ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-   作:地水

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 開戦、激戦、接戦。
伝説の大自然の戦士の参戦に寄り、仮面ライダー達のバトルが白熱。
ネオライダーを打ち倒していく中、そこへ『乱入者』が現れる。

激情の狼煙は上げられた。


第25話:再会のソウフウ

 同時刻、ライオトルーパー達を蹴散らした2号はクラブファンガイアとカクタスオルフェノクを相手に圧倒していた。

殴りかかってくるカクタスオルフェノクの攻撃を避け、胴体目掛けて蹴り飛ばす。

ハサミで断ち切ろうとするクラブファンガイアの一撃を受けとめ、そのまま膝蹴りを叩き込んで破壊。

どちらも戦闘に支障が出るほどのダメージを負って満身創痍な状態の所へ、2号は静止の言葉を述べた。

 

「おっと、そこまでにしておけよ。サボテンにカニ公」

 

「「ぐっ……!?」」

 

「これ以上やるなら、容赦はしないぞ? さっきはもう暴れられない程度にしておいたが、ここから先は命のやりとりだ」

 

2号の言葉を聞いて二体の怪人達は顔を見合わせると、背を向けて逃げ出した。

主力戦力である怪人達が逃げ出した姿を見たライオトルーパー達も後を追うように立ち去っていく。

自分の敵性勢力である黒服と怪人達が逃げたのを確認した2号はやれやれと言った表情で嫌味を漏らした。

 

「まったく、甘い所も本郷から移っちまったか? 我ながら嫌になるなぁ」

 

両腕を振るいながら先程の自分らしからぬ甘さに身の毛のよだつ思いをした2号。

もしかしたら小狼とかいう少年があの本郷(バカ)と彷彿させたからかもしれないと思案する。

自分の甘い部分を確認した2号へ叫ぶ声が聞こえた。

 

「一文字さん!」

 

「「「ライダー!!」」」

 

「うん? おお、大丈夫だったか」

 

物陰から顔を見せたサクラと子供達の顔を見つけた2号は、安堵の言葉を漏らした。

怪人達も去った今、彼らの元へと向かおうとする……その時であった。

 

「……!?」

 

「一文字さん……?」

 

「来るな! 隠れろ!!」

 

異様な殺気と熱量を感じ取り、咄嗟に振り向く2号。

そこで目にしたのは、―――爆炎に包まれた、6本角の異形であった。

 

 

~~~~~

 

 

 ディケイドとナイトが『立ち上がった火柱』に気付いたのは、すぐ傍だった。

二人が駈けつけるとサクラ達を守るように拳を構える赤い瞳の仮面の戦士――2号と、相対する人ならざる異形の戦士。

恐らく前者の方が一文字の変身した姿だとディケイドはすぐさま察した。

 

「士さん、あれって……!」

 

「ああ、サクラ達を守ってるのは一文字隼人……仮面ライダー2号だ。だがもう一人は……」

 

ディケイドは2号と戦っている相手の姿に視線を向けた。

全てを焼き尽くさんと灼熱の炎を噴き出しているのは、溶岩を思わせる罅割れた赤い装甲。

黄色の複眼に6本へと展開した角、そしてなにより龍を思わせるその姿にディケイドは見覚えがあった。

 

「仮面ライダー……アギト?」

 

ディケイドが口に漏らした通り、そこにいたのは『仮面ライダーアギト』。

あの姿は"バーニングフォーム"と呼ばれるアギトの強化形態であり、高位のアンノウンすら渡り合える火力と有り余る力によって暴走する危険性を孕んだ両極端な姿だ。

そのアギト・バーニングフォームは上半身から燃え盛るプロンミネンスを用いて、火炎攻撃を2号へと放っている。

素手である2号は回し蹴りによる風圧で何とか凌いで入るものの、辺り一帯を燃やし尽くさんとしている勢いで身体からプロンミネンスを噴き出している。

このままでは2号はもちろん、サクラ達にまで被害が及ぶ……そう思ったディケイドはナイトに向かって叫んだ。

 

「小狼、お前はサクラ達を守れ! 俺が加勢しに行く!」

 

「わかりました!」

 

ディケイドの言葉を聞いたナイトはすぐさまサクラ達の元へ走っていき、ディケイドはライドブッカーを構えて狙いを定めた。

 

一方、謎の乱入者――アギト・バーニングフォームフォームに苦戦を強いられている2号。

燃え盛る炎に押され、劣勢を強いられる2号。

 

(チッ、流石にきついな……かといって、ここで引き下がるわけにはいかないが!)

 

自身の腕や脚を振って炎を吹き飛ばしている2号は、ふと後ろへと視線を向ける。

後方には自分の戦う背中を見つめるサクラと子供達の姿があった。

―――負けられない、倒れてはならない、彼らを守れるのは俺しかいない。

そう思った2号はアギトから繰り出された炎を振り払うと、握りしめた拳を構えて、振り放った。

 

「オラァァァ!」

 

「ぐっ!?」

 

「もういっちょぉ!!」

 

アギトの胴体へ鋭く突き刺さる2号の『ライダーパンチ』、そして間髪入れず放たれた『ライダーキック』。

ものの見事なコンボにアギトの体躯は一瞬揺れる……これならどうだ、と2号は仮面の下で不敵な笑みを浮かべる。

だが、アギトは踏みとどまると、2号の足を掴み、そのまま逃がさんと勢いで炎が噴き出し始める。

しまったと思った瞬間、アギトの赤い装甲から炎が放出され、2号をを飲み込まんとした……。

 

【ATTACK-RIEDE…BLAST!】

 

「それ以上だと黒炭になっちまうぞ、ハッ!」

 

だがその時、アギトへ向けて放たれたいくつものディケイドブラストによる光弾が炸裂。

ダメージを受けて2号を開放し、倒れようとする2号を何者かが抱き留めた。

見ると、ディケイドが2号の肩を支えており、破壊のために全てのライダーを知っている彼だからこそその名を呼んだ。

 

「大丈夫か、2号ライダー?」

 

「お前は、まさかさっきの……?」

 

「助太刀するぜ。まだ相棒と再会しちゃいないんだろ?」

 

「へっ、どいつもこいつも……足引っ張るんじゃねえぞ」

 

目の前に立ちふさがるアギトへ態勢を立て直すディケイドと2号。

敵が二人に増えたアギトは炎を纏わせた拳を振り放ち、ディケイドと2号を攻め立てる。

迫りくる火炎攻撃を掻い潜り、ディケイドは2号と共にアギトへと接近戦を仕掛ける。

二人が避けた炎は周辺に燃え移って焼き尽くしていき、ついにはサクラ達のいる物陰へ飛んでくる。

 

「「うわっ!?」」

 

「きゃっ!?」

 

「危ない……!」

 

迫りくる炎を庇うようにサクラは子供達の前に出る。

子供達を庇うサクラへと炎が飛んでいく……だがそこへ、電子音声が鳴り響いた。

 

【GUARD-VENT】

 

「ハァッ!」

 

電子音声が鳴り響いた直後、サクラの前に躍り出たナイトが漆黒のマント・ウイングウォールで炎を防ぐ。

誰も傷一つ追わなかった事を恐る恐る確認したサクラは目の前に立つナイト――変身した小狼に向かって叫んだ。

 

「小狼君!」

 

「もう大丈夫です、姫」

 

「うん!」

 

小狼が変身を遂げたナイトの登場に、サクラは勇気づけられ笑みをこぼした。

戦う力のないサクラ達を守るように、アギトとの戦闘をディケイドと2号に任せることにした。

 

一方、ディケイド・2号対アギト・バーニングフォーム。

ディケイドのライドブッカー・ソードモードによる剣戟と2号の巧みな蹴り技により、ようやく互角に渡り合うようになった。

二人相手では不利だと判断したアギトは紫色に染まったベルト・オルタリングに両手を翳すと、専用武器・シャイニングカリバーが出現。

形に閉じた状態・エマージュモードから薙刀状のシングルモードに変形させると、ディケイド達に斬りかかる。

 

「ハァッ!」

 

「くっ!? コイツ!」

 

「手強い……!」

 

2号と共にシャイニングカリバーを受け止めるディケイドだが、アギトから繰り出される腕力により簡単に押し切られる。

よろめきながらもなんとか猛攻を止めようとする二人だが、アギトはシャイニングカリバーの刀身に炎をともすと、それを思いっきり振りかざそうとした。

 

「タァ!!」

 

「まずい……!」

 

ディケイドはアギトが繰り出そうとする技に冷や汗をかいた。

アギト・バーニングフォームの必殺技の一つである『バーニングボンバー』……炎の刃で切り裂く大技を飛ばすことで二人に目掛けて放たれた。

アレをまともに食らえばひとたまりもないと察したディケイドは咄嗟に一枚のカードを装填する。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DECADE!】

 

「ハァッ!!」

 

ディケイドが繰り出したのは、数枚の金色のカード型エフェクトをくぐって放つ必殺キック『ディメンションキック』。

アギトの繰り出したバーニングボンバーとぶつかり合い、暫しの間拮抗する。

だが、ディケイドのディメンションキックを押し切ろうとアギトが叫んだ。

 

「―――うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「なっ、があああああああ!?」

 

ディケイドをシャイニングカリバーで上空へ打ち上げたそのまま吹っ飛ばされる。

残された2号へアギトはその複眼で睨みつける。

 

「邪魔者はいなくなった……おまえを倒す」

 

「チッ、俺が狙いか!」

 

2号一人だけとなった今、アギトはゆっくりと2号へと迫る。

自分が狙いだと判明した今、2号は身構えた……アギトがシャイニングカリバーで斬りかかろうとした瞬間。

―――その時であった、2号を守るべく飛びかかる存在がいたのは。

 

「ハァ!!」

 

「なっ!?」

 

力任せに放たれたキックはシャイニングカリバーを蹴り飛ばし、明後日の方向へと飛んでいく。

何が起きたのか、と戸惑ってる2号の元へ空中から降り立つのは――自身と酷似した姿を持つ、飛蝗を彷彿とさせる仮面の戦士・仮面ライダー1号。

1号は顔を向けると、その名を口にした。

 

「一文字……」

 

「本郷……」

 

「ごめん、遅くなった」

 

「フッ、いいさ。それより、この暴れん坊をどうにかするぞ」

 

申し訳なさそうにする1号と、笑って許す2号……二人は互いに顔を見合わせると、目の前にいる豪炎の戦士へと向き直った。

アギトは両腕を構えて1号と2号へ突撃仕掛けてきた。

だが1号と2号は一瞬互いの顔を見合わせ、そして襲い掛かってきたアギトの両腕を掴む。

 

「「ハッ!!」」

 

タイミングよく二人で投げ飛ばし、地面へと叩きつける。

多少なりともダメージを追いながらも起き上がるアギトだったが、そこで見たダブルライダーによるライダーパンチを繰り出す光景に驚く。

 

「「タァ!」」

 

「ぐっ!?」

 

ダブルライダーの息の合った一撃を食らい、退くアギト。

再び身体から発する炎を繰り出そうとするが、そこへ身体を拘束するように赤い鞭と触手が飛んでくる。

サガのジャコーダービュートと歌舞鬼の鬼鞭術がアギトを拘束していた。

 

「おっと、そうはさせないよ」

 

「今だ、小野寺! 門矢!」

 

二人が叫んだと同時にアギトの耳に聞こえてきたのはけたたましい羽音。

上を見上げるとそこにはゴウラムに乗ったディケイドと、ゴウラムの手足にぶら下がったクウガの姿があった。

 

「吹っ飛ばされた直後に助かったぜ、ゴウラム……ユウスケ!」

 

「ああ、同時攻撃だ!」

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DECADE!】

 

ディケイドとクウガはゴウラムから飛び降りると、そのままアギト目掛けて足を突き出す。

それを見た1号・2号も地面と蹴って飛び上がり、空中へ舞う。

 

「「「「ハァァァァ!!」」」」

 

『ディメンションキック』、『マイティキック』、そして『ダブルライダーキック』。

4人の仮面ライダーの繰り出した必殺の一撃はアギトへと飛んでいく。

アギトは己の拳に炎を纏わせて繰り出す『バーニングライダーパンチ』で相殺しようとする。

だが、アギトのバーニングパンチをも押しのけ、4人のライダーキックが思いっきり蹴り飛ばした。

 

「ぐぅぅぅぅぅ……がぁぁぁ!!!」

 

地面から足が離れ、一回転二回転と地面を転げながら倒れたのちに爆発に巻き起こって巻き込まれたアギト・バーニングフォーム。

地上へと降り立ったディケイド・クウガ・1号・2号と、サクラ達を連れたナイトと合流を果たしたサガ・歌舞鬼、合計7人のライダー達はその姿を見ていた。

 

「……ハァ、ハァ、ハァ……!」

 

爆炎の中から這い出てくるのは赤い装甲と黄色の相貌。

だが、揺らぐ陽炎と共にアギト・バーニングフォームの姿が変わった。

赤い装甲は黒を基調としたボディへと変わり、黄色の複眼は青い複眼へと変わる。

 

―――やがて先程とは全く異なる姿へと変貌して現れたのは、漆黒の仮面の戦士。

 

青い双眸がディケイド達を見つめる中、ふと視線を止める。

ナイトが庇うサクラの姿を見て、少しの間彼女を見つめていた。

 

「……」

 

「……えっ?」

 

「アイツ、サクラを見ている?」

 

ナイト――小狼だけは『アギトだった存在』が見つめるサクラの視線に気付いた。

何故サクラにだけ興味を示したのか……それを問いただそうとした時、漆黒の仮面の戦士は炎に飲まれて消えていった。

尋ねる相手が姿を消して、やり場のない不安を抱えたナイトをディケイドは手に肩を置く。

 

 

ネオライダーの他にも戦わなければならない『存在』を悟ったディケイド達。

1号と2号の出会いを得て、ようやく最初の羽根を手にしようとする今、一抹の不安を感じるのであった。




 祝・ディケイドクロニクル25話を迎えました、地水です。

ネオライダーの刺客を返り討ちにした2号の前に現れたのは、まさかのアギト・バーニングフォーム。
2号とディケイドがタッグを組んで挑むも、苦戦を強いられる……。

そんな中、本郷/1号と再会、祝ダブルライダー再結成。
ディケイド達と協力共闘、なんとかしてアギトを退かせるものの……お前は一体何者だ!?

察しのいい方はお分かりの通り、1話冒頭の彼です。
再登場までどこまでかかってるんだ……。
謎の仮面ライダーの正体は一体……。


次回、Wライダーとの別れ、そして新たなる出会い。

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