BS×スタートゥインクル~12星宮に導かれたもの~ 作:風森斗真
この回、最初に見た時思ったんですが、億単位をさらっと出す相手に中学生のお小遣い程度で立ち向かおうとするひかるって無謀なんですかね?それとも単純に頭が残念なんですかね?(-▽-;
オークション会場に入ったはいいが、通常、こういった場所ではフォーマルドレスを着用することになっている。
が、一着もそういった用途の服を用意していなかったひかるたちのために、マオが自分のフォーマルドレスを貸し出してくれた。
「キラヤバーッ!」
「すごい数ルン……」
「お借りしてもよろしいのでしょうか?」
「全部マオのだから、気にすることはないニャン♪」
女性更衣室に通されたひかるたちは、マオが用意してくれたドレスの数々に目を丸くしていた。
どれを借りても構わない、と話すマオの腕の中には、マオが安心できる人間と判断したためか、フワがすっぽりと収まっていた。
「マオ、いい匂いフワ」
「ふふふ♪それじゃ、楽しんでいってニャン♪」
着替えが終わったひかるたちにフワを返し、マオは外へと出た。
ひかるたちも会場の方へ向かうため部屋を出ると、会場の前にはタキシードを着た見覚えのある後姿があった。
言わずもがな、導だ。
どうやら、ドラムスがタキシードを貸してくれたらしい。
「おっまたせー!」
「導、カッコイイルン!」
「へぇ、似合ってるね」
「えぇ。一瞬、見間違えましたわ」
「おほめの言葉どうも」
四人から褒められはしたが、まだ心を開ききっていないためか、そっけない態度で返した。
そのことにプルンスから文句が飛び出しそうになっていたが、ひかるになだめられ、追及はしてこなかった。
オークションの開始時間が迫っていることもあり、ひかるたちはオークション会場に早足で入っていった。
「紳士、淑女の皆様。本日はお集まりいただき、まことにありがとうございます!」
オークション会場に入り席に座ると、どうやら開始の時間になったらしく、視界と思しき異星人がマイクを片手に会場に集まった客人にそう挨拶をしてきた。
「まずは皆様に余興をお楽しみいただきましょう!皆様ご存じの宇宙アイドル!」
「マオだにゃ~ん♪」
ステージの中央にマオが姿を現すと同時に、彼女の定番ソングが流れ始めた。
「好きよ、嫌いよ?どっちなのよ~?♪」
ここに来るまでの間に流れていたものと全く同じ歌がオークション会場に響いてきた。
その演出もさることながら、マオの歌声にテンションが上がり、フワも一緒になって歌い始めた。
一方で、プルンスはどこか遠いまなざしをしていた。
それに気づいた導がどうしたのか問いかけると、プルンスは自分が初めてマオの曲を聞いた時のことを話してくれた。
「プルンスは、プリンセスたちからフワを託され、ノットレイダーから逃げている間中、何度もくじけそうになってでプルンス……でも、マオたんの歌に力をもらって頑張ろうって気になれたんでプルンスよ」
「ずいぶん、過酷だったんだな」
「それはもう、聞くも涙語るも涙の……」
と言いかけたところで、マオのステージは終了。
いよいよ本番であるオークションへと移った。
語られると長くなりそうだったので、正直助かったという感想を抱いた導は、オークションに出される品物に注目した。
「まずはこの品!いきなりの大物、惑星レインボーのネックレスでございます!!」
司会の紹介と同時に、先ほどまでマオがステージライブを行っていた会場中央に、虹色に輝く宝石が埋め込まれたネックレスが登場した。
その美しさに、会場の全員が見惚れていた。
ひかるもその一人だったが、導とまどかは惑星レインボーについて気になったらしく、プルンスとララに惑星レインボーについて問いかけていた。
「惑星レインボーって?」
「レインボーは滅びた惑星でプルンス。星空連合に加盟していなかったから詳しくはわからないでプルンスが」
「調査報告だと、惑星の住民すべてが石になっていたらしいルン」
「住民すべてが石に……」
「原因は不明でプルンスが、レインボーの貴重な宝石がいくつもほかの星に出回っていると報告されているでプルンスが……まさかここでお目にかかるとは思わなかったでプルンス」
そんな話をしている間に、ネックレスは五百万キランという値段でオークションが始まった。
なお『キラン』とは宇宙共通の貨幣単位であり、その通貨価値は日本円とほぼ同等だ。
つまり、日本円に換算して五百万円からのスタートということになる。
が、開始早々。
「一億キラン」
ドラムスが一億という金額を宣言した。
いきなり二十倍に跳ね上がったことに驚愕するひかるたちは、いったいどれだけの資金を持っているんだ、と思ったことは言うまでもない。
その後も、ドランは次々と品物を落札していき、いよいよ、本日の目玉が出品された。
「本日の目玉商品。本日最後にして最高のお品物!『プリンセスの力』!!」
「「「「プリンセススターカラーペン??!!」」」」
「うわぁ……最悪の展開だ……」
「プ、プリンセスの力をお金で競り落とそうなどと!!不敬にもほどがあるでプルンス!!」
そこに現れたのは、明らかにひかるたちが回収しているアイテム、プリンセススターカラーペンだった。
オークション会場に反応があるということは、こういうこともあり得ると思っていた導は、まさに最悪の展開になったことに頭を抱え、プルンスは敬愛するプリンセスの力がこのような形で売り払われることに対して怒りを覚えていた。
「ど、どうしよう?!」
「どうするって、買いたたくしかないだろ」
「け、けどお金なんて……」
「……こうなったら!わたしの全財産で!!」
と叫ぶひかるだったが、導がそれに待ったをかけた。
「中学生の小遣い程度でオークションで戦えるわけないだろ?さっきから見ててわからないのか?!」
「そんなのやってみなきゃ……」
「万や億どころか下手すると兆単位の金が動くんだぞ?!お前の財布の中にはどれだけ入ってるんだよ?!」
「うぐっ!」
「で、でもどうすれば……」
今すぐ億単位の資金を集めることなど、できるはずもない。
かといって、このままプリンセススターカラーペンをほかの誰かの手に渡してしまうなんて選択肢もナンセンスだ。
こんなとき、所有者が個人であればバトスピで譲ってもらうこともできるのだろうが、戦いの舞台はバトルフィールドではなくオークション会場。
行われているのはバトスピではなく、オークションだ。
さすがに、分が悪い。
誰もがそう思ったが、ここでまどかが口を開いた。
「……プルンス。お願いがあります。あなたが作ったドーナツ、使わせていただけませんか?」
「え?」
突然の提案にプルンスは困惑したが、まどかの考えに乗ることにした。
そうこうしているうちに、ドラムスが9億という値段で競り落としにかかり、それ以上の値段が出てこなかったため、ドラムスに落札が決まろうとしたその時だった。
「お待ちください!ドーナツ、おひとつで」
まどかが待ったをかけた。
どうやら、まどかの考えとは、自分たちの手元にあるものを使うことだったようだ。
その中で価値が最もわかりやすい食べ物、ドーナツを使うことにしたらしい。
当然、宇宙ではあまりスイーツであるため、説明が求められた。
「これは、わたくしの星『地球』で大変価値のあるスイーツです。こちらと交換で、いかがでしょう?」
当然、周囲は何を言っているのかわからず、中には侮蔑の笑みを浮かべるものもいた。
だが、その笑みに屈することなく、まどかは力説した。
「初めてこれを食べた時、わたくしはとても感銘しました。それこそ、今日初めて聞いたマオさんのステージと同じように!であれば、文化や星の垣根を越えて、このスイーツの価値を皆様にもお分かりいただけるかと!」
随分と強引ではあるが、資金が手元にない以上、自分たちは物々交換をおこなういがいに手段がないことは重々承知していた。
ゆえに、いつもまどかには批判的な導もこの時ばかりは何も言わずに成り行きを見守っていた。
「物は試しです」
「おひとつ、いかがでプルンス?」
「……そこまで言うのならばわたくしが」
まどかの力説に押されたのか、美食評論家を名乗るマダム、シタコ・エーテルがドーナツに手を伸ばした。
「もっとも、わたくしの知らない料理がおいしいはずが……」
と文句を言いながら、ドーナツを口に運んだ。
すると、その表情は一変した。
「……っ???!!!う、うまーーーーーーいっ!!!」
「さぁ、お味はいかがです?」
「この食感、この甘味……どれも素晴らしい!!これは、一個十億キランの価値がありますわ!!」
「ほぉ、面白い!ならば十一億!」
宇宙のあらゆる美食を食べつくしたと評判の宇宙美食評論家の太鼓判のおかげか、ここでドラムスが乗ってきた。
オークションはまどかとドラムス、どちらが競り落とすかの勝負となっていた。
その価格はとうとう、五十億キラン。ドーナツ五つとなっていた。
もうこれ以上はドーナツがない。
だが、まどかはまるでそれを隠すように余裕の笑みを浮かべていた。
――くっ、い、いったいどれだけの資産を持っているというんだ?!
まどかの笑みに、ドラムスは危機感を覚えた。
さすがにこれ以上は自分も出すことができない。
ここは、意地を張るよりも目の前の相手を立てて、カッコよさをアピールしつつ退く方が賢明と判断したようで。
「……ふ、僕としたことが熱くなりすぎて忘れていたよ。ドラゴン家のモットーは『常にレディーファースト』!ここは貴女にお譲りしよう!!」
その宣言は、ドラムスが勝負を降りたということにほかならない。
すなわち。
「な、な、なんと??!!地球のお嬢さんが五十億キランで落札!!」
まどかの勝利である。
どうにか勝負に勝てたことに安堵する一行だったが、ふと会場を見た瞬間、導は目を見開き叫んだ。
「『プリンセスの力』がない?!」
「ふふふっ、『スタープリンセスの力』、確かにもらいうけるわ!」
突如、会場の天井あたりから声が響いてきた。
そちらに目を向けると、青いシルクハットにサングラスをかけた猫耳の少女がプリンセススターカラーペンを手にしている姿があった。
「あ、あれは?!」
「怪盗ブルーキャットルン!!」
その少女こそ、今回、オークション会場に予告状を出した宇宙怪盗、怪盗ブルーキャットだった。
獲物を手に入れたブルーキャットは煙幕で視界をくらませ、その場から逃げ去っていった。
「ぷ、プリンセススターカラーペンがっ!!」
「ど、どうするルン?!」
「ペンダントの反応を追いかければいいだろ!」
「あ、そっか!!」
導の言葉に、困惑していたひかるとララは冷静さを取り戻し、ペンダントの反応を追いかけて、会場の外へ出て、屋根に上った。
そこには、避難してきたのだろうか、コートを着たマオが町を見下ろしながらたたずんでいた。
「あ、マオたんでプルンス!」
「マオさん、宇宙怪盗を見ませんでした?!」
「宇宙怪盗?ここには誰も来てないニャン」
ひかるの質問に、マオは淡々と返してきたが、まどかは自分が持っているペンダントをマオに向けた。
その瞬間、プリンセススターカラーペンの力を感知した時と同じ反応があった。
それが意味することが何か、それを察することができないほど、ひかるもプルンスも鈍くはなかった。
「ま、まさか……」
「う、噓でプルンスよね?何かの冗談でプルンスよね?!」
「……ふ~ん?意外と高性能なのね、そのレーダー」
何かの間違いであってほしいと言いたそうな声色で、プルンスがマオにそう問いかけた。
が、返ってきた答えは残酷なものだった。
「そう、みんなが大好きな宇宙アイドルは仮の姿……その実態は!!」
マオは着ていたコートをつかみ、翻し、コートの影に隠れた。
翻ったコートがマオの手を離れ、上空に投げ捨てられると、コートの影からマオとはまったくの別人が姿を現した。
「宇宙をまたにかける宇宙怪盗!ブルーキャット!!」
それは確かに、オークション会場からプリンセススターカラーペンを盗み出した張本人。
宇宙怪盗ブルーキャットだった。