ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-   作:地水

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 ネオライダーの世界にて現れたるは、黒き幽霊。
狂気と狡猾さを宿すライダーに破壊者とニューヒーロー、そして旅人はどうするのか。


第6話:荒ぶるアクリョウ

 鬼頭尚樹が変身した仮面ライダー……幽汽・スカルフォーム。

自らを【ネオライダー】と名乗った彼は、ゴーストイマジンが使用していた大剣を振るい、ディケイド達へ襲い掛かってくる。

上段から振り下ろされた大剣による一撃が放たれる。その凶刃が狙うのは……小狼。

 

『「おらぁ!!」』

 

「グッ!?」

 

咄嗟にディケイドは当たる寸前に手元を掴み、何とか小狼へ届くことだけは防ぐことに成功する。

ライドブッカーを取り出し、鍔競り合いを始めるディケイドと幽汽は言い争いを行う。

 

「おい、俺達をほっといて変身してない奴を狙うのはないんじゃないか?」

 

『おいおい聞き逃しちゃったわけじゃないよな、お前?』

 

「言っただろう、【今はその小僧をやるのが先だ】ってなぁ!!」

 

幽汽の振るう大剣がディケイドへと直撃し、軽く吹っ飛ばした。

再び小狼へ狙いを定めるも、その前にクウガが立ち塞がり邪魔をする。

 

『「チッ、邪魔だお前」』

 

「小狼、いったん下がれ。こいつの狙いは君だ!」

 

「分かりました!」

 

この場では自身の無力さを痛感した小狼は、近くの物陰へと避難をする。

クウガは先程の破壊された破片から鉄骨を見つけると、それを抜き取り構えを取る。

 

「超変身!」

 

クウガは掛け声と共に再びその姿を変える。

青い瞳と青い装甲を身にまとい、鉄骨は長棒型の武器・ドラゴンロッドへと変貌する。

驚異的な俊敏さと跳躍力を合わせ持つ戦士戦士・クウガ・ドラゴンフォームとなり、幽汽へと攻撃を仕掛ける。

 

「おりゃああ!!」

 

クウガの振るうドラゴンロッドを受け止め、幽汽は横凪に大剣を振るう。

地面を蹴り上げ、斬撃を空高く舞って避けると急降下しながらドラゴンロッドによる叩きつける攻撃を繰り出す。

幽汽は咄嗟に転がる動作で避けると、舌打ちをしながら態勢を立て直す。

 

『「チッ、厄介な!!」』

 

「いくぞ!」

 

地面へと着地したクウガはそのまま幽汽へと向き直り、幽汽へと立ち向かっていく。

 

一方、幽汽に斬り飛ばされたディケイドはなんとか立ち上がる。

戦況を見てみると幽汽とクウガ・ドラゴンフォームが互いの武器で鍔迫り合いをしている光景が見えた。

どちらも実力は互角、少しの間は任せてもいいだろうとディケイドは判断する。

 

「……あっちはユウスケに任せておけばいいか」

 

ディケイドはそう思ってビルの方へ見やると、壁に張り付いたソロスパイダーがクウガの狙っていた。

大方、クウガの猛攻を邪魔する魂胆なんだろうとディケイドは察すると、新しいライダーカードを手にしてベルトに装填した。

 

【ATTACK-RIDE…BLAST!】

 

「おら、落ちてこい」

 

『ギ!?ギシャアア!!!』

 

ライドブッカー・ガンモードの銃身が分身し、数十発にも及ぶエネルギー弾を浴びせる『ディケイドブラスト』が発動。ソロスパイダーが気付いたときには遅し、すべてのエネルギー弾が当たり、地面へと叩き落される。

黒煙を上げるソロスパイダーを見て、幽汽は怒号を上げる。

 

『「チィ!!なにやってんだ!この木偶モンスター!!」』

 

「生憎だったな、俺達相手に不意打ちは効かん」

 

「偉そうに言っちゃって、お前……」

 

偉そうにしているディケイドの言葉に呆れるクウガ。

だが幽汽は二人に目もくれず、何を思ったのか倒れているソロスパイダーに近づくと、ゴーストイマジンの声でこう言った。

 

『お前、もういいよ』

 

―――幽汽は倒れているソロスパイダーの腹部に大剣を突き刺した。

辺り一帯に劈くようなソロスパイダーの悲鳴にも似た啼き声が響き渡る。

 

『ギシャアアッ!!!??』

 

「最後に一仕事しなよ」

 

「なっ、アイツ!?」

 

「自分の仲間を……!!」

 

幽汽の起こした凶行にディケイドとクウガは驚愕する。対して幽汽は突き刺さった大剣を捻り回し、ソロスパイダーの悲鳴を上げさせていく。

すると、周囲の鏡からつんざくような耳鳴り音が響き渡り、同時に鏡面が揺らぎ始める。

その様子を見て、小狼は冷静にその様子を伺う。

 

「……なんだ、これは……"何かが来る"?」

 

『「さぁ来い来い来い!ミラーモンスターども!!」』

 

幽汽の言葉と共に、ビルの窓ガラスから巨大な影が這い出てきた。

巨大な蜘蛛のような姿をした怪物と、ソロスパイダーによく似た外見の怪人が這い出てきた。

蜘蛛型の怪人……『ミスパイダー』と『レスパイダー』はディケイドとクウガに目をつけると、襲い掛かってきた。

 

「こいつら、野生のミラーモンスターか……!」

 

「くそ、これが狙いか!」

 

2人は応戦しながら今の状況を確かめる。すぐそばでは巨大な蜘蛛型の怪物……"ディスパイダー"は手当たり次第に暴れまわり、周囲の建物の一部を破壊していく。

ただでさえ被害が大きい中、二人の目に飛び込んできたのは、幽汽が小狼の目の前まで迫っていた光景だった。

ディケイドとクウガが二体の怪人を相手をしている今、自由の身になった幽汽は当初の目的である小狼へ迫りつつあった。

 

「くぅ……!」

 

『「さぁ、楽しい楽しい狩りの始まりだァ!!」』

 

楽しそうな声を上げながら幽汽は、大剣を小狼へ振りかざした。

小狼は苦渋の表情をしながら、幽汽へ応戦を始める。

 

 

―――――

 

 

同時刻、黒鋼とウワバミはぶつかり合っていた。

黒鋼の繰り出した蹴りをウワバミはステッキで受け止め、攻撃を防ぐ。力を込めて弾き飛ばすと、今度はウワバミが繰り出したステッキで払いのける。

 

「フンッ!」

 

「おっと!危ない危ない」

 

「チッ、剣さえあればもうちっと多少は戦えたんだがな」

 

「仕方がないよ、この世界だと迂闊に剣は迂闊に出せないそうだし」

 

距離を取って態勢を立て直す黒鋼は今は手元にない蒼氷を脳裏に思い浮かべながら相手を睨む。

 

ファイの言葉通りだと、この世界には"銃刀法違反"なる決まりがあるらしく、剣や銃と言った武器を容易に扱ってはならないらしい。それを破ってしまえば、警察という秩序を守る組織の人に捕まってしまうという。

そういうのには経験がないわけではない、かつて訪れた国の一つ……ピッフル(ワールド)やラグタイムワールドでもそうだった。

せめてもの武器があれば、多少は何とかなったが……。

 

「ない物ねだりはしょうがないし、そんじゃオレも頑張りますか……っと!!」

 

「あぶなっ!?」

 

ファイが(恐らくその辺で拾ったであろう)石を投擲し、顔面擦れ擦れに掠る。

その間に態勢を立て直した黒鋼を見て、ウワバミは一息をついて語り掛けてくる。

 

「やーれやれ……中々強いね、君ら。生身でここまで楽しめるなんてのは久しぶりだ。気に入った」

 

「へっ、俺はそのニヤついた顔が何処かのアホ面を思い出して気に入らねえな。二人もいらねえんだよ、二人も」

 

「えー、もしかしてオレの事言ったのー?黒ぴーひーどーいー!」

 

ファイは自分の普段の行いの比べられて抗議するも、黒鋼はスルーしながらウワバミに向き直る。

互いの眼光は相手を見据えて、構えを取る二人。

殺気が満ち溢れる中、互いに相手を仕留めんと動き出そうとしたその瞬間―――。

 

『ギシャアアアアアア!!!』

 

「「!?」」

 

「蜘蛛の怪物……!?」

 

つんざく様な悲鳴と共に現れたのは、巨大な蜘蛛の姿をした怪物……。

その蜘蛛の怪物……ミラーモンスターの『ディスパイダー』はその巨躯を持ってウワバミを含めた三人に襲い掛かってくる。

両者はディスパイダーの突撃を咄嗟に転がって躱すと、やれやれといった表情で襲い掛かってきた相手を見る。

 

「一体なんなんだい?邪魔してくれちゃってさ」

 

「なんだ?テメェの仕業じゃねえのか?」

 

「ハハッ、オレならもうちょっとスマートに不意打ちやってるさね」

 

見境なく暴れ回るディスパイダーを横目にウワバミはステッキを手元に収める。

黒鋼達に顔を向けながら、一枚の名刺を投げ渡す。ファイがそれをキャッチすると、そこに書かれていたのは『ネオライダー所属 ウワバミ』の名前。

 

「今回はここまで。また会うときはやりあおう。じゃあね!」

 

「おい、テメェ逃げる気か!?」

 

「得物を持ってない君達を本気(・・)で倒しても、あまり意味ないと思ってね」

 

黒鋼にそう返すと、ウワバミは駆け足で暴れるディスパイダーをすり抜けて、2人から距離を離していく。

ディスパイダーはウワバミを襲うために追いかけ、八本ある足のうちの前足二本を振り下ろそうとする……。

 

その時、何処からか飛んできたミサイルが前足を直撃し、木っ端みじんに粉砕した。

2人が飛んできた方向へ見ると、自分達よりも身の駆けが倍がある大きな二足型ロボットと、それに跨る機械的な仮面ライダーの姿。

黄色いエネルギーラインと、『χ』が刻まれた紫色の一つ目の仮面が特徴的なそれは、ウワバミが近寄るのを見ると、彼に声をかけてくる。

 

「ウワバミ、退散を提案する。鬼頭尚樹のせいで周囲の野生ミラーモンスターがこの場に呼び出された」

 

「うわぉ、ソイツは厄介だな」

 

「モンスター出現に伴い、【例の要注意団体】が出てくる可能性大。退散を再び推奨」

 

「ならば逃げるとしますか。おっとその前にアイツやっちゃって」

 

「命令受諾、サイドバッシャー再装填開始」

 

二足型ロボット"サイドバッシャー"を駆る仮面ライダー……『カイザ』はハンドルを巧みに操作し、ダメージを受けて身動きが取れないディスパイダーへ狙いを定める。

 

「サイドバッシャー、全砲身準備完了(フルバレルオールスタンバイ)――Fire」

 

サイドバッシャーの両腕にあるミサイルポッドとバルカンの銃口を向け、その引き金を引いた。放たれた銃火器の嵐がディスパイダーに襲い掛かり、その体を硝煙と光子バルカン砲弾で吹き飛ばしていく。

やがて半身を崩れたディスパイダーは大爆発を起こし、エネルギー体となって消えていく。

それを見届けたウワバミは、ロボットの姿からサイドカーの姿へ変形したサイドバッシャーの側部席に座ると、黒鋼とファイの2人へへらへらと手を振り、そのまま発進して消えていく。

 

「アデュー、ディケイドのお仲間さん達。先に言ったあの子は危ない目に遭ってるから急いだほうがいいよ?」

 

「先に行った奴……まさか!?」

 

「小狼君の事か!!」

 

黒鋼とファイは先に行った小狼が危険な事態に遭ってる事に思い至り、現場へ目を向ける。

 

―――そこには、幽汽に追い詰められている小狼の姿があった。

 

 

―――――

 

 

場面は戻り、ディケイドとクウガによるミラーモンスターの戦い。

突如現れたクモ型モンスターを何とか対処している二人。だが、彼らが気にしているのはモンスターの方ではない……。

見れば幽汽に追い詰められている小狼が斬られていた。

 

『「おりゃああ!!」』

 

「ぐあっ!?」

 

なんとか一撃を避ける小狼だが、纏っていた服が切り裂かれ、素肌に一筋の赤い筋が血となって流れていく。

生身の人間を追い詰めるライダーの光景を目撃して、駆け付けようとする。

 

「小狼!!ぐっこの!!」

 

「どきやがれ!!」

 

ディケイドとクウガは今現在相手をしているミスパイダーとレスパイダーをどうにかして、幽汽と対面している小狼の元へ向かおうとする。

小狼は体術の心得があるが、相手は怪人ではなく俺達と同じ仮面ライダー……生身の少年が敵う相手ではない。

 

だが、二体のミラーモンスターをはじめとしたミラーモンスターの出現により思った以上に阻害して近づけない。

 

「どうするんだ士!このままだと小狼が!」

 

「焦るな……何か打開策があるはずだ!」

 

二人がミラーモンスター達を相手にしながら近づこうとする一方、小狼は絶体絶命の状態に追い詰められていた。

目の前に迫りくる黒い仮面ライダー・幽汽が大剣を持って襲い掛かってくる。

 

『「死ねぇ!!」』

 

 

小狼はそれを左足で蹴り飛ばして、地面に無理やりぶつけると、大剣を踏み台にして大きくジャンプ。

大きくジャンプした小狼は仮面目掛けて右足による回し蹴りを繰り出した。

幽汽の顔面に直撃し、一瞬動きを止める……だが、繰り出した右足を空いた手で掴み、力を込める。

 

「なっ」

 

『「いってえじゃねえかこの野郎が!!」』

 

幽汽は小狼を掴んだまま大きくスイングしたのち、近くの柱へと投げ飛ばす。叩きつけられた小狼は、身体中に走る痛みのせいか身動きが取れずにいる。

そこへ幽汽は近づいていき、小狼の首を掴みあげる。

 

「とっととくたばれよ」

 

『あっはははは!やっちまえ尚樹ィ!!』

 

「ぐっ……」

 

掴みあげた小狼の首に力を込めていく幽汽。

このままではへし折る気なんだろう、そう思ったディケイドとクウガは被弾覚悟で向かおうとするが間に合いそうにない。

最悪の状況が望まれる中、幽汽は小狼の息の根を文字通り止めるために締め上げていく。

首を絞められていることにより息苦しくなった小狼は脳裏を過るのは……サクラの姿。

 

 

(……こんなところで死ぬのか……!……サクラを記憶を戻せないまま……!!)

 

 

小狼が死が目の前に迫る。このまま助からないのであろうか。

 

 

―――その時だった、幽汽の顔に弾丸が直撃したのは。

 

 

『「ぐあああああっ!?」』

 

「かはっ……!?」

 

「小狼!!」

 

幽汽に着弾した時に手放された小狼をクウガが近くに駆け寄り、彼を保護する。

ディケイドは何が起こったのかと驚愕していると、自分の近くにいたレスパイダーの頭部に弾丸が直撃し、破壊する光景を目撃する。

その後もミラーモンスターを追撃していく様子を見て、ディケイドはある推測を思いつく。

 

「誰かが狙撃しているのか……?しかもミラーモンスターを倒せるほどの装備で」

 

誰がなんのためにミラーモンスターを倒しているかは分からないが、何にしても幽汽が小狼から離れた今、チャンスと思い、一枚のカードを取り出す。

 

"ATTACK-RIDE(アタックライド) INVISIBLE(インビジブル)"、自身を透明化によりその場を抜け出す効果を持つライダーカードの一つだ。

クウガの元へ駆けよると、カードを装填して効果を発揮する。

 

「ユウスケ、こっちに来い。あの二人の場所まで逃げるぞ」

 

「ああ、わかった」

 

ディケイド、クウガ、小狼の三人の姿は透明化していき、この場所を離脱する。

やがて、銃弾の衝撃から復帰した幽汽は三人の姿がすでにない事に気づくと、激昂しながら叫ぶ。

 

「ああああああ!!畜生がぁぁぁぁぁぁあ!!逃げやがったなぁぁぁ!!」

 

……その後、幽汽は自身の怒りと憤りをディケイド達や謎の狙撃手が倒し損ねたミラーモンスターへ八つ当たりで倒しながら何処かへと消え去った。

 

その様子を見ていたのは二つの人影。

緑の複眼を輝かせる人影は、もう一方のオレンジ色の複眼の相手に話しかけていた。

 

「ネオライダーと交戦していた彼らをどう見る?」

 

「さてな、どうにも私はそういうのは得意ではないです。ただ一つだけ言えるのは」

 

そういうと、オレンジ色の複眼の相手は先ほどまで戦っていた三人の一人を思い出しながら呟いた。

 

4号(・・)がいるなら、きっと悪い奴らじゃないでしょう」

 

「そうなのか……よくわからんな」

 

 

ネオライダーの世界での戦いは続いていく。

未知なる『第三勢力』の影が見え隠れするように……。

 

 

 




 どうも地水です。サウザーが強すぎるんじゃあ。

ネオライダー・幽汽、二対一もあって場数踏んでるディケイドとクウガに対しては対して優勢を取れてませんが、その分狡猾さで補っていきます。
黒服さん達戦々恐々してこわいだろうな!

一方、黒鋼&ファイVSウワバミ戦、ファイの戦闘描写少ないのは元々黒鋼VSウワバミという構図で書いていたため……個人的には一対一の方が進めやすい気がする。
何気に第2のネオライダー、カイザ登場。口調からして有名な草加雅人ではないですが、果たして何奴なのか。

小狼達を助けた謎の2人は一体誰なのか……?正体については分かる人には察しがつきます。(それが正解だとは言ってはいない)

次回、次元の魔女こと侑子さん登場!お楽しみに


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