「あなた…泣いていますの?」
「…何も言うな!お前には関係ないだろう!」
少女の言葉に対して気づいたら尖った言葉で返していた。
「すまん…だが、放っておいてくれ。人間でも、獣人でもない俺には孤独がお似合いなんだ…」
もはや助けを求めることすらできないほど、ライザーの心は深く傷ついていた。自分で望んで半獣半人になろうとしたわけではない。人間に対しても、獣人に対しても何も悪いことはしていない。それなのに、獣人からは追い出され、人間からは虐げられる。彼の心は、真夜中の暗闇のように深い絶望に沈んでいた。
「半獣半人の何がいけなくて?」
「…え?」
少女の口から出た予想外の言葉に思わず顔を上げて聞き返してしまった。今までの自分の悩みを根本から否定された怒りと、人間である少女が何故そんなことを言ったのかという疑問が頭の中をかけめぐった。
「わたくしには獣人の友達がいますの。昔偶然出会って、ずっと一緒に遊んでましたわ。でも、獣人の王が変わってから獣人の国から出られなくなってしまい、ずっと会えていませんの…でも、その時その友達が言った言葉を今でも覚えていますわ。「例え会えなくても"とも"だ。人間だからとか獣人だからとか関係ない。」って。私はその言葉を信じていますの。」
ライザーは心底驚いた。今までに自分を肯定してくれた言葉をかけられたことは初めてだった。
「お前…名前は?」
「私はエレナ。エレナ・ブリリアントですわ。」
「…エレナ。みんなお前のような人間で、お前の友のような獣人なら、俺は虐げ、蔑まれなかったんだろうな…そんな世界があれば…」
「ないなら、作ればいいんじゃなくて?」
「は?何を言っている。俺には世界を変える力どころか、世界に居場所すらない。そんな俺に、世界を変えることなんかできるわけがないさ」
「できますわ。…これを使えば」
そう言ってエレナは何かを差し出してきた。これはなんだ…?歯車か?
「これは…なんだ?」
「これはスキルギア。これを使えばあなたは異世界に行くことができますの。そこにいる時の番人を倒せば、あなたの望む未来を作ることができますわ。」
「つまりこれを使えば、俺は作れるのか…?俺の居場所を…」
「ええ。あなたに作って欲しいのです。人と獣人が共に笑って暮らせる世界を…そのためにこれを託しますわ。」
「…わかった。約束しよう。必ずお前たちが望んだ世界を作ってみせる。」
「期待してますわ。…さぁ、このギアを手に取って…」
ライザーはエレナから差し出されたギアを手に取った。
その刹那、ライザーの視界が白に包まれ、そのまま意識を失った。
♠♥◆♣♠♥◆♣
「…ここは、どこだ?」
ライザーが目覚めたとき、そこには見たことのない世界が広がっていた。全く見覚えがない。あの川も、あの森も、あの動物も…
「一体…なんなんだ?」
「あれ?なーんでキミがいるのかな?」
不意に後ろから声が聞こえた。思わず振り返ると、そこにはあの洞穴で会った青年が立っていた。