モミジに例の依頼をした翌日、さっそくモミジが小道の先にあったものの報告をしたいということで、さっそくギルドホームで合流した。
「こんにちは、クラールハイトさん」
「おう。んで・・・それが収穫か?」
モミジの腰には、昨日にはなかった瓢箪がぶら下がっていた。
十中八九、この瓢箪が小道の先にあったものか、あるいはクエストの報酬ということだろう。
「はい。【酒呑童子の瓢箪】という装飾品で、実戦ではまだ試していないんですよね」
「ちょいちょい。酒呑童子?そんな大物がいたのか・・・」
酒呑童子と言えば、日本の三大妖怪に数えられる、日本ではトップクラスで有名な鬼だ。その名前を冠するモブがいたとは・・・。
「それで、条件とかはわかったのか?あと、あの奥では何があったんだ?」
「条件の方は明言されていなかったんですが・・・たぶん、【気配遮断】のレベルが高くないと受けられないんだと思います。それで・・・」
モミジの説明では、あの小道の奥では酒呑童子が中心となった宴会が開かれており、それは人間に知られてはならないというものらしい。おそらく、【気配遮断】のレベルをその鬼たちに気付かれないところまで上げられなけれいけないということだろう。
その奥で受けたクエストは【酒呑の試練】といい、制限時間内に二升の日本酒を飲み干さなければならないというものとのことだった。
ていうか、ちょっと待て。
「え?モミジってお酒を飲める年齢なのか?」
「・・・これでも、れっきとした成人です」
ちょっと目を逸らしながらのカミングアウトに、俺はちょっとした申し訳なさを抱いた。見た目で年齢を判断して、まさしく年下への対応をしてしまったのか・・・。
だが、モミジとしては気にしていないということらしい。どちらかと言えば、慣れたという方が正しそうだが。
それに、VRMMOなら見た目はともかく、年齢で困ることも少ないし、むしろ大人だと知られる方が気まずいから、同じように接してほしいと頼まれ、俺も頷いた。
話を戻すと、そのクエストをクリアして手に入れたのが、モミジが腰にぶら下げている瓢箪で、中に入っている酒を飲むと5分間パワーアップするということらしい。
パワーアップの内容は、全ステータスが50上昇し、酒の匂いを嗅がせたプレイヤー・モンスターに酩酊状態を付与する、というものらしい。
「酩酊状態?そんな状態異常、聞いた事もないんだが・・・」
「えっと、【酒呑童子】限定の状態異常で、効果は全ステータスが50ダウン、幻惑、アイテム使用不可ってあります」
「なるほど・・・酒に酔うっていうよりは、完全に二日酔いだな」
つまり、酩酊状態にかかると、コンディションが強制的に絶不調になり、アイテムによる回復もできない、と。
しかも、5分間だけとはいえ、モミジの全ステータスが50も上がるということは、相手の全ステータスが相対的に100も下がったようなものだ。
とうとうモミジは、タイマンでもある程度は戦えるスキルを手に入れてしまった、ということだ。
「それで、ですね。このスキルの感覚を掴みたいので、これから訓練場まで一緒してもいいですか?」
「俺としては、あまり心臓に悪いようなスキルはお断りしたいんだが、確かめないわけにもいかないしな。わかった」
さっそく、俺とモミジは訓練場に向かい、他に誰もいない環境になってから、モミジは瓢箪に口を付けてグイっと傾けた。
「ふぅ、これもおいしいですね・・・? どうしたんですか?」
モミジは酒の感想を口にしていたが、俺としてはもっと他のことが気になっていた。
「いや・・・ちょっとこれを見てくれ」
俺は、俺自身が佐々木小次郎に変身してしまったときから、、他の誰かが見た目が変わるようなスキルか装備を手に入れたときのために、ダンジョン攻略の時以外は手鏡を持ち込むようにしている。
そして、それが役立ってしまった。
今のモミジは、額から二本の角が生えており、瞳孔も縦に割れていた。さらに、両手の甲からは紫炎が揺らめいており、目の下には赤い隈が伸びている。
【酒呑童子】って、見た目が変わる類のスキルだったのかよ・・・。
モミジも、まじまじと自分の姿を見ている。
「と、とうとう私も見た目が変わってしまいましたか・・・」
「普通に考えれば、見た目が変わる方がおかしいんだがな・・・まぁ、メイプルよりはマシだと考えることにしよう」
さすがに、あれと同レベルの変化は、そうそうは起こらない・・・はず。
それはそうと、酩酊状態の確認をする。
というか、モミジが近づいただけで、ほんのり酒の香りが・・・
「っ!?」
気付けば、俺の視界はぐにゃりと歪んでおり、片膝と片手を地面につけていた。体も、やたらと重く感じる。
「あぁ、これが酩酊状態ってことか・・・意識ははっきりしているが、平衡感覚がまったく掴めないな・・・」
立とうと思っても、足が上手く地面を踏みしめることができない。
それに、効果時間はデバフにしては10秒とそこまで長くないものの、蓋があけっぱなしなら近づくだけでも効果を発揮するらしく、モミジが近づいてくる今の状態だとタイマーが0になってもすぐに元に戻ってしまう。
「モミジ。いったん離れてくれ。効果範囲がどれくらいかも把握しておきたい」
「は、はい!」
俺の指示通り、モミジはいったん俺から5mほど距離をとった。
すると、酩酊状態のタイマーが0になったら酩酊状態が解除された。
「なるほど、そこだと大丈夫なのか・・・少しずつ近づいて来てくれ」
「はい」
モミジがじわじわ俺に近づいてくると、3mほどで微かな臭いと共に再び視界が歪んだ。
だが、先ほどよりかは効果は軽く、なんとか立つことはできた。
「ふむ、幻惑状態の効果は距離が近いほど高くなる、と・・・他にも、いろいろと試してみるか」
この後しばらく、俺とモミジは【酒呑童子】の効果の確認を続けた。
感想欄でもちらっと触れましたが、飲酒については、飲めない自分はともかく、ルールを守れば全然かまわないと考えている人間です。
ただ、たてコン(研究室紹介的な食事会)で、1人の先生がでかめの缶ビールを4,5本くらい開けてたのは、いかがなものかと思いました。
まぁ、酒を飲むのはね?べつにいいんですよ。自分もちょっと飲みましたし。
ただ、中盤あたりから完全に酔っぱらいのテンションで、紹介どころではなかったのはどうなのか・・・。