「透!そっちの飾りつけ終わったら、料理を運んで!」
「わかってる!」
NWOでメイプルたちとクリスマスパーティーをした数日後、俺は実家でのクリスマスパーティーの準備に追われていた。
一応、暇な門下生の中でも任意で手伝ってもらってはいるが、なにせ用意する人数が人数だ。人手はいくらあっても足りない。
ていうか、数十人のパーティーを10人未満でその日のうちに準備するって、普通に考えてバカじゃねぇの?
そりゃあ、パーティーを開く場所が普段使っている道場で、前日にも稽古はあるから仕方ないとはわかっている。
わかっているが、もっと他にやりようがあったんじゃないかと思わずにはいられない。例えば、前日は屋外での練習や鍛錬をメインにするとか。
とはいえ、そんな泣き言を言っている暇もなく、準備組はあっちへこっちへと動き回っている。
「おぉ~、だいぶ仕上がっとるなぁ」
準備が8割くらいまで進んだところで、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「透~、楓ちゃんと理沙を連れてきたで~」
「お、おじゃましまーす・・・」
「おじゃまします」
栞奈の後ろには、本条がおずおずと、白峰が自然体で挨拶をしてきた。
今回のパーティー、無事に本条と白峰も参加することができた。
どうやら、2人の親御さんにもそれなりに信頼されているようで、二つ返事でOKだったとのことだった。
一応、男の俺もいるんだが、今回は主に子供たちに向けてという色合いが強いというのもあるだろう。
「2人とも、いらっしゃい。それで、ちゃんとプレゼントは用意してきたか?」
「うん、来る前に買ってきたよ!」
「もらった人が喜ぶかは、わからないけどね」
今回のパーティーのイベントの1つに、参加者全員で行うプレゼント交換がある。もちろん、俺も栞奈も用意している。
父さんと母さんは「若者のプレゼント交換に水を差すのは悪いから」と基本的に参加しないが、パーティーが終わったら2人でこっそりプレゼントを交換しているのを俺は知っている。本当に、仲がいい夫婦なことだ。
「それじゃあ、プレゼントはそこのツリーの絵の下に置いておいてくれ」
今回はクリスマスパーティーという名目だが、さすがに道場内にでかい木を入れるわけにはいかないため、いつも巨大なクリスマスツリーの絵を壁にぶら下げている。
小さなツリーはいくつかテーブルの上に置いてあるし、これで十分だろう。
「透!ぼさっとしてないで・・・って、あら。楓ちゃんに理沙ちゃん!いらっしゃい!」
「花梨さん!お邪魔してます!」
「今回は招待してくださって、ありがとうございます」
女子3人と話していると、道場の入り口の方から母さんが顔を出してきて、本条と白峰がぺこりとお辞儀をした。
そういえば、準備もあと少しだったな。
「母さん、あとはどんなもんだ?」
「あと1回で運べるくらいの量よ。だから、早く来なさい」
「へいへい」
あきらかに、本条たちと俺とで扱いが違う。
家族と客人っていう立場の違いもあるだろうけど、俺にももうちょっと優しくしてもいいんじゃないか?
まぁ、文句は言わないけど。怒った母さんは怖いし。
「えっと、神崎君、私たちも手伝おうか?」
「いや、いい。むしろ、本条たちを手伝わせたら俺がどやされる。だから待っててくれ」
「そ、そうなんだ・・・」
「そんじゃ、うちらは向こうの方に行こか」
「花梨さんの料理、楽しみだわ」
女子たちは女子たちで楽しそうだなぁ。羨ましい。
「透、早く手伝いなさい!」
「・・・うす」
ちょっとくらいなら、泣いてもいいよな?ていうか泣きそう。
* * * * *
「それにしても、すごい量だね。これ全部、花梨さんが用意したのかな?」
パーティーが始まるまで、まだ少し時間があるから、うちらは道場の隅で話しながら待っとった。
遠目で透がどやされるのが見えたけど、どんまいや。
花梨さん、明らかに年頃の男の子と女の子で態度が違うからなぁ。
男の子に特別厳しいわけやないけど、あきらかに女の子に甘い。
ついでに言えば、透を容赦なくこき使う。
それはさておき、楓ちゃんの問い掛けにうちも答える。
「さすがに、花梨さん1人でこの量は用意できへんて。料理ができる人とかも手伝っとるんよ」
「それって、神崎君も?」
「そうやなぁ。というか、透はけっこう料理できるで?」
「え?そうなの?」
どうやら、透がリアルで料理できるとは思っとらんかったらしい。
まぁ、NWOやと食材やなくてプレイヤーとかモンスターばっか斬っとるから、仕方ないって言えば仕方ないんか?
「花梨さんから、いろいろと叩き込まれとるんよ。ほら、毎年準備しとるし」
「あ~、言われてみればそうかもね。ということは、神崎君の手料理も食べられるってことかな?」
楓ちゃんの無邪気な言葉に、理沙がピクッと反応した。
それには気づかないふりをしつつ、うちはちょっとニヤつきながら話した。
「言うても、味付け自体は花梨さんが決めとるけどな。せやから、他とはそこまで変わらんと思うよ?」
「・・・どうして、それを私に向けて言うの?」
「いやぁ~、別に~?」
理沙のぶっきらぼうな言葉に、うちは意味ありげに返す。
「悪い、待たせた」
そこで、ちょうど準備が終わったらしい透が駆け寄ってきた。
「やっと終わったん?」
「あぁ。後は始めの挨拶をするくらいだな。ほら、始まるぞ」
透の視線の先に目を向けると、プリントのクリスマスツリーの前に透のお父さんがマイクを持って立っとった。
「今年も集まってくれてありがとう!今日はぜひ、楽しんでほしい。それでは、メリークリスマス!」
「「「「メリークリスマス!!」」」」
クラルのお父さんの掛け声に子供たちが大声で返して、クリスマスパーティーが始まった。
クラルとサリーの距離感を決定しました。
とりあえず、「たまにラブコメるけどくっつかない」、「サリーも少しは意識してるけど、恋愛までには発展しない」、「あくまで仲のいい友達同士」って感じで。
やっぱ、それくらいの方がちょうどいいと思いました。