんだが・・・」
まさか、俺と同じように、徘徊していたら偶然ここにたどり着いたプレイヤーがいたのか。
だとしたら、いったい誰だと思ったら・・・
「あれ?クラル君も?」
入ってきたのは、意外そうな表情を俺に、ちょっと申し訳なさそうな表情をミィに向けたメイプルが立っていた。
俺は思わず頭を抱え、ミィは猫でスッと顔を隠した。
* * * * *
とりあえず、メイプルも座らせて話を聞くと、どうやらミィが変装して裏路地に入って行くところを、偶然見かけてしまったとのことだった。
今のミィは白髪ロングに青と白を基調にした装備にしているが、変装前の姿を見られたなら関係ないし、たとえ変装しても顔は変わらないから、知っている人物が見ればすぐに気づく。
そして、こっそり変装する場面を目撃してしまったメイプルは、せめてそのことを謝ろうと中に入ったところ、俺ともばったり出くわした、というわけだった。
考えてみれば、第4回イベントの打ち上げ以降、メイプルとミィはわりと打ち解けていたみたいだったから、こういうこともありうるということだったか。
「それにしても、クラル君も、こういうところが好きだったんだ?」
「特別隠しているわけじゃないんだが、第4回イベントで無双したり【賢者】と呼ばれ始めた手前、これを知られるのも恥ずかしくなってな・・・それに、実家にも犬猫はけっこういるし」
「えっ、そうだったの?」
「いるのは裏庭だから、メイプルが知らなかったのも仕方ないことだ」
「えっ、メイプルとクラルはリアルで会ったことがあるの?」
俺とメイプルの会話から、ミィがそこが気になったのか、会話に割り込んできた。
「あぁ。第2回イベントの後に、俺の家でサリーやシオリと一緒にオフ会をしたんだ」
「へぇ、そうだったんだ」
そんなことを話していると、メイプルが改まってミィの方に向き直った。
「それはそうと、ごめんね。勝手に後をつけたりして・・・」
「いいよいいよ。それに・・・同性の子にも、誰かには知ってもらいたかったし。やっぱり、演技し続けるのは大変だから・・・あはは・・・」
「本当、ごめんね。お詫びっていうか・・・何かできることがあったら言って!」
「・・・じゃあ、この後ちょっとモンスターを倒すのを手伝ってくれたり・・・」
「うん、いいよ!」
とりあえず、今回の件はこれでチャラ、ということらしい。
「それなら、クラル君はどうする?」
「そうだな・・・せっかくだし、一緒しようか」
ということで、この後、この3人で素材を集めに行くことになった。
その前に、モフモフの猫を堪能することになったのは言うまでもない。
今回はすでに構想があった、というか基本的に原作沿いだったので、すぐに書けました。
あと1,2話くらいは、1日で投降できそうです。
その後はわからないですが、なんとなくは何を書くかも決まっているので、1日で投降できれば投稿するつもりです。