弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

88 / 134
酒呑童子

「な、なんか、すごいことに・・・」

 

隠れながら見ていても、小鬼や大鬼、化け狐、猫又など、多種多様な妖怪が集まって酒を飲んでいる。

そして、

 

「さぁさぁ!今宵は妾の気分がよいからな!好きなだけ飲むがいいぞ!」

 

妖怪たちの中心となって酒をふるまっている、メイプルと同じくらいの背丈の女鬼。

この鬼の存在感が、モミジの直感に警戒信号を発していた。

もしかしたら、階層ダンジョンのボスに引けをとらないかもしれない。

だが、このままこの場から離れてもいいものか、モミジは悩んでいた。

もともと、ここにはクラールハイトの指示で情報を集めに来たのだ。戦闘が嫌だからといって、何も調べずに帰るのもよくない。

 

「すぅー、はぁー・・・」

 

モミジは通路の方を向いて、ゆっくり深呼吸し、気持ちを整えてから宴の中に入ろうとした。

すると、

 

「むっ、誰じゃ!」

 

踏み込む前に、女鬼に存在を気取られた。

ビクッとして振り向くと、女鬼はもちろん、他の妖怪たちも全員、モミジのことを見ていた。

 

(あっ、終わった・・・)

 

この時、モミジは死を覚悟した。

だが、モミジの絶望と裏腹に、女鬼はまじまじとモミジを見つめ、他の妖怪たちを下がらせた。

 

「ふむ・・・おい。場所を空けて、妾のところに来させよ」

 

女鬼がそう言うと、他の妖怪たちは大人しくその言葉に従い、左右に分かれて女鬼まで続く道を作った。

今のところ、敵意らしい敵意も感じなかったから、モミジも大人しくその言葉に従い、おずおずと歩きながら女鬼のところまで近づいた。

 

「さて、まずは自己紹介といこうか。妾の名は酒呑童子、この街を統べる鬼の孫娘じゃ」

 

これを聞いたモミジは、街の中央にある塔を思い出した。

おそらく、街を統べる鬼とやらは、そこにいるのかもしれない。

だが、今この場では必要のない情報であるため、その思考を頭の隅に置いて酒呑童子を真っすぐに見据えた。

 

「この宴は、妾が集めた酒を、この街の妖怪たちに振舞うために開いているのじゃが、妾と同じくらい飲めるものがおらんくてな。最近は飽き飽きしてきたのじゃ。そこでじゃ。本来であれば、妾の宴を見た人間は殺さなければならぬのだが、妾のとっておきの酒をすべて飲み干すことができれば、今回のことは水に流し、なおかつ友好の証をやろう。どうじゃ?」

 

そう言うと、モミジの前にクエスト画面が現れた。

クエストの名前は、【酒呑の試練】。

とりあえず、戦闘にならなかったことにホッとし、迷わずにYESを選んだ。

すると、酒呑童子は手を叩いて誰かを呼び寄せた。

 

「よし、それでこそじゃ。おい!あれを持ってこい!」

 

そう言うと、奥から大鬼が巨大な盃を持ってきて、そこに酒呑童子が樽から酒を注いでいった。

最終的には、およそ二升ほどの酒がそそがれた。

 

「これをすべて飲み干してみせよ。制限時間は5分じゃ」

 

酒呑童子の横に砂時計が置かれ、それがひっくり返された。

おそらく、砂が落ちきる前に飲めということだろう。

まずモミジは、注がれた酒の匂いを嗅いだ。

臭いを嗅いだ限りは、それなりに上等な日本酒であることがわかる。

ちなみに、NWOでは酒も販売されているが、システムで酔いつぶれるようなことはない。せいぜい、ほろ酔い程度で止まる。

だが、このクエストの内容からすれば、限定的にその制限が外されているのだろう。おそらく、脳に支障がでない範囲でなら酔ってしまうとモミジは考えた。

普通に考えれば、1発でアルコール中毒になるか、肝硬変になってしまうだろう酒の量だが、VR内であれば、少なくとも臓器の異常は考えなくてもいい。

そして、

 

「では、いただきます!」

 

一切のためらいもなく、モミジは盃に口を付けた。

そして、ぐびぐびと日本酒を流し込んでいく。

常人であれば、すでに酔いつぶれるだろう量を飲んでも、モミジの表情はほとんど変わらない。

実はモミジには、クラールハイトたちにでさえ隠していることがある。

それは、実はモミジはれっきとした社会人であり、酒にすこぶる付きで強いのだ。

二升の日本酒であれば、モミジからすれば普通に飲める量でしかない。

もちろん、健康のことを考えて、一気飲みするようなことはしないが。

そして、モミジは5分どころか3分足らずで、すべての酒を飲みきってしまった。

 

「ふぅ、ごちそうさまでした。おいしかったです!」

「おぉ、すごいではないか!他の者たちは、半分も飲めずに潰れてしまうのじゃがな」

 

酒呑童子は不甲斐なさげに他の妖怪たちを見渡すが、普通に考えて日本酒を二升飲んで平然としている人物は化け物でしかない。

 

「さて、約束したからな。お主に友好の証をやろう」

 

そう言うと、酒呑童子は懐から瓢箪の水筒を取り出した。

 

「鬼の持つ瓢箪はな、無限に酒が湧く魔法の瓢箪なのじゃ。これはその中でも特別なものでな、これを飲めば一時的に妾の力を扱うことができる。お主なら、有効に使えるじゃろう」

 

【酒呑童子の瓢箪】

この瓢箪の酒を飲むと5分間、酒呑童子の力を得ることができる。

使用可能回数は、1日5回。再使用可能時間は1時間。

 

【酒呑童子】

すべてのステータスを【+50】する。

酒の匂いを嗅がせたプレイヤー・モンスターに酩酊状態を付与する。

 

「あっ、ありがとうございます!」

「では、行くがよい。またいつか、共に酒を飲もうぞ」

「はい!」

 

酒呑童子からプレゼントを受け取ったモミジは、足取り軽く小道から抜け出し、今日のところはログアウトした。




合法ロリで蟒蛇って、謎の魅力がありますよね。

今回のスキルは、ちょっとFGOのものから外れたものにしましたが、その分モミジの強化の幅はさらに広がりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。