みぽりんは人妻だったようです。   作:小名掘 天牙

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出オチです


マリー様は○○だったようです。

 しっとりとした土の薫りが漂う稽古場で、「ふっ」という小さな気合いと共に、白い右足がすっと首をもたげる。その純白の大木は、ほんの僅かなぶれもなく、稽古場の天頂に向けて綺麗な半円の軌跡を描いた。

 

「……」

 

それはまるで一本の巨大な樹氷の様であった。どっしりと地に根差した左足から、天へと一直線に伸びる右足。その太い幹は大雪(だいせつ)のごとき肉体に包まれ、例えどんな暴風に曝されようとも、ぴたりと天のみを指して、決して折れることはないだろう。

 

「……ふんっ!」

 

永劫すら感じさせる光景に、突如と走る裂帛の、しかし、不思議と可憐さを感じさせる鈴の鳴るような短い気合。直後、振り下ろされた白い(まさかり)に、大円の神域はずしんと腹に響く地鳴りで応えた。

 一瞬、二瞬……鳴動が通り過ぎ、静寂が道場を満たした。

 

「……ふぅ」

 

 静謐を破ったのは先の踏破の主。会心の出来であった自身の四股の出来栄えに、ぐっと腰を落として蹲踞の姿勢となった彼女(・・)は実に満足気な微笑を浮かべた。

 何処か爽やかな吐息を漏らしながら、彼女はつっと頬を伝った一筋の汗を清める様に大きく柏手を打つ。パンッパンッという軽妙な快音が、先の重厚な轟音を綺麗に洗い流していくようだった。

 

「「汗を拭かせていただきます」」

 

じっくりと自身の四股の余韻を噛み締めてから立ち上がった彼女、BC自由学園戦車道部隊長兼相撲部部長のマリーの身体を、駆け寄ってきた付き人の祖父江と砂部が手に持った赤と青の手拭いで丁寧に拭っていく。

 

「んっ もう大丈夫よ。ありがとう、二人とも」

 

粗めの木綿の感触がくすぐったかったのか、少し頬を染めながら、マリーは二人の付き人に微笑を向けた。

 

「それじゃあ、ぶつかり稽古を始めましょう!」

 

 祖父江と砂部の二人に礼を言ったマリーが青い横まわしをパンッと叩いて気合いを入れると部員一同が「はいっ!」と応えてまわし一丁になる。

 大会も近付きつつある今日、部員達の目にも強い闘志が浮かんでいる。大切なチームメイト達のその姿に部長のマリーは満足気に微笑んだ。が、

 

 

 

―この温室育ちがあああああああああああ!!!―

 

―何を山猿があああああああああああああ!!!―

 

 

 

直後に外から飛び込んできた声に、マリーの気炎は冷や水を浴びせられた。見なくても分かる。それはBC自由学園の風物詩を通り越して、最早伝統になりつつある外部組とエスカレーター組の争いの声だった。

 

「……」

 

その声に、マリーは思わず表情を曇らせる。何故あそこまでいがみ合い続けるのだろうかと。

 人間である以上、合わない人が居るのは仕方ない。誰にでも好き嫌いはあるし、嫌いな人間と仲良くなる必要もないだろう。しかし、だからと言っていさかいを通り越して憎み合うのはどうなのだろうか? そんな思いが相撲部の部長としてのマリーの胸に去来する。

 幸いなことに相撲部は外部生とエスカレーター組の仲が良い。普段の学校生活で交わり合うことこそ多くはないものの、部活の合間合間には外部生とエスカレーター組は区別もなく泥だらけになっており、武道を嗜む者の心得として、他の生徒に手を上げることもない。

 そんな部員の表情は明るい。その事に嬉しさを感じる反面、マリーは怒号が殴りあいに変わった屋外での争いにギャップを覚えてしまっていた。

 

「マリー様?」

 

そんなマリーの懊悩が顔に出てしまったのか、仕切り線の前で赤い横まわしを叩いて気合いを入れていた祖父江が心配そうに小首をかしげた。

 

「あ、ごめんなさい。それじゃあ、始めは私と祖父江からね。他の皆は順番に徳俵の周りで待つように。その間も見取り稽古は忘れては駄目よ?」

 

慌てて祖父江に謝罪すると、マリーは他の部員に指示を出す。その言葉に、また「はいっ!」と応えた部員達が徳俵を囲むようにして整列し終えたのを確かめると、マリーもまた白い仕切り線の前で腰を落として蹲踞をする。

 

「……」

 

そして、ふーっと大きく息を吐くと、ぎゅっと握った拳を固い土俵の上に突き立てた。

 臀裂に食い込み、きつく丹田を締め上げた青いまわしの感触に、心を引き締められたマリーはぐっと集中力を高めていく。目の前では側近の祖父江が自分と同じように真剣な表情で四つん這いの仕切りの体勢となっている。

 

「見合って見合って……始め!」

 

「「っ!!」」

 

そして、もう一人の側近の砂辺の合図と共にマリーと祖父江の二人は土俵をはたいて、相手へと突貫するのだった。

 

「はいっ!」

 

先手を取ったのは祖父江の方だった。すらりと長い両手をリーチを生かし、マリーを牽制するようにパパパンッと軽快に張り手を放ってくる。その祖父江の動きに、マリーは内心で「あら?」と首をかしげた。

 普段の祖父江は、その長い両手足を生かして、柔らかくもキレの良い投げに繋げられる四つ相撲を好んでいるからだ。そんな、側近の変化に、マリーは直ぐに成る程と頷いた。

 

(工夫したわね、祖父江)

 

確かに、祖父江の投げ技の切れ味は素晴らしいものだが、現状黒星先行とマリーには部が悪い。

 小兵ながらも、日々の稽古と食事で鍛え上げられたマリーの三角形の身体は重く、特に圧倒的な馬力で寄り切りを量産するずっしりとした下半身は、元々の身長の低さも相まって、重心をぴたりと大地に据え付け、持ち上げて投げ捨てることを極端に困難にしていた。

 そこを踏まえて、祖父江はこの戦法を取ったのだろう。長い両腕は投げ技向きだが、張り手に用いてみれば、非常に有効かつ広範な制空権確保の武器となる。後はじれたマリーが無理な突撃をしてきたところで、まわしに手を伸ばして勢いのままに投げる気なのだろう。

 並の力士であれば何も出来ずに完封されてしまうであろう祖父江の戦術にマリーは満足気に微笑んだ。同じ釜の飯を食べる部員の成長は何時見ても嬉しいものだ。

 

(けど……)

 

そして、マリーはくっと顎を引く。

 

(まだ甘いわよっ!)

 

「なっ!?」

 

頭上で祖父江の驚く声を聞きながら、重心を深く沈めたマリーはぐんと力強く土俵に蹴りを入れたのだった。

 原則という話になるが、格闘技というものは概ね体格の良い人間の方が有利となる傾向がある。それは、ある意味当然で、体格が良い時点でリーチの面で有利を取れるだけでなく、鍛えれば搭載できる筋肉の量でもアドバンテージが手に入るからだ。故に、原則として体格の良い人間に体格の良くない人間は勝つことができない。ボクシングなどはその原則に則り、極めて厳正に階級を管理している。

 では、階級が無差別級しかない相撲はどうなのだろうか? 体格の良い力士に小兵の力士では勝てないのではないかと問われれば、マリーは即座に首を横に振るだろう。

 小兵の力士は確かに体重とリーチで大きなハンデを負っている。しかし反面、低い身長は高身長の力士には決して辿り着けない低い重心という利点を持っている。

 地を這うほどの潜航。加えて、マリーの体重は日々の食事管理により、一回りも長身な相手とも遜色の無い数字を維持している。

 

「んっ!!」

 

「くっ!?」

 

かち上げすら届かない地底から、一気に浮上したマリーが祖父江の揺れる胸元に一気に潜り込む。その巨岩の重量感に苦悶の声を上げる祖父江。胸の谷間にドンッと額を押し付けられれば、後は勝負ありだった。

 ズザザザザッと音を立てて一直線に土俵際へと殺到するマリーと祖父江。途中、何度か祖父江がマリーの身体をいなそうとするも、確りと両足を開き、ずしっと極限まで重心を引き下げたマリーの身体はびくともしない。まわしでガッチリと絞り固められた大きなお尻と太ももが込められた力で膨れ上がり、逆に祖父江の身体を土俵外へと一息で運び出してしまったのだった。

 最後に残心として、姿勢を正したまま腰を落とし、諸手で祖父江の押し出すマリー。まるで、お手本のような綺麗な寄り切りに、下級生たちの感嘆ともつかない溜め息が道場で響いた。

 

「良い工夫だったわ祖父江。自分の得意な型に拘らず、新しい境地を開拓する探求心は大事ですもの」

 

「ありがとうございます、マリー様」

 

「さ、次は誰かしら?」

 

そんな、部員の尊敬の視線を浴びながら仕切り線に戻るマリーだったが、その思考は少し違うところに飛んでいた。

 

(戦車道だと、こうやって声を掛け合う機会も無いのよね……)

 

相撲部では外部生もエスカレーター組も無く、肩を寄せあい肌を合わせあう。そこまで物理的な距離が近ければ、外部生とエスカレーター組といえども自然と打ち解けていくものである。しかし、戦車道の場合、多くの生徒が戦車という極めて小さな空間で殆どの時間を過ごすことになる。そうなれば、同じ戦車という閉鎖された空間での結束のみが強くなってしまうのも、またある種の必然と言えた。加えて、これが普通の高校であれば同じ戦車内でのそれには劣れども、戦車部内でもある程度の結束は醸成されるものだが、BC自由学園は元々が仲が悪い高校だ。ただでさえ同じ戦車内での結束に反比例するように、別戦車の人間には壁を作りやすい中で、元々が敵の外部生とエスカレーター組が打ち解けることがあるだろうか?

 

(無理……よねぇ……)

 

恐らく誰もが辿り着くであろう結論に、マリーはほぅと溜め息を吐いた。

 

「お願いします!」

 

そんなマリーを前に、ハキハキと一礼をする外部生の部員。

 

「ええ。何時でも良いわよ?」

 

そんな、元気の良い新入部員に、マリーは笑顔を向けて、再び四肢に気合いを入れたのだった。

 

 

 

 

     ◆

 

 

 

 

 その日の晩、マリーは学園艦の自室で就寝前のケーキに舌鼓を打っていた。

 体格が大きな力を発揮する相撲という競技では、食事もまた大切な稽古の一つである。特に小柄なマリーは体重維持のためにも就寝前の食事は決して欠かさないようにしていた。

 もぐもぐと甘いケーキを咀嚼しながら、マリーはふむと思案顔になる。

 

(結局、物理的な距離感がどうにもならないのよね……)

 

元々、BC自由学園の戦車道のウィークポイントが外部生とエスカレーター組の結束というのは衆知どころか公知の事実である。当然、歴代の隊長達もそんな事は百も承知であり、それこそ、結束を呼び掛ける隊長訓示の言葉など、既に出尽くしてすらいることだろう。

 それでも、解決していない今、外部生とエスカレーター組の結束の解を精神論ではなく物理的な所に求めるのは、一つの手のようにマリーには思えた。が、ここで障害となってくるのが、矢張戦車道という競技の形態だった。

 

(何か戦車という固い箱を取り払う……いえ、せめて少しでも距離を縮める方法は無いかしら?)

 

まさか、戦車をオープンカーの様にするわけにもいかず、むむむっと口を尖らせるマリー。大好きなケーキを可愛らしくにらみつけていたその視界に、ふと色彩豊かなあるものが映った。

 

「……これよっ!」

 

普段見慣れたそれに、マリーは思わず立ち上がる。彼女の日々では当たり前に過ぎたそれに、かえって思案がいかないでいた。しかし、一度思い至ってしまえば、これ以上ない会心のアイディアに思えたのだった。

 

(そうと決まれば明日早速……)

 

自身のアイディアに心が弾むのを感じながら、マリーは祖父江&砂部の付き人コンビにメールで指示を出す。やがて返ってきた返信を確かめると、その内容にマリーは満足げな笑みを浮かべたのだった。なお、

 

「あら……」

 

その瞬間にポロリと溢れたケーキの欠片に、

 

「あーっ!?!?!?」

 

一人の力士の悲鳴が、夜の学園艦中に響き渡ったのだった。

 

 

 

 

     ◆

 

 

 

 

 翌日のこと。

 

「ったく、今日は更衣室前で集合なんて、一体どうしたんだ急に……」

 

外部生のリーダー格であり、戦車道の副隊長でもある安藤レナが部員の集まる更衣室の前でぼやくように呟いた。

 

「マリー様の指示に文句でもあるのか? 黙って従え」

 

そんな安藤の言葉に突っ掛かるのは、同じく副隊長の押田ルカ。彼女の言葉に他のエスカレーター組が頷きつつもひそひそと何やら耳打ちをしあう。その胡乱げな視線に、外部生の戦車道隊員達が視線を険しくし、両者の間にはにわかに剣呑な空気が漂い始めた。

 

「あら、また喧嘩かしら?」

 

そんな、一触即発の空気に割って入ったのは彼女達の隊長、マリーののんびりとした声だった。

 

「「マリー様!!」」

 

その声に、安藤と押田の二人がはっとなり、リーダーが我に帰った外部生とエスカレーター組も慌てて姿勢を正す。

 

((まいったな……))

 

そして、安藤と押田は同時に漏らした。

 元々、同じエスカレーター組の最上位としてマリーを尊敬している押田はもとより、外部生の安藤もエスカレーター組でありながら妙に邪気がなくおおらかなマリーを苦手としていた。と、言っても二人ともマリーを厭っている訳ではなく、むしろ、好ましい彼女の悲しむ姿を見ることを苦手としているのだった。

 普段のマリーは、まるで言い習わしの白鳥の様に表面では優雅に振る舞っているものの、こと外部生とエスカレーター組が争っている姿を目にすると、誰にも気付かれない程微かに悲し気な空気を纏うのだ。そして、そんなマリーの空気を、押田は幼少期からの教育から、安藤は多彩な女性遍歴からと、敏感に察知してしまい、今一居心地が悪くなってしまうことが多かったのだ。

 

(おい、一時休戦だ)

 

(ふん、良いだろう)

 

それ故に、安藤はこの場は矛を納める決断をし、押田もその言葉に同意する。が、そんな二人のやり取りを他所に、今日のマリーは何故か両者の争いを見ても機嫌が下降しない。むしろ、普段よりも楽し気な空気すら纏っている。

 

((おや?))

 

不思議に思い、思わず顔を見合わせる押田と安藤の前で、マリーが洋扇を振ると、祖父江と砂部の二人が徐に大きな荷物を取り出した。

 はて?と首を傾げる隊員達を前に、マリーの付き人の二人は手馴れた様子で段ボールを開き、中に入っていた色鮮やかな大量の布々を取り出す。

 

「マリー様、これは一体?」

 

隊員を代表して、一番近くに居た安藤が首を傾げる。普段であればマリーの行動を斟酌出来なかった安藤の不勉強を馬鹿にする押田も、この布の束の意図を理解出来なかったのか、隣で押し黙ったまま訝し気な視線をマリーに向けている。そんな二人と、その後ろで同じように疑問符を浮かべている隊員達を前に、正面に立つマリーは花咲く様な満面の笑みを浮かべ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見ての通りの新しいユニフォーム(まわし)よ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日一番の笑顔で、そう言い放ったのだった。

 

「「…………………………………………………………………………え?」」

 

 長い……実に長い沈黙の末に安藤と押田の口から出てきたのは一文字の母音だった。そんな二人を前に、マリーは嬉々として言葉を続ける。

 

「今までうちの戦車道部はずーっと仲が悪い事が弱点なのに、今まで一度もまとまることなくそのままだったでしょう? 私達の代だけじゃなくて、前も前も、その前も。だけど、歴代の隊長が何て言っても、今まで一つに纏まれなかったし。だから私考えたのよ。チームに一体感を持たせたいならみんなでまわしを締めれば良いじゃないって!」

 

「いやいやいや、提起した問題と結論が全くリンクしてないぞ!?」

 

晴れやかな表情と共に告げられたマリーの言葉に、先に回復した安藤が思わず怒声を上げる。隣の突っかかり役の押田の方もこの時ばかりは安藤と全く同じ表情をしていた。

 

「だって、心の距離を縮めさせようにも、言葉じゃダメだって今までの卒業生達の人達が証明してしまっているでしょう? だから、言葉がダメなら物理的な距離を縮めれば良いじゃないって気付いたのよ」

 

「だからって、何故まわしになるっ!?」

 

「戦車道部と相撲部の違いを考えたのよ。私達の部は外部生もエスカレーターの子も皆仲が良いもの。それに、肌と肌を合わせればタンクジャケットよりも距離は縮まるでしょう?」

 

「はぁ?」

 

小首を傾げるマリーに、安藤が思わず間抜けな声を上げる。後ろに居る隊員達も皆一様に同じ表情だ。

 そんな、他の隊員達を前に、マリーが自身のタンクジャケットの肩に手を掛ける。そして、

 

「そう、裸と裸のぶつかり合い! それこそがチームの仲を深める鍵だったのよ!」

 

ばさりと音が鳴り、ひらりと宙を舞う彼女のタンクジャケット。その光景を呆然と見詰める隊員達のまえで、愛用のまわしで身も心も引き締められたマリーが白い裸体を惜しげもなく晒しながら満足そうに頷いた。

 

「まわしを締めて、身も心も引き締めて、チーム一丸となれば良い。ほんと、何でこんなに簡単な事に今まで気が付かなったのかしら」

 

そんな、マリーの後ろで、側近の祖父江と砂部も当然のようにまわし一丁になる。その光景を見て、漸く隊員たちはマリーが本気であることを理解した。

 

 

まわし

 

 

まわし……

 

 

まわし!?

 

 

再稼働した隊員達の脳内が、唯一つのワードを反芻する。

 裸体も何も何のその。幾ら男性の目が無いとはいえ、当然の如くまわし一丁。無限軌道杯も、今後の大会も全部まわし。まわし、まわし、まわし。学校のあだ名は多分BCまわし自由学園。大学に進学してからの自己紹介で「BC自由学園? ああ、まわしの」と言われる事は請け合いだ。

 諍いこそあれど、開放的とも言われるBC自由学園。しかし、だからと言って、ここまでフリーダムな格好を望む女子生徒が存在するだろうか? 否、居る訳が無い。一体何が悲しくて、高校時代という一度きりの青春をまわし一丁で過ごさねばならぬのか。そんな青春は色々な意味で絶対に認められない。とはいえ、戦車道部の外部生とエスカレーター組の仲が悪ければ、何時かマリーがこの話(まわし)を強行しないとも限らない。つまり、今逃げ切るだけでなく、今後も再発を防ぐ必要がある訳で。その為には……

 

「「待ってくださいマリー様!!」」

 

隊員一人一人に名前の刺繍されたまわしを配ろうとするマリーと付き人二人に、押田と安藤が声を掛ける。その声に振り返ったマリーの前で押田と安藤は互いの肩を固く固く抱き寄せて見せた。

 

「「見ての通り、私達は凄く仲良しです!!」」

 

そう言って、ニッと笑う押田と安藤の二人に、マリーは「あら?」と首を傾げる。そんなマリーを見て、押田と安藤は畳みかける様に後ろを向いて他のチームメイト達に「「そうだよな!?」」と声を掛ける。

 

「「「「「「「「「「はい、私達は凄く仲良しです!!!!」」」」」」」」」」

 

その声に、後ろの外部生はエスカレーター組を、エスカレーター組は外部生と肩を組んで引き攣った笑顔を浮かべる。

 

 

 

一つになった。

 

戦車道部が一つになった。

 

かつて、歴代の隊長達があれだけの言葉を尽くしてもなお纏まらなかったBC自由学園の戦車道部がまわし回避のために一つになっていた。

 

 

 

「あら、そうだったの?」

 

そんな隊員達の姿を見て、マリーが不思議そうに首を傾げる。

 

「「「「「「「「「「「「ええ! もちろん!!」」」」」」」」」」」」

 

そんなマリーに、副隊長以下隊員一同が大きく首を縦に振る。

 

―通るか?―

 

―通ったか?―

 

―通れっ!!!!―

 

最早祈るような気持ちで正面のマリーを見詰める戦車道部のメンバーにとって、永遠とも思える時間が過ぎた頃、小首を傾げたマリーが徐に口を開いた。

 

「そう、じゃあ、今日は止めておこうかしら?」

 

((((((((((((と、通ったぁ……))))))))))))

 

マリーのその言葉を聞いて、隊員達は漸くデッドゾーンから逃れられたことを悟る。とはいえ、それを表には出さない。何せ、今のマリーはあくまで『今日は(・・・)』と言ったのである。つまり、この先チームが一体となっていないと見れば、またもあの恐怖の衣装(まわし)が顔を出すかもしれないのである。

 それを回避し、青春に立ちはだかる魔王(まわし)を永遠に封印しておくためには……!

 

(無限軌道杯、絶対に勝ち上がる以外に道はない!!!)

 

先日、学園のOGがやってきて、チーム一丸となる様に喝を入れて帰った事があったが、それでも何処か白々しかった生徒一同の心が、今度こそ本当に一丸となったのだった。尚、

 

「あ、でもせっかく持ってきたんだし、予行演習も兼ねてあなたたち二人にはまわしを試してもらおうかしら?」

 

「「え゛?」」

 

一旦まわしは引っ込めた筈が、予行演習という名目で『押田』と『安藤』と書かれたまわしを取り出させるマリー。その言葉に、再び凍り付く押田と安藤。だが、時既に遅く、マリーの言葉に頷いた側近二人(祖父江と砂部)新しいユニフォーム(まわし)を持って、押田と安藤に襲い掛かる。

 咄嗟に蟷螂拳と空手の構えを取るが迎撃に先んじて床板へと引き摺り倒されてしまう。

 

「「お、おいお前達助けっ」」

 

制服を脱がされながら、それでも仲間に助けを求める押田と安藤。

 

「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」

 

しかし、皆、我が身が可愛いもの。

 押田と安藤の必死の叫びにも、隊員達は己に火の粉が降りかからぬようにと一斉に視線を背けてしまう。

 矢張り、BC自由学園の結束はまだまだ遠い事にようであるのだった……。

 

 

 

 

 

ちゃんちゃん




お久しぶりです。小名掘天牙です。
今回は個人的に最も下半身をまわしで締め上げたいガルパンキャラナンバー1のマリー様は力士だったようです、でしたw

あの太ましい下半身と柔軟性に富んだ身体。止まる事のない間食。それにも関わらず高い身体能力と蟷螂拳をやっている押田ですら持ち上げられない体重。そこにBC自由学園の一致団結を結び付けた結果、合理的な解を導き出したと自負しております(強弁

楽しんでいただけましたら幸いです。ではではノシ
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