ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》- 作:地水
この世界で何が起きているのか、それを知るにはいまだ情報は足りない。
果たして宝を狙うものが手にするのはいったいなんなのか……。
ネオライダーの襲撃から後日。
あの時の騒ぎのせいでその日調べられないと判断した一同は一度出直すことにした。
サクラはモコナと共に買い物へ出かけていた。
栄次郎に頼まれたことであり、彼女は自分ができることならと引き受けた。
現在士達他のメンバーは修業の稽古、羽根の情報収集など勤しみ、今サクラとモコナが外で歩いていた。
「サクラ、買い物大丈夫?」
「うん、メモに書いてあるものは大体買ったよ」
「サクラえらーい!」
買ったものをいれた大きな紙袋を両手で抱えながら写真館への帰路についていた。
そこへ、サクラとモコナの視界に入ってきたものがあった。
それはキョロキョロとあたりを見回す、サクラより年上の夏海と同じくらいの一人の女性だった。
赤みがかった茶髪と真紅色の瞳が特徴のその女性は、一枚の写真を見せながら通行人に話しかけていた。
彼女は尋ねた通行人からいい返事が聞けなかったのか浮かない顔をすると、頭を下げて離れていった。
「なんだろう、あの人」
「なんだか気になるなぁ」
モコナとサクラは不思議そうに彼女を見ていた。
彼女は顔を下に向けたまま歩き出していく。
その先には交差点……信号は赤信号、行きかい始める自動車達。
だがそんなことも気づかず、進んでいく女性……危ないのではないか?
そう思ったサクラは走り出し、彼女の服をつかんで引き留める。
「―――あぶない!」
「え?きゃっ!?」
はっと我に返った女性は、自分が今置かれた状況に気づく。
次の瞬間、目の前に通り過ぎるいくつもの自動車。
危うく自分が轢かれるところだった状態に気づき、呆然とする彼女へサクラが話しかける。
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ……うん、大丈夫、私は大丈夫よ」
「怪我しなくてよかったねー」
サクラの肩に乗ったモコナが女性の顔を覗き込む。
白いふわふわの生き物が喋って来て少し戸惑うも、女性はサクラに感謝の言葉を述べる。
「助けてくれてありがとう。お礼は何て言ったらいいのか」
「いえ、お礼なんていいですよ!ただ危なかったので助けただけです」
「それでも、感謝したいのよ」
助けた事に関して褒められるも謙遜するサクラ。
そこへモコナがしんみりとした声のトーンでかけてくる。
「……お姉さん、寂しいの?」
「えっ?」
「モコちゃん?」
「モコナ、感じるよ。お姉さん、隠してるけどそれでも伝わるくらいに」
モコナはいつもとはおちゃらけた雰囲気はなりを潜め、彼女へと言葉を紡いでいく。
サクラは何故モコナがそんなことを言い出したのか理解した。
モコナには"人の心を感じ取る力"を持っており、自分自身も以前そのことで励まされた事がある。
この人にも、私と同じく寂しさを隠し通している……そう思ったサクラは意を決して声をかける。
「あの、私でよければ話してみませんか?」
「あなたに…?」
「その、なんていうか、私でも力になれることがあるなら」
「ふふっ、ありがとう。そんなこと言われたの、初めて」
女性は思わず笑顔になり、サクラへ握手を求める。
サクラも伸ばされた手を握り返し、互いに自己紹介を始める。
「私はサクラっていいます」
「サクラちゃんか……うん、覚えた。私はハル、ハルって呼んでね」
名前を聞いて一瞬逡巡するも、すぐに笑顔を向ける茶髪の女性……『ハル』。
サクラ達に出会った彼女は可憐でありながらどこか儚げな笑顔を向けるのであった。
―――――
頼打地区内にある森の中、そこには士と黒鋼の姿があった。
いくつもの張り巡らされたロープを設置し終えた士が黒鋼に尋ねる。
「おーい、黒鋼。ほんとにいいのか?」
「構わん、やってくれ」
黒鋼は音撃棒・翡翠を構え、様子を伺う。
始めろと言わんばかりの空気を察した士は、ロープの一本をナイフで切る。
結ばれたロープは吊り下げられた重りに従って引っ張られていき、仕掛けられた木の剣が黒鋼へ向かって飛んでいく。
木剣が黒鋼へ当たろうかとした距離に入る寸前、両手に持っていた翡翠が動く。
「―――はぁ!!」
黒鋼の振るった翡翠が木剣をはじき落とす。
その後も飛んできた木剣を叩き落としていく。
流石に元の世界で忍びとして戦国の世を生き抜いてきた事もあっての動きの良さに、士は感服の言葉を覚える。
「なるほど、それが忍びってやつなのか。大した強さだ」
「だが、これを使いこなすにはまだまだ足りない。それこそ、"修業が足りない"」
「どうしてだ?お前は結構強いんじゃんかったのか」
「鬼の力、だったか。ありゃ凄いが同時に力の使い方を間違えると魔道に落ちかねない」
迫りくる木剣を防ぎながら、黒鋼は士との会話を続ける。
……聞けば、鬼の力は魔化魍と呼ばれる妖怪を倒すために人が己の肉体を鍛えて手にいれた代物。
だがしかし、鍛える事をせずにして侮ったり怠慢したりしているといずれは魔の道に落ちかねない。
実際、士も響鬼の世界でとある鬼が魔化魍になった事を既に知っている。
鬼の力を手にして満足している場合ではない、そう決断した黒鋼は、響鬼にカメンライドした士を付き合わせ、こうして鬼の力を確かめるための修業を行わせていた。
「要するに、慢心せず立派な鬼としての修業をするために付き合えってことだろ?」
「まあな、お前、俺達と会ったときに紫の鬼に変身していた。お前なら多少なりとも鬼ってのが何なのかわかるはずだ」
「まあな……安心しろ、これでも音撃道の師匠を務めた経験がある。みっちりコーチしてやるから根を上げるなよ」
「ヘッ、面白れぇ!次だ、次!」
士の余裕綽々な言葉に黒鋼は正面から迫ってきた木剣を両手に持つ翡翠で叩き伏せながら、次の修業へと移っていった。
―――――
同じ頃、頼打地区のとある街道。
小狼、ファイ、ユウスケは情報収集を終えて合流し、一息をついていた。
「黒鋼さん、士さんを連れて何処に行かれたんでしょう」
「さてね、でも黒ぴーのことだから問題ないでしょ」
「それにしてもサクラちゃんの羽根について何にも情報がないんだよな」
ユウスケは疲れた表情を浮かべながら羽根についての情報が収穫がないことに呟いた。
以前から記憶の羽根に関するそれらしい噂や伝統がないと小狼から聞かされていたが、ここまで情報が出ないとなると意図的に隠されている可能性が高い。
「一体、何処にあるんだか」
「せめて知ってる誰かに出会えればいいんだけどねー。オレ達、この世界詳しくない上にネオライダーが邪魔してくるんだよねぇ」
「そういえば、この世界で手に入れたもの中にこれが……」
小狼が手にしていたのは一冊の本。
タイトルは"仮面ライダーという名の仮面"、仮面ライダーと呼ばれる戦士達が不死の怪物達との闘いを描いた内容というだった。
一見、ただのSF小説に見える……だが、士やユウスケがこれを見た時、彼らの反応が違った。
何故ならば、
ユウスケは仮面ライダーという名の仮面の本を見ながら答えた。
「多分だけど、この世界にもいると思うんだ。仮面ライダーブレイドが」
「確か士さんの変身できる仮面ライダーの一人、でしたよね」
「ああ……ブレイドがいるなら、この世界の事について聞けるんじゃないか」
G3ユニットに続いて、この世界での手掛かりになりうる存在を見つけたユウスケと小狼。
とりあえず、と思ったファイは二人に言った。
「んじゃ、とりあえずその著作者……本を作った人のところに話を聞きに行きたいね」
「この本の著作者の名前は【白井虎太郎】という方に会ってみますか?」
「よし、とりあえずそこから調査してみっか!」
小狼達三人は、仮面ライダーの存在を知っているであろう【白井虎太郎】に会うべく、行動を開始する。
―――――
ハルに案内されて、近くの喫茶店にやってきたサクラ。
サクラとハルはカフェオレ、モコナはたらこスパゲッティを頼むと話に花を咲かせていた。
「じゃあサクラちゃんは別の国からやってきたんだね」
「はい、探し物をしているんです。とても大切なものを」
「探し物?この国にあるの?」
「わかりません、ただ少しでも可能性があるのなら探します」
まっすぐな眼差しでサクラは答える。
その目を見て、ハルは納得したような表情を浮かべながら言葉を続ける。
「……一緒だね、探し物をしているってのは」
「ハルさんもですか?」
「私は人探しをしているの。とっても大切な人」
遠い目をしながらハルはサクラに語っていく。
……かつて、共に暮らし、共に時間を過ごしてきた人がいた。
その人はある日、何処かへ行ってしまってそれ以来帰ってきてない。
一体、今はどこで何をしているんだか……。
サクラへ向けて苦笑するハル。そこへたらこスパゲッティを食べ終えたモコナが言葉を紡ぐ。
「モコナ、感じるよ。ハルの心、あったかいよ!」
「……え?あったかい?」
「モコナわかるよ、ハル、その人の事好きなんでしょ!」
「―――ふぇ!?」
モコナに言われて少し呆然としたのち、顔を真っ赤にするハル。
彼女は席から立ち上がり、悪口をまくし立てる。
「そんなはずない!あんな奴好きでもなんでもないよ!いっつもいっつも何処かに行っちゃうし、自分の趣味しか興味ないくせに人の趣味には口出すし、いっつも小馬鹿にした態度とってそのくせ変なところで気が回すし…!!」
「落ち着いて、落ち着いて!」
気が動転した彼女をサクラは宥めて、落ち着かせる。
ハッと我に返ったハルは、目の前にいるサクラにあまたを下げて謝罪をする。
「大丈夫ですか、ハルさん」
「サクラちゃんありがとう……そしてごめんね?」
「でも、そこまで悪口を言うなんて……それほど気にしている人なんですよね」
「まあね……曲がりなりにも、一緒に育ってきたんだよ。アイツとは」
そう言いながら、ハルは一枚の写真を差し出してサクラに見せる。
そこに写っていたのは茶髪と緑色の瞳を持つ一人の男性。
サクラとモコナは写真を見て、ハルに尋ねる。
「ねぇねぇ、ハル。この人のお名前は?」
「……ツカサ、
「幼馴染……」
サクラはハルの言った『幼馴染』という単語について反応をする。
かつての自分にもそんな人がいたような気がする……しかし、思い出せない。
自分の記憶が揃ってないせいで自分の過去にどんな人と知り合ったのか覚えていない。
しかし、それでも過去の自分が親しくしていた大切な人がいたはず……。
サクラは写真を返すと、ハルに笑顔を向けてこう言った。
「ハルさん、見つかるといいですね。そのツカサさんって人に」
「うん、諦めたくないもの。アイツも諦めが極端に悪かったんだもの。徹底的に探し出してやるんだから!」
元気になったハルを激励するサクラ。
そんな彼女達二人をモコナはうんうんと頷いてしみじみと感じ取る。
「うんうん、友情っていいものだね」
サクラとハルは意気投合し、会話を続けていく。
とある喫茶店【ハカランダ】での出来事であった。
―――――
とある廃工場。
そこでは二人の仮面ライダーが相手に激闘を繰り広げていた。
蟹の意匠を持ったメタルオレンジのライダー『仮面ライダーシザース』。
ネオライダーに所属する仮面ライダーだが、目の前にいる敵を倒すには力が足りないでいた…。
シザースの目の前に立つのは、赤い複眼とヘラクレスオオカブトの模した銀色の仮面を持つ、蒼銀の仮面ライダー。
……仮面ライダーブレイド。
ブレイドは剣型カードリーダー・醒剣ブレイラウザーを構え、シザース達へ斬りかかっていく。
「くっそー!お前を倒せば俺達のチームは認められて立派になるんだよ!大人しく倒されろー!」
【STRIKE-VENT】
シザースは右腕に蟹の腕を模した巨大な鋏・シザースピンチを装着すると、ブレイドへ殴り掛かる。
ブレイドはシザースの攻撃を交わすと、ブレイラウザーで何度も斬り付けていく。
「はぁ!」
「あいたっ!?あいたたたたた!!?いってーなおい!?」
何度も斬り付けられ、最後には飛び蹴りをもらって吹っ飛ばされるシザース。
廃工場の壁を突き抜け、地面へと叩きつけられたシザースは何とか立ち上がりながら一枚のカードを引き出す。
「くそぉ、お前なんかな!お前なんかけちょんけちょんにやっつけてやるぜ!!」
【FINAL-VENT】
「行くぜ、キャン吉!」
人間大の蟹型モンスター『ボルキャンサー』を呼び出したシザースは、ボルキャンサーの両腕の鋏に足をかけ、乗って空高くジャンプする。
そのまま高速で空中前転しながら体当たりする『シザースアタック』を発動し、ブレイド目掛けて突っ込んでいく。
対してブレイドは、一枚のカードをブレイラウザーにスキャンする。
【TIME】
「な、なにぃ―――」
ブレイドは"タイムスカラベ"を発動、前転しながら突撃してくるシザースを時間停止させると、自分は射程圏内から離れて避難をする。
再び時は動き出し、シザースの必殺の一撃は勢いよく地面へと炸裂する。
舞い上がった土煙が晴れ、そこに現れたのは上半身だけ地面へ埋まってしまったシザース……ブレイドは悲惨な様子の彼を放っておいて、"マッハジャガー"の高速移動によって何処かへと消えていく。
【MACH】
ブレイドが立ち去った後、慌ててやってきたボルキャンサーがシザースの足を引っ張って救出した。
ぜぇはぁと息を切らすシザースは、既にこの場にいない敵の背姿へ向けて恨みをぶつける。
「おのれ!次こそはお前を倒してやるぞぉぉぉ!あいたったた、キャン吉もっと優しくして」
自ら必殺技で自爆した痛みに耐えながらシザースはキャンサーに抱えられて去っていった。
その戦いを見ていた男がいた。
ベージュ色のコートと帽子をかぶり、眼鏡を光らせるその壮年の男性は意味ありげな言葉を呟いた。
「なるほど……ここが新しくディケイドがやってきた世界か。末恐ろしいものだ」
男はそういうと、背後に灰色のオーロラを呼び出し、その場から消える。
―――その男の名は『鳴滝』。ディケイドを世界を破壊する悪魔と称して憎む謎の男である。
どうも地水です。この話は若干苦戦した感がある←
新キャラ登場、その名はハルちゃん!
どうやら彼女は幼馴染を探している様子、一体どこにいるのやら。
サクラと仲良くし馬が合う彼女たちがどんな出会いを生み出すのか。
黒鋼は鬼の修業、鬼の力を見抜いた彼はライダーに詳しい士と共に修業へと足を踏み入れる。果たして何を見つけることができるのか
修業のモチーフは某豪快者のブルー回。
虎太郎!ハラカンダ!そして仮面ライダーブレイド!何かと今回は剣成分がたっぷり!
最近動画サイトで配信しているせいですかね!?(執筆現在2020/05/06)
いよいよもって鳴滝登場、ディケイドを憎む預言者が次に仕掛けるのは一体……。
次回、あの人がライダー変身!?にドッキドキ!!