翌日、シオリとモミジと共に<拾>の鳥居の解放に必要な素材を集めた俺は、さっそく<拾>の鳥居を開放して先に進んだ。
正直、情報がないまま進むというのは気が進まない部分があるが、だからといって情報が出るまで待つというのもプライド的に嫌だ。
それに、今のところすでに出ている情報を頼りに探索してばっかりだったから、たまには自分が先駆者になってやろうではないか。
そう意気込みながら、俺は鳥居をくぐって塔の中に入り、上へと登っていった。
「今のところ、なにもないな・・・」
紫の炎が灯された廊下と階段をひたすら進んでいくが、今のところ敵もギミックもなにもない。
そのまま行けるところまで進んでいくと、ぴったりと閉じられた襖が現れた。
何かがあるとするなら、おそらくこの先だろう。
「よし・・・いくぞ」
俺は深呼吸を1つして、襖を開け放った。
中は畳が敷かれた広間になっており、その先には真っ白い袴と着物を身に纏い、白髪に額から2本の角を生やした大鬼が座っていた。
見た目で言えば昨日の赤鬼に近いが、身長が4mくらいの筋骨隆々とした赤鬼と比べれば、こちらの方が身長も2mほどと人の見た目に近い。
おそらく、この鬼が今の街の主で、この街の酒呑童子の父親ということになるだろう。
「おぉ・・・?まさか人間が来るとはな」
白鬼は、そう言うと立ち上がり、俺の方に近づいてきた。
赤鬼より小さいとはいえ、その迫力は赤鬼に勝るとも劣らない。いや、あの赤鬼はもちろん、今までに戦ったどの相手よりも手強いと、俺の本能が訴えていた。
「持ってるか。ならついて来い」
俺が3つのキーアイテムを持っていることを確かめると、白鬼は元居た場所に戻り、床に魔法陣を書いて消えていった。
「・・・っし」
俺も気を引き締め、魔法陣の上に乗った。
転移されたのは、白竜戦に似た荒野で、白鬼も転移場所から少し離れたところに立っている。
「さて、人が来るとは思わなかった。人の身で主となるにふさわしい力があるのか、試させてもらう。俺を倒せ。できれば、次の主の座はお前にくれてやる」
「・・・【
戦闘になる可能性も考慮していた俺は、戦闘が始まる前に拳銃を2丁生成した。
「さぁ、やろうか、人間」
白鬼がそう言うと、白鬼の左手から白い光が弾け、次の瞬間には弓が握られていた。腰には矢筒もある。
「なんか、嫌な予感がするな・・・」
俺は警戒心をMAXにしながらも、油断なく白鬼を見据える。
次の瞬間、俺の視界に写っていたのは、矢の嵐だった。
「ちょおっ!」
突然の攻撃に、俺はその場で迎撃するのではなく、横っ飛びに回避する選択をとった。
着地してからも、俺は立ち止まらずに走る。
俺が回避してからも、白鬼は矢を射る手を止めない。
丁寧なことに、狙いは常に俺の進行方向に定めており、1本放つごとに20本の矢の嵐が襲い掛かってくる。
間違いなく、俺が弓矢で多用している【速射】と同じ類のスキルだ。
そして、俺の【速射】と同じと仮定すると、矢の本数から白鬼の強さはレベル100相当と推測できる。
たしかに埒外なモンスターは偶に出てきたが、さすがにこれは度が過ぎてないか!?
俺もバク転や宙返りなんかで回避しつつ拳銃で反撃するが、手数が違い過ぎるのと相手も避けるせいでまともに当たらない。
「
俺はこのままではじり貧と判断し、躊躇なく機械竜を生み出した。
攻撃は当たらずとも、盾としては使えるはず。
そう思ったのだが、
「はははっ!面白いではないか!」
白鬼の哄笑とともに、機械竜は3射で破壊された。
いったい、どういう攻撃力をしてるんだよ!?
これは、遠距離で撃ちあっては埒が明かない。
「【クイックチェンジ】!」
俺は矢の雨を避けながら、武器を【備前長船長光】に切り替えた。
「なるほど。なら、俺もこうしよう!」
すると、白鬼は弓と矢筒を消し、再び白い光が弾けたかと思うと、今度は刀を手に持っていた。
これは、武器ごとに戦い方が変わるやつだな?
だとしたら、接近が楽になって助かった。
「このまま押し通る!」
俺もすかさず抜刀し、いっきに接近する。
白鬼は、刀の間合いの外なのに振りかぶっていたが、直感で思い切り右に跳んだ。
白鬼が刀を振り下ろすと、刀がグンッと伸長し、さっきまで俺がいたところを切り裂いた。
その隙に俺は白鬼に十分に接近することができ、白鬼に斬りかかる。
とはいえ、やはり白鬼もただ者ではないようで、2回斬ったころにはすでに刀を元の長さに戻して俺を迎え撃った。
だが、
「ふっ」
「むぅ!?」
白鬼の斬撃は、1太刀に限れば佐々木小次郎よりも速いが、軌道も見切りやすく逸らしやすい。
俺は白鬼の斬撃を逸らしながら回転し、その円運動も斬撃に乗せる。
神崎流“円虎”。合気の理合いを応用した技だが、VRゲーム内でもしっかり機能してくれたようだ。
このままいけば、白鬼を倒せるかもしれない。
そう思ったが、
「人間・・・なかなかやるな!!」
キィンッ!
「んな!?」
白鬼のHPが半分を切ったところで、いきなり動きが変わった。
攻撃を逸らされた直後に引き戻し、俺の攻撃を防御した。
それにとどまらず、白鬼を中心として白く輝く光が渦を巻き、地面近くには風が吹き荒れる。
「さぁ・・・いくぞ、人間!」
声を響かせると同時に、刀を力任せに振って俺を弾き飛ばした。
その衝撃だけで、俺のHPが全損して【空蝉】が発動した。
「ちょっ、これはシャレにならんって!」
俺は悪態をつくと同時に、運営の意図を察した。
これはおそらく、俺とシオリを意識して作られた節がある。
俺とシオリの弱点は、超高火力と広範囲攻撃。避けることも受け止めることもできない攻撃に対しては、俺たちは無力なのだ。
今まではそういうモンスターは出てこなかったから高をくくっていたが、まさかここに来て出てくるとは思わなかった。
ともかく、刀で受け止めることができないのなら、遠距離攻撃に切り替えるしかない。
「【
俺は【備前長船長光】はそのままに、【
これなら、遠距離の打ち合いにならずに、一方的に遠距離から攻撃できる。
【空蝉】のAGI上昇が乗る1分間が勝負だ。
そう思ったのだが、
「えぇ・・・」
俺の目の前に現れたのは、炎でできた巨大な竜に、数えきれないほどの炎弾。
これは・・・
「詰んだ」
その一瞬後、俺は為すすべなく爆炎と業火に飲み込まれた。
少し経って、俺は街へと転移された。
ひとまず、まずはアイテムを確認する。
幸い、キーアイテムも含めてなくなっているものはなかった。一度鳥居を開放すれば、何度でも挑戦できるということだろう。
それを確認してから、俺は大きく息を吸い込み、
「ちっくしょーーーーーー!!!!」
他のプレイヤーの目も憚らずに、思い切り叫んだ。
後に聞いた話では、街のどこにいても俺の声が聞こえたという噂が流れたらしいが、初めての敗北に比べれば些細なことだ。
たまにはこういう展開も悪くないんじゃないですかね。
それに、運営もクラルとシオリ相手にやられたままというのも、ちょっと物足りないでしょうし。