「わらわは、どこで道を間違えたんじゃろうか…」
♠♥◆♣♠♥◆♣
「半端者の獣人は出ていけ!」
人間と獣人の混血であるライザーに、容赦ない言葉が浴びせられる。
もともと人間と獣人は仲が悪いわけではなかった。しかし、いまの獣人の国の女王ガメイラは人間を憎み、獣人の国に人間の侵入を拒む大きな門を作った。
ガメイラの率いる国王軍は、ライザーが純粋な獣人ではないことを知った途端、除け者にし、自分たちの国から追い出したのである。
「どうして俺だけが…俺だってこんな血を望んではいない…」
ライザーは誰もいない静かな門の外で呟いた。しかし誰にも、門の中にも届かない。
このまま項垂れていたいが、そういう訳にもいかない。混血でも立派な生き物だ。腹は減るし、喉も渇く。どこかの街へ行くしかない。そう彼は考えた。しかし獣人の国には戻れない。
「クッ…生きるためだな…」
彼は人間の街の方向へ歩き出した。
♠♥◆♣♠♥◆♣
ライザーはそれからしばらくの間、人間の国で細々と暮らしていた。
顔を見られてはいけないので常に麻のローブを被り、食料を買う時以外はなるべく外に出ず、近くにあった洞穴で生活をしていた。文化的とはほど遠い生活ではあるが、生きるために必死でそんな悠長なことを考える余裕もない。どうにかして今の状況をなんとかせねば…毎日同じことを考えているが特に何もいい案は浮かばない。夜も更ける。今日はとりあえず休もう。そう思って寝床に入ろうとしたとき
「お宝はどっこかな〜♪」
呑気な声が聞こえた。恐らく人間だろう。いや、ここには獣人はいない。絶対に人間だ。
ライザーは慌てふためいた。逃げ場はない。ここはやり過ごすしかない…
「おっ、着いたかな〜… ん…?おい、誰かいるか?」
「俺だ。怪しい者ではない。」
ライザーはそう返した。麻のローブを被り、焚火を最小限にして顔を見られないように。
「な〜んでこんな所にいるのかな?オレと同じ、お宝を探しに来たってわけではなさそうだけど。」
「俺は居場所を失った。行き場がないからここで過ごしている。」
「ふーん。大変な目に合ったんだねぇ。同情するよ。…キミが人間だったらねぇ。」
「…!?」
「え、何?バレてないと思ってたの?入った瞬間匂いで気づいたよ。まぁ、オレは何もしないけどね。興味あるのお宝だけだし。でも、オレ以外は見逃してくれないと思うよ?」
そう言って人間は去っていった。もうここにはいられない…
満月が煌く暗闇の中、ライザーは洞穴から外に出た。獣人の国から追い出され、人間にも拒絶される。彼にはもう、居場所はなかった。
「何故だ!何故俺だけが虐げられなければならない!俺だって望んで生まれた訳ではない!どうして…」
ライザーは項垂れ、涙をひと粒零した。
「…あなた、どうしましたの?」
不意に声をかけられ、驚きつつさっと顔を上げる。
そこにいたのは、月の光を受けて輝いている、フリルのついた赤いドレスを着た少女だった。