BS×スタートゥインクル~12星宮に導かれたもの~ 作:風森斗真
三部構成くらいになるかな?
ベースはユニ、というかブルーキャット初登場回です
多少脚色加わってますが、そのあたりはご容赦を
次回はバトル……するかどうかはお楽しみに!
その日、導はひかるとララに引きずられて、ララのロケットに乗せられようとしていた。
なんでも、スタープリンセスの力の結晶であり、スタープリンセス自身が姿を変えたアイテム、スターカラーペンが見つかったらしい。
それを一緒に探しに行こう、ということのようだが。
「なんで俺まで同行しなきゃいけないんだ」
「だって、わたしたちに協力してくれるんだよね?!」
「それが頼まれたことだからな」
「だったら行こうよ!!」
どうあっても、ひかるは導を宇宙に連れていきたいらしい。
普段から一人でいることが多いからなのか、それとも、同じ秘密を共有している仲間だからなのかはわからないが、基本的に一人暮らしの導からすれば、休日はやらなければならないことが多くあるため、誘ってほしくないというのが本心だ。
「……お前は親が家にいるからいいが、俺はいないし、やらなきゃいけないことが大量にあるんだ」
「大丈夫だよ!今日中に帰ってこれるから!!」
「だから、そういう問題じゃ……」
『導様、あきらめてください。こうなったひかる様はてこでも譲りません』
「……AI、お前もか……」
AIにまで諭され、導はげんなりした表情になった。
いつもならばAIもさりげなくサポートしてくれるのだが、今回はプリンセススターカラーペンの回収ということもあってか、ひかるの見方をしているようだ。
さすがに分が悪いと感じたのか、導はもうそれ以上の抵抗をやめて、おとなしくついていくことにした。
「はぁ……」
「ご、ごめんね?なんか……」
「ほんとっすよ……俺だってやらなきゃいけないこととかあんのに……」
えれなが苦笑を浮かべながら導に謝罪すると、導は頭を抱えながらぶつぶつと文句を言っていた。
家の手伝いを積極的にしているためか、それとも実質的に導が一人暮らしをしていることを知っているためか、このメンバーの中でえれなが一番同情的であることが、おそらく唯一の救いだろう。
「まぁまぁ。ひかるなりに導くんを気にかけてるんだと思うよ?」
「一人でいるところを狙われても困るんで、それはそうなんでしょうけど……なんでこう強引なんですかね、あいつ」
「それはひかるだからとしか言えないでプルンス」
やれやれ、といった風にプルンスは首を横に振った。
もはやここにいるメンバーの中で、ひかるのあの強引さを止めることができる人間はいないらしい。
そう感じた時、導はさらに深いため息をつくのだった。
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そんなこんなのうちに、ロケットは地球を離脱し、太陽系を離れ、他の銀河系の星に到着した。
眼下に広がるその光景は、まるでラスベガスの夜景を思わせるような光景だった。
「キラヤバ~ッ!」
「へぇ……ラスベガスとか函館山の夜景みたいな町だな」
「導はどもかく、ひかるは少し暢気すぎルン」
「ララの言う通りでプルンス!ここゼニー星は星空連合に所属していない、お金だけがものをいう無法地帯!気を引き締めていくでプルンス」
星空連合とは、宇宙にある文明の進んだ惑星で成り立つ国際連合のような組織のことで、宇宙の平和と均衡を保つため、日々活動している。
というのがプルンスの説明だった。
だが、ここゼニー星はその連合に加盟していないため、ゼニー星独自のルールが幅を利かせているらしい。
「国際ルールが関係ない国みたいなの感じかな?」
「おそらくは……あら?この歌は??」
そんな話をしながらロケットを降りると、不意に、ひかるたちの耳に可愛らしい歌声が響いてきた。
歌が聞こえる方へ視線を向けると、そこには桃色の髪をした女の子の映像が流れていた。
「あれは……」
「マオたんでプルンス!!」
突然、プルンスが興奮した様子で叫んだ。
気を引き締めて、という言葉はどこへやら。という感想を一行が抱いたことは言うまでもない。
こんな状態で大丈夫なのだろうか、と思いながら、導はララに問いかけた。
「アイドルか何かか?」
「『宇宙アイドルマオ』。彗星のように現れ、出した歌は天文学的ヒットをたたき出す、ナンバーワンアイドルルン」
「宇宙にもアイドルっているんだ!?」
「驚くところそこなのか?」
ひかると導が漫才のようなやり取りをしている一方で、えれなとまどかはペンダントの反応を追いかけ、向かうべき方向を確認していた。
すると、ある方向に強い反応が出てきた。
「あっちみたいだね」
「えぇ……みなさん、行きましょう!」
まどかの呼びかけで、全員が移動を始めた。
ペンダントの反応を追いかけて歩いていくと、一行は通り過ぎた建物の中でも一層きらびやかな建物に到着した。
どうやら、オークション会場らしい。
「……まさか、競売にかけられてるってオチか?」
「競売?」
「一つのものに対して、最低限の価格をつける。大人数がそれ以上の価格を言い合って、最後に価格を言った人間がその価格で物を買うってシステム」
「それをオークションと呼び、それを行う会場をオークション会場と言うのです」
「意外。まどか詳しいね」
「父に時折、連れてきてもらっていましたので」
だが、仮にプリンセススターカラーペンがオークションにかけられているのだとしたら、非常に厄介だ。
正攻法で行くとしても、オークションに勝利する必要があるし、かといって、あちらもこれが商売である以上、頼み込んで譲ってもらう、などという方法は考えられない。
どうしたものか、と考えている導をよそに、ひかるは一人、オークション会場の入り口に突撃を仕掛けた。
「怪しい方のご入場はお断りしております」
だが、あっけなく入り口で門前払いを食らってしまった。
「いや、当然だろ……こういう大きな金額が動く場所はしっかり身元が確認できる人間でないと入場できないってのが相場が決まってるんだよ」
「そんな~……」
「フワァ……」
呆れた表情を浮かべながら、導はひかるに説明した。
その説明を高笑いしながら、その通り、と賛同する声が背後から聞こえてきた。
「ここに入れるのは、僕のような超!セレブだけさ!!」
「いらっしゃいませ、ドラムス様」
声がした方へ視線を向けると、地球の幻想生物『ドラゴン』を二足歩行させたような姿の異星人がいた。
入口に立っていた警備員の態度を見るに、かなり有名な人物のようだ。
「悪く思わないでくれよ?今日は特に警戒が厳重なんだ」
「……テロ予告かなにかあったので?」
「いいや、テロなんて物騒なものじゃない。怪盗さ」
「怪盗?」
ドラムスからその言葉を聞いた瞬間、地球人四人はかの有名な怪盗『アルセーヌ・ルパン』のように黒マントとシルクハット姿の人物が頭に浮かんだ。
が、異星人であるララは違ったらしい。
「怪盗……まさか、ブルーキャットルン?!」
「ブルーキャット?」
「狙った獲物は必ず盗み出す、宇宙怪盗ルン!」
アイドルに続いて怪盗までも宇宙に存在するらしい。
カードバトラーが存在している時点で、もしかしたらとは思っていたが、まさか本当にいるとは思わなかったため、頭痛を覚えたように頭を抱えていた。
「さ、行こうか。マオ」
「ニャン」
そんな様子の導は放置して、ドラムスは乗ってきたリムジンに乗っている人物に声をかけた。
すると、リムジンから一人の少女が降りてきた。
その少女は、今まさに町で流れている映像の少女だった。
「ま、ま、ま……マオたん?!」
まさかの人物の登場に一番驚いていたのはプルンスだった。
どうやら、オークションを盛り上げるためにドラムスが自身のポケットマネーで招待したらしい。
いったいどれだけの金をつぎ込んだのやら、と感想を抱きながら、導はマオに視線を向けた。
「よろしくニャン♪」
「……どうも」
「ところで、そこのあなたはマオのファンかニャン?」
マオも導に視線を向けていたらしく、自然と目が合った。
笑顔で声をかけるマオに対して、人間不信のためか昨日、今日出会った他人に合いそうよく振舞えない導は無愛想に返した。
それに気分を害することなく、さきほどからキラキラした視線を向けてきているプルンスに気付いたのか、マオが問いかけると、プルンスは完全に語彙力を喪失してしまったらしく、普段は青いその顔を赤くして高速でうなずいていた。
「なら、ドラムスさん。この子たちも入れてあげてニャン」
「おいおい、いくら君の頼みでもそれはさすがに」
「マオにとって、ファンは友達と同じニャン。お願いニャン」
さすがに、マオのお願いでもオークション会場にひかるたちを入れることはできない。
そう断ろうとしたが、マオからの再度のお願いに、ドラムスは折れた。
「……か、かわいい……オーケー!」
「ありがとニャン♪」
「……あざとい……」
あっさりと折れたドラムスもそうだが、ドラムスを折らせたマオの頼み方にそんな感想を抱いたのは導だけではなかったが、もはや信者と言っても過言ではないような熱狂ぶりのプルンスだけは、さすが、と感銘していた。
だが導たちは気づかなかった。
誰の視界にも入らないよう、マオが怪しげな笑みを浮かべていたことなど。