ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-   作:地水

31 / 34
 ネオライダーと相為す組織ライダーアライアンスと接触したディケクロ一行。
彼らとの問答の果てに協力関係を果たすが、彼らの出会いの後にあるのはもうひと波乱であった。

キーワードは『奇妙』『鏡』『記憶』




第30話:奇妙なリンジン

 

 その日、サクラは士と夏海と共に出掛けていた。

目的は食材の買い物であり、士達の写真館に居候しているサクラ達5名の分を買い足しているのだ。

 

「まだ出会ってそんなに日が経ってないですが、賑やかになりましたね」

 

「そりゃ俺達と同じくらいの人数がもう一組増えているからなぁ。にぎやかになって当然だろ」

 

嬉しそうな笑みを浮かべる夏海と、すまし顔で流す士。

彼らの片手には沢山の買い物をした証の紙袋が抱えられていた。

後から付いて来ているサクラに至っては、目の前が見えないほど積み上げられていた。

 

「おっとっと……」

 

「サクラちゃん大丈夫ですか? 私達が少し持ちますよ?」

 

「だ、大丈夫です。これくらい私が出来なくちゃ……」

 

夏海の助けを遠慮しつつ、視界が見えないままサクラはそのまま運ぼうとする。

それを見かねた士は一息溜息つくと、サクラの持っていた紙袋を奪い取った。

 

「あっ」

 

「無茶をするな。見ているだけのお姫様になりたくないのはわかるが、無茶するというのは違うぞ」

 

士はサクラが持っていた紙袋を持ち直すと、夏海の元へと戻る。

戻ってきた士を夏海が怒っているようにも呆れている見える何とも言えない表情で見つめている中、サクラは少し俯いた。

 

 

(また、力になれなかった)

 

 

(小狼君や、士さん達の力になりたい。でも今の私じゃ……)

 

 

士と夏海が帰路へとついてサクラはとぼとぼと歩いて二人についていく。

街の人々が己の向かう場所へと向かう中、サクラは自分が力自分の無力さに痛感した。

 

――この世界へやってきて遭遇した怪人という未知の脅威。

今まで遭遇してきた人々とは明らかに違うその存在は私達の旅に暗雲が立ち込めた。

幸いにもその場に居合わせた士さん達に助けられ、さらには小狼君達が手にした新しい力。

『仮面ライダー』という存在によって襲い掛かる悪意を対抗できるようになった。

だけど、私はなにもできない無力のままだった。

この世界は今まで旅をしてきた世界と明らかに違う……きっと無力のままじゃ小狼君達が、士さん達が傷ついてしまう。

それだけは嫌だった。自分が傷つくのはまだいい、だけど大切な人達が傷つくのは許せない。

 

サクラが延々と解決できない悩みを頭の中で巡らせていると、そこへ近づく影があった。

……それは黒服姿のネオライダーの構成員。偶然にも買い物の最中の士達を見つけのだ。

二人はサングラスの奥の瞳を野望でギラギラと光らせながら打ち合わせをした。

 

「おい、アイツら指名手配の」

 

「ディケイド一味か。まずはあの弱そうなガキを捕まえるか」

 

ディケイド達の強さは自分達より強いネームドのネオライダー達と渡り合った事を証明している。

正攻法では勝てないと分かり切っているなら、邪道で行くしかない。

人質としてサクラを狙うことにした二人はコッソリと忍び寄ることにした。

 

「……」

 

考え事をしているサクラへとそっと忍び寄る黒服の構成員達。

生憎と士と夏海の二人は気付いていない。絶好のチャンスだ。

そう思って人質にするべくサクラへと魔の手を伸ばした……。

 

 

その時だった、サクラの瞳が銀色に変わったのは。

 

 

――気が付けばサクラはいつの間にか裏路地にいた。

先程まで人々が行き交う大通りの近くを通っていたはずなのに、何時の間にか人気がない所に立っていた。

ここまで来た経緯が記憶になく、サクラは戸惑っていた。

 

「あれ、私、どうしてここに?」

 

周囲には転がったゴミの空き缶と、あふれ出らんとするゴミ箱があるだけで人気らしいものはない。

大通りから覗く僅かな光と薄暗い暗闇がサクラの中にある恐怖心を刺激する。

不安な気持ちが大きくなる中、そこへ自分の手を掴むものが現れた。

 

「サクラちゃん!」

 

「きゃっ!?」

 

軽い悲鳴を上げてサクラが振り向くと、そこにはこちらを心配して見ている夏海の姿。

見知った人間がいて少し安堵すると、夏海が訊ねてきた。

 

「どうしたのですかサクラちゃん。こんなところで何をしているんですか?」

 

「あれ……? 私一体何を?」

 

「こんなところにいたら危ないですよ。ほら、士君を待たせてるんで行きましょう!」

 

夏海に手を引かれて、裏路地を離れていくサクラ。

後に残されたのは薄暗い暗闇が広がる光景と……。

 

「「あぁ……いってぇ……」」

 

その曲がり角にて巻かれた白い砂と、ボロボロの姿で倒れ込んだ黒服達の姿だった。

 

 

~~~~

 

 

 翌日。

この世界へやってきて何度目かの羽根探しに出かける事になった士と小狼達。

新しい羽根の情報を手に入れるべく、出かける一行であったが、そこでとある違和感に気づく。

その違和感を最初に口にしたのはファイであった。

 

「ねぇ、黒さま。気付いている」

 

「ああ、アレか。姫の様子がおかしい事が」

 

黒鋼とファイが一足先に向かって歩いている小狼、サクラ、ユウスケ達を観察していた。

小狼とユウスケが楽しく談話している様子をサクラが笑顔で見守っているという光景が広がっている。

一見いつものサクラだと思われているが、二人は彼女に変化に気づいていた。

 

「サクラちゃん、彼女本人は気付いてないけど妙な気配からするんだよね」

 

「それが何なのか分からないが、俺達に襲い掛かってくる気配はねぇみたいだな」

 

黒鋼が鋭い視線でサクラを見る。

ファイの言葉の通り、今のサクラには何ともないように思えるが、それでも彼女とは違う微かな気配を感じ取っていた。

その隣にいた士と夏海は思い当たる節が頭によぎった。

 

「士君、そういえば昨日サクラちゃんの様子がおかしかったんですよね」

 

「一度俺達とは別の道に向かったってヤツか? アイツも年若い乙女だ。たまには一人の時間も欲しくなるんじゃないのか?」

 

「それがサクラちゃん、私が追いかけたら薄暗い裏路地にいたんですけどそこへ向かった記憶がないみたいなんです」

 

「記憶がないだって?」

 

夏海の言葉を聞いて、士は眉を顰めた。

無意味にそんな治安が悪そうな所へ向かう性格ではないと知っているため、妙な違和感を士は覚えた。

 

「これはちょっと調べる必要がありそうだな」

 

「そうだねぇ。でもサクラちゃんと一緒にいるあの二人にはこの事を黙っておこうか。ユウスケは隠し事するには顔に出やすいし、小狼君はサクラちゃんの事になるとねぇ」

 

「だがどうやって調べるんだ? 姫に何が潜んでいるか分からない今、迂闊に手ぇ出せねぇだろうが?」

 

ファイの言葉を聞いて黒鋼が口を挟む。

確かに今の自分達ではサクラに何が隠れているかを調べる術はない。

どうしたものかと悩む一同……その一方で、サクラの傍らで小狼とユウスケは会話が弾んでいた。

 

「そこでおれ達は王様の前でお芝居をすることになったんです」

 

「へぇ、王様の前でお芝居なんてすごいし面白そうだなぁ!」

 

かつて訪れた国『水上都市コラル』での出来事を話す小狼と、彼らの旅の様子をユウスケは楽しく聞いている。

そんな和気藹々とした様子の二人にサクラはモコナを抱えながら見守っていた。

 

「楽しそうだね、小狼!」

 

「そうだね、モコちゃん。小狼君とユウスケさん、楽しそうね」

 

「ああ、夢中になってごめんね。小狼君が旅をしてきた世界の話があまりにも面白くてね」

 

「いえ、見ているこっちも楽しいですよ」

 

申し訳なさそうにするユウスケにサクラは笑顔で返した。

小狼が何かを嬉しそうに語る姿がサクラ自身にとっても嬉しかった。

できるなら、こんな幸せな光景を眺めていたい……また戦いに出て傷つくは見たくない。

小狼達一同に悟られないようにそう思いながら、サクラは作り笑いを浮かべた。

 

 

『君はもうちょっと、自分に我儘になってもいいんじゃないか?』

 

 

「えっ?」

 

突然聞こえてきたのは誰かの声。

男にも女にも聞こえるその声音は諭すようにサクラの中に響いた。

周囲を振り向くも自分達の他には第三者の姿はない。

サクラの戸惑う姿を見てモコナが声をかけてきた。

 

「どうしたの、サクラ?」

 

「ううん、なんでもない」

 

モコナに心配をかけないように笑顔で言葉を返すサクラ。

彼女の様子に首を傾げる小狼とユウスケだったが、深く聞ける様子じゃないので声をかけなかった。

遠くで様子を見ていた四人も、近くにいた二人もサクラの様子がおかしい事に気づき始めた。

 

 

~~~~

 

 

その様子を遠くから見ている者がひとり……。

それはディケイドを付け狙う謎の男・鳴滝であり、何とも言えない複雑な表情で一同の姿を見ていた。

 

「ディケイド……門矢士、見慣れない仲間を集めてこの世界で失せ物探しか。だがその望みは絶たせてもらう」

 

"この世界"でのディケイド/士の役目を阻もうと鳴滝は次元の架け橋を呼び出した。

銀色のオーロラのようなそれからいくつもの人影が映り、鳴滝は指示を出す。

 

「行け、ディケイドを、門矢士を倒せ」

 

鳴滝が呼び出した仮面ライダーは一旦に互いに顔を見合わせると、次元の架け橋へと潜りこんだ。

次元の架け橋が消えると、鳴滝はそのまま最初からいなかったように姿を消していった。

 

 

~~~~

 

 

一方、その頃。

士・夏海・ファイ・黒鋼は頼打地区内の海浜公園へと辿り着くと、そこで一休みすることになった。

 

「見つかりませんね、羽根の情報」

 

「そうだねぇ。でも代わりの情報は手に入ったよねぇ」

 

夏海とファイが言う通り、記憶の羽根に繋がりそうな情報は見つかった。

すぐ傍に立っている黒鋼が持っている情報端末には『D&P(ディベロープメント&パイオニア)、新エネルギー開発事業をスマートブレインに買収を図られる』という代物だった。

士とユウスケが同じように覗き込む中、小狼が口にしたのは以前訪れた世界での事。

 

「前に訪れたピッフル(ワールド)という国で街一つの発電を賄えるエネルギーとして羽根が優勝トロフィーとして紹介されていたんです」

 

「つまり、この世界じゃサクラの羽根がエネルギー開発の元として誰かの手に収まっているってわけか。悪くない線だな」

 

「だけど今訊ねて大丈夫なのか? なんかほかの会社に買収されそうになってるし、俺達の事なんて取り合ってくれるか?」

 

投げかけられたユウスケの質問に士と小狼は見合わせる。

そして、二人が出した答えにユウスケ達は目をギョッとさせた。

 

「当たって砕けろだ。アポなしで行く」

 

「アポイントメントできるかどうかわかりませんが、最終手段として直接乗り込みます」

 

士はともかく、小狼まで似たような事を言い出して、夏海とユウスケは驚き、黒鋼は呆れ、ファイはなんともいえない笑みを浮かべた。

そんなやり取りをやっている一同から離れて、サクラはモコナと共に近くの自販機へ赴いていた。

 

「サクラー、モコナこれが飲みたーい!」

 

「ふふっ、わかった」

 

サクラが小銭を入れて自販機のボタンを押そうとした時、そこへ視界の端に何か映った。

それは道路の真ん中と倒れてしまった幼い女の子と、そこへと向かう一台のトラック。

トラックは道中に子供が倒れている事に気づいていないのかそのまま走って近づいく。

このままでは敷かれてしまうのではないか、そう思った矢先サクラは咄嗟に走りはじめた。

 

「あぶない!」

 

「きゃっ、サクラ!?」

 

モコナが名前を呼ぶことも気にも留めず、子供を助けようと助けたいサクラ。

なんとか女の子の元にやってきたのだが、既にトラックが眼前まで迫っていた。

その時過ったのは、自分の死。

 

 

「あっ……」

 

 

一瞬過るのは恐怖感と、一つの後悔。

女の子を助けた事を後悔したわけではない。このまま死んだら大好きな君(小狼)にこの気持ちを伝えられないからだ。

黒鋼さんのように早く動けるわけでもない、ファイさんのように特別すごい魔法を使えるわけでもない。

そんな自分の無力さを少しばかり呪いながらトラックに轢かれようとする中、サクラは思わず目を瞑った。

 

――その時だった、またあの声が聞こえてきたのは。

 

 

『やれやれ、仕方がないなぁ……』

 

 

『ハァッ!!』

 

 

その瞬間、サクラの体は少女を抱えて大きくジャンプをした。

自分の意思ではない、誰かの意思によってサクラの体は宙を舞った。

そして少しの間空中を舞った後、地面へと降り立つ。

そこへ、騒ぎを聞きつけた小狼とユウスケが駆けつけてきた。

 

「姫!」

 

「サクラちゃん!」

 

「ん?」

 

「「……ッ!?」」

 

名前を呼ばれて振り向いたサクラ……だが彼女の『変貌』ぶりに小狼とユウスケは驚いて思わず足を止める。

彼女の綺麗な翡翠色の瞳は煌くような銀色へと変わっており、肩まで切っているはずのハニーブラウンの髪は腰まで長く伸び、さらには一筋の銀色のメッシュが入っていた。

先程までなかった容姿の変化に驚いていると、サクラは彼女に似つかわしくない含みのある笑顔で答えてくれた。

 

 

「どうも初めまして。仮面ライダー諸君。オレ(・・)の事はストレンジと呼んでくれ」

 

 

驚いている小狼とユウスケを前にして今のサクラ――ストレンジと名乗った『何者か』は自己紹介をした。

 

大波乱の予感は、突然に始まった。




 地水です、地味にディケクロ4周年でございます。時間の流れって怖い←

今回の話はお分かりの通り、サクラちゃん回でございます。
サクラちゃんの様子がおかしい? 一体何があったのか。

小狼とユウスケの話で出てきた『水上都市コラル』はツバサ・クロニクルのドラマCDで登場した舞台です。
あの話は王様の雪兎さん相手に演劇をするという話でしたが、しんみりとした話でしたと印象残ってます。

羽根の行方は未だにわからず、しかし手がかりは確かにつかんだ。
そんな最中で現れたのはサクラの中に潜む何者か?
アナタは何者!?(CV:ルナドーパント)

次回、ストレンジがディケクロ一行と邂逅します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。