ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》- 作:地水
鳴滝の刺客であるデルタとタイガの襲撃。
士と小狼、そしてサクラに憑依したストレンジは彼ら二人の攻撃を何とか避けるしかなかった。
「くっそ……コイツ、変身させない気か!」
フォトンブラッドによる光弾を飛ばしてくるデルタに対し、士は走りながら様子を伺う。
だが、変身しようと懐に仕舞ったディケイドライバーに手をかけようとするも、そこを狙ってデルタムーバーからの射撃が飛んでくる。容赦のない銃撃を浴びせてくるデルタはさも当然のようなセリフを言い放つ。
「変身させるわけがないでしょう? アナタ、世界の破壊者ですから」
生身の人間でもあるはずの士に容赦なく射撃攻撃を仕掛けてくるデルタ。
元来強弱あるフォトンブラッドの中でも出力の高い銀色の光を有するソレは士が隠れようとしたベンチをはじめとした遮蔽物すら容易く貫通させていく。
「鳴滝のヤツ! 性格の悪いライダーを呼び出しやがって!」
何とか自分の足を馬車馬の如く走らせて士はデルタムーバーから放たれる光弾を回避していく。
せめて自分か小狼が変身できれば、この状況を打破できる……そう思って小狼の方を見ると、状況は芳しくなかった。
「フンヌッ」
道路標識や支柱を障害物を紙きれのように切断しながらデストバイザーを振り回すタイガ。
小狼はストレンジが取り憑いているサクラを抱えながらタイガから逃げ回っている。
その大ぶりながら強烈な一撃を繰り出すそれの間合いに嫌な感覚をしてならないのだ。
「姫、じゃなかったストレンジ! 離れないでくれ!」
「ああ、そうだね。あの白いの……わざと姫様を狙ってる」
「何だって!?」
Sサクラが告げた言葉を聞いて一瞬動揺する小狼。
その間にも一瞬で距離を詰めたタイガが振り下ろしたデストバイザーが小狼達二人へ迫るが、その直撃を避けるように鏡の盾が展開。
強烈な一撃は右へと背けられ、危うく二人に当たるところだった。
鏡の盾を生み出したサクラ……というよりストレンジは隙を生んだ小狼に対し苦言を呈す。
「彼女が最も大切なのは分かるが、大切に思うあまり動揺するのは君のいけない所だよ」
「すいません、でも……!」
「分かってる。そこが君のいい所でもあるけどね」
申し訳なさそうにする小狼と、すかさずフォローの言葉を口にするSサクラ。
その際にSサクラはニコリと笑うが、いつもとは異なるミステリアスな雰囲気を醸し出している笑みに小狼は何処か切なそうに口元を笑みで返す。
――その直後、先程斬り落とされた支柱の残骸が投げ飛ばされてきた。
「ッ、タァ!」
小狼は咄嗟に支柱の残骸を蹴り飛ばし、粉々に粉砕する。
投げ飛ばされた方向を見れば、どうやらタイガが自分で斬り落とした残骸を投擲武器として投げ飛ばしていたのだ。
「お前ら、いちゃつくな」
淡々と言葉を短く吐いた後、まるでサッカーボールの様に残骸を蹴り飛ばしてくる。
振り落ちてくるソレを見て、小狼はSサクラを抱えたままで何とか回避していく。
士と小狼・Sサクラ、デルタとタイガ、相対する両者の逃走劇は続いていく。
その一方で、次元の壁に遮られて助けにいけないユウスケ達はどうにかできないか試していた。
「変身!」
ユウスケが変身したクウガ・マイティフォームは自慢のパンチで次元の壁を破壊できないか試す。
だが、まるで反発力のある何かに押さ返される感触を感じるだけで壁の先へ突き抜けることはできない。
「くっそ、全然効いてない!」
全然ビクともしないと分かっていながらもクウガは再び次元の壁を殴り続ける。
……仮面ライダーの力だけではダメだ、いったいどうすればいいかと、夏海をはじめとした一同が考えていると、そこへ鳴滝が姿を現す。
「無駄だ。そこでディケイドが命を落とすところを見ているがいい」
「鳴滝さん! 士さんだけじゃなく小狼くんやサクラちゃんを狙うのは酷すぎます!」
出現した鳴滝に対し、夏海は強く叫ぶ。
今までは世界の破壊者だったディケイドこと士を排除するために狙ってきたが、今回は部外者であるはずの捨桜蘭やサクラまで巻き込むという流石に目に余る行動があった。
だが、夏海の言葉を聞いてもなお鳴滝が放った言葉は夏海達の背筋を凍らせるほどのものであった。
「彼らはこの世界でのディケイドの目的の要でもある。その彼らを消すのは当然だ」
「そんな……!」
鳴滝が発した小狼達に対する容赦のない言葉に夏海は絶句する。
今までも彼が士に対しての当たりは強かったが、他の人まで巻き込むほどとは思っても見なかった。
夏海が戸惑っていると、隣から金属音が聞こえ、次の瞬間鳴滝に飛び掛かる人影がいた。
それは自慢の愛刀・蒼氷を構えた黒鋼であり、鳴滝目掛けて斬りかかった。
「オラァ!」
「くぅ!?」
鳴滝は咄嗟に避け、時空の壁へと潜り込む。
別の離れた所から出現した鳴滝へ向けて剣先を向けて睨みつける。
「テメェ、さっきからゴチャゴチャ抜かすんじゃねえ……門矢のヤツが破壊者だぁ? 知った事かよ、そんなこと!」
ギロリと鳴滝を睨みつける黒鋼……その脳裏に浮かぶのは、士とのやりとり。
自分達のために対価を見繕ってくれた事、鬼の修練として付き合ってくれた事、ライダーとして戦う自分と共闘した事。
思い出せばいくつもあるが、少なくとも黒鋼にとってディケイド/門矢士にはいくつも借りがある男だ。
そんな男を借りを返せぬまま命を奪わせる訳にはいかない……故に、鳴滝と戦う理由はそれで十分だった。
黒鋼は遠距離にいるであろう鳴滝を斬りかかっていく。
「閃竜・飛光撃!」
鳴滝目掛けて放ったのは、遠距離にいる相手へ斬撃を飛ばす一撃『閃竜・飛光撃』。
当たれば大きな負傷を負いかねないソレを見て、鳴滝は再び次元の壁を生み出して、その中へと潜る。
その際に鳴滝は黒鋼に対し忌々しそうな眼差しを向ける。
「ディケイドを仲間に引き入れる事はいずれ後悔することになるぞ」
鳴滝はそう言い残すと、自ら生み出した次元の壁の中へと消えていく。
代わりにやってきたのは、何体もの怪人達。
サイの外見を持った一体の怪人……メタルゲラス。
イモリの姿を有した怪人……ゲルニュート。
複数のゲルニュート達を引き連れたメタルゲラスというミラーモンスター軍団が出現し、黒鋼とファイは夏海の前に立って身構える。
クウガも次元の壁を破るのは断念して、他の皆の所へ向かおうとすると……そこへ、新たな乱入者がやってきた。
「そーれっと!」
現れたのは紫のエイ型モンスターに乗った紫の人影。
まるでスケートボードのように乗りながら空中を滑空すると、ゲルニュート達へぶつけて引き倒していく。
いったい何なのか……と、クウガ達が驚いている所へ紫の戦士が降り立った。
――仮面ライダー王蛇、彼は杖型召喚機ベノムバイザーを構えてゆっくりと優雅に歩き出した。
「やぁ、Ladies and Gentleman! 遊びに来たよ!」
「その声……まさか、ウワバミ?」
王蛇から発せられた声を聞いてファイは訝しむ。
目の前に現れたそのライダーが以前出くわした男・王蛇だと判明すると、王蛇の方は一瞬だけ顔を向ける。
騎士の面貌のような仮面で表情は隠れて分からないが、きっと蛇のような歪んだ笑みを浮かべている。そんな予感をさせつつ、王蛇は迫ってくるゲルニュート達を迎え撃った。
まず飛び掛かってくるのは一体のゲルニュート。
近くの大きなモニュメントを足場にして飛び掛かるが、王蛇はそれをベノムバイザーを振り回して撃退。
続いて迫るのは別のゲルニュートで背中の手裏剣で殴り掛かろうとするが、王蛇の回し蹴りが手裏剣が届くより早く放たれる。
骨が砕けるような音が聞こえた後、蹴り飛ばされたゲルニュートは地面へと叩きつけられる。
その際に落ちた手裏剣を王蛇は手に取ると、そのままゲルニュート達へ目掛けて投げ飛ばす。
「そぉい!」
投げ飛ばされた手裏剣は華麗に飛んでいき、ゲルニュートへと刺さって炸裂。
手裏剣の一撃を食らったゲルニュートはそのまま爆発し、気が付けばメタルゲラスただ一匹。
その当人であるメタルゲラスは王蛇に狙いを定めると、足に力を込めてそのまま突進。
唸り声を上げて王蛇へと迫るメタルゲラス……だが、それに対し王蛇が繰り出したのは意外な反撃だった。
「出番だよ、っと」
【ADVENT】
ベノムバイザーにカードを装填すると、電子音声と共に地上へ這い出てきたのは一体の大きな紫色のコブラ。
コブラ型モンスター・ベノスネーカーは自慢の長い尾を突進してきたメタルゲラス目掛けて容赦なく叩きつけた。
痛烈な一撃を受けて悲鳴を上げるメタルゲラス……それを見て、王蛇は仮面の下でニヤリと笑う。
「さてと……なぁお二人さん、だったよな? コイツの相手、オレがもらってもいいか?」
後ろの方で静観していた黒鋼とファイにチラリと見て訊ねてくる王蛇――ウワバミ。
その口を開けた蛇のような不気味な笑顔を仮面の下で浮かべつつ、Vバックルのカードデッキから一枚のカードを引き抜いた。
……それは、【CONTRACT】と書かれているだけの白紙の絵のカードだった。
王蛇はメタルゲラスへ向けると、メタルゲラスは嫌そうな咆哮を上げる。
『■■■ッ!!!』
「さーて、お前のその力、頂くぜ」
メタルゲラスは吸収されるようにカードの中へと消えていく。
やがてすべて吸収されると、王蛇の持っていた空白のカードは『メタルゲラス』のアドベントカードへと変化していた。
その様子を見て、黒鋼は眉をひそめて口を開いて訊ねる。
「お前、俺達を助けたのか……?」
「ああ、まあ結果的にそうなったのかな? まあお礼はいいよいいよ、どうせオレが好きでやったことだしなぁ」
自分達を助けた訝しむ黒鋼に対し、王蛇は手に持っているメタルゲラスのアドベントカードをひらひらさせながら笑っている。
何が可笑しいのか分からない黒鋼は王蛇へ睨み続けることをやめないが、それとは対照的に王蛇はまた新たに別のカードを取り出し、今度はベノムバイザーに装填した。
【SWORD-VENT】
「よっ……と。じゃ、これオレからの少しばかりのお手伝い。それっと」
「これって……」
王蛇が唐突に投げ渡してきて、ファイは咄嗟に受け取る。
渡されたものをよく見てみると、……それは、蛇の尾が刀身となった剣型武器だった。
ベノサーベルと呼ばれる強い毒素が強みの武器をファイは"何故こんなものを……"と一瞬考える。
――その隙を突かれてか、王蛇はいつの間にか姿を消していた。
一体何がしたかったのか、黒鋼とファイは互いに視線を合わせて考えるが、すぐ隣で繰り広げられている喧騒を見て意見は合致した。
ファイはベノサーベルを手に、黒鋼と共に次の戦場へと向かって行った。