BS×スタートゥインクル~12星宮に導かれたもの~ 作:風森斗真
ノットレイダーになってしまった石像が浄化されたことでアイワーンは撤退していき、ひかるたちはふたご座のスタープリンセスを復活させるため、スターパレスへとワープする。
ひかるたちがスターパレスでプリンセスと謁見している間、導とブルーキャットは浄化された石像の前に立っていた。
「ひとまず、よかったじゃないか」
「え?」
石像を前に、なんとも言い難い表情を浮かべるブルーキャットに導はそう声をかける。
「石化してそのまま、というわけじゃなかった。サザンクロス・ショットでは元に戻すことができなかったけど、スタープリンセスの力がすべてそろえば、おそらく」
「えぇ……元に戻すことはできるかもしれない」
「だからって、プリンセススターカラーペンを盗もうとか考えてないよな?」
導はまっすぐにブルーキャットを見ながら、そう問いかける。
ひたすらに馬鹿正直に正しい道を行こうとするひかるたちと違い、ブルーキャットは目的のために手段を選ばない節がある。
ひかるたちからプリンセススターカラーペンを盗み出すことくらい、やってのけるだろう。
「だから? もしかして、それをさせないためにわたしをここで止めるつもり?」
「そうならないことを祈っている。俺としても、あんたの気持ちはわからなくもないからな」
ブルーキャットは導の言葉に眉をひそめる。
彼女にとって、導はプリキュアたちと同じ、何も失ったことがない、何が何でも取り戻したいものもない。
そんな人間に、自分の気持ちがわかるものか。
そう思い、導の顔を見る。
導の顔に浮かぶその表情は、どこかひかるたちとは違う。
なぜかそう思わせるものがあった。
「……あなたは、あの子たちとは少し違うのね」
「……この星の住民がどうだったのかは知らないが、少なくとも地球人の大人のせいで、少しばかり早く現実主義的にならないとならなかったからな」
人間は年を経るごとに知識だけでなく、周囲に順応することや大多数の意見に同調することを覚えていく。
順応や同調をせず、自身の心のままに声を出し続ける人間は、
導の両親や仲間たち――コアの光主は、異界王という世界の支配と統一を目論んだ一人の男の野望を阻止したことで、一時、英雄として扱われ、付加価値のある存在として扱われた。
しかし、世界を影で支配する権力者たち『フィクサー』の存在を公表しようとした結果、強大な権力を持つ彼らに世論を操作され、前者の立場から後者の立場へと一気に叩き落されてしまい、それ以来、周囲からの視線は冷たくなり、実の両親すら敵に回ったという話を、導はコアの光主たちから聞いていた。
「俺はあいつらと違って、小さいころから味方なんていなかった……両親以外の家族すら、俺にとっては味方じゃなかった」
「周りはみんな敵。だから早く大人にならなきゃならなかった、ということ?」
「あぁ。だから、君みたいに目的のために手段を選ばないことを蔑んだりはしないし、ノットレイダーを裏切ったようなもんだから、誰かを巻き込まないために一人でいることを否定はしない」
でもな、と導はブルーキャットに視線を向け、語りかけ続けた。
「誰かや何かを救いたい、その気持ちは星奈たちも同じだ。なら、協力しあうこともできるんじゃないか?」
誰かや何かを救いたい。
ひかるたちとここ数週間、共に過ごして、彼女たちが抱えている共通の思いに、導は触れてきた。
その想いの強さは、ブルーキャットが惑星レインボーの同胞たちを救いたいという気持ちと同等の強さを持っている。
だからこそ、傷ついてもあきらめず、何度でも立ち上がるし、どんな強敵にも立ち向かっていく。
それを知っているから、導はこうして協力を要請するよう、ブルーキャットに語りかけていた。
だが。
「気持ちだけで結構よ。あなたもわかってるでしょ? 結局、最後に頼れるのは自分だけだってこと……カードバトラーなら、なおのことね」
いくら、デッキや戦術の構築で力を貸してくれた友人がいるのだとしても、バトルフィールドに立つことができる人間はただ一人。
声援はあるだろうが、実際にカードバトルを行う場に立つ人間にしかわからない緊張感や重圧といったものには、一人で耐える以外にない。
その意味で、最後に頼ることができる存在は一人だけであるというブルーキャットの言い分は、導もわかる。
そして、ブルーキャット自身がこれ以上、何を言っても聞き入れるつもりがないこともわかった。
もし、ブルーキャットの心を変えることができるとすれば。
――星奈たちに行動で示してもらうしかないか
人たらし、というのか、他人との距離感が異様に近いひかるならばあるいは。
そう考えて、導はそれ以上、ブルーキャットに協力を要請することをやめた。
そうしているうちに、ひかるたちがスターパレスから帰還する。
帰還したひかるたちがブルーキャットに声をかけ、自分たちも協力することを告げたが、ブルーキャッの答えはやはり。
「気持ちだけで結構にゃん……そこの彼にも話したけど、最後に頼れるのは、自分だけなのよ!!」
そう告げて、ブルーキャットは煙球を地面に叩きつけた。