『わ、私が舞台に!?』
『お願いします!エキストラの方が急に体調を崩されてしまって!少しでいいですから代理として舞台に立っていただけないでしょうか!』
『急にそんなこと言われても…!』
『時間がありませんわ!カンナさん!急いでアクアさんを控え室へ!ついでに衣装へ着替えさせて下さい!』
『よーし任せろ!』
『待ってください!まだやるとは…!』
大帝国劇場の公演があった次の日。
帝都はいつも通りの平穏な日常を送っている。
大通りを人々が歩いている中にソラとドナルドとグーフィーの姿があった。
「こっちの通りは初めて来たけど、やっぱりここも人が多いな」
「随分と賑やかだね」
「特に大きな事件も起きてないから心配ないね」
今日は帝都中を歩き回り大きな事件が起きていないか確かめようということだった。
誠十郎たちは休みということで各々で自由に行動している。
朝から観光がてらで見回っているが特別大きな事件が起きている様子もなく降魔も現れていないため平和そのものである。
「……………」
するとソラは急に立ち止まり辺りを見渡した。
「ソラ?」
「どうしたの?」
急に立ち止まったソラにドナルドとグーフィーは声をかけると、ソラは独り言のように呟いた。
「こうやってみんなが平和に過ごせてるのは、誠十郎たち…帝国華撃団のおかけなんだよな」
降魔は常に神出鬼没。
いつどこから現れるのか分からない。
にも拘らず、帝都の人たちがこうして平和な日常を送れているのは誠十郎やさくらたちが守っているからである。
友達であるヘラクレスも街の平和を守りHEROと呼ばれているため帝国華撃団はそれに似ているとソラは思うのだった。
「それだけじゃなくてさくらたちも舞台劇でもみんなを笑顔にしてるよね」
「昨日の公演も心を動かされちゃったよ」
もちろんドナルドもグーフィーも理解しておりさくらたちを絶賛していた時だった。
「キャァァァァァ!!?」
『!?』
急に悲鳴が聞こえ辺りを見渡すと、大通りのあちらこちらから傀儡機兵や降魔がどこから途もなく現れ暴れていた。
人を襲ったり建物を破壊したりと縦横無尽に暴れまわる降魔たちから人々は慌てて逃げ出し平和だった光景は地獄絵図へ一変してしまう。
「降魔だ!」
「みんなを助けないと!」
「いこう!」
ソラとドナルドとグーフィーはそれぞれ自分の武器を手にして逃げていく人たちをかき分けながら降魔へと向かっていった。
「はぁ!」
ソラはキーブレードを横一線に振るい数体の傀儡機兵を切り伏せる。
次々に襲いかかってくるもうまく避けながら倒していく。
「サンダー!フリザド!」
「えーいっ!」
ドナルドも様々な魔法を駆使して降魔を倒したり、グーフィーも盾を振り回して傀儡機兵を吹き飛ばしていく。
互いに連携を取りながら降魔を倒していくソラとドナルドとグーフィー。
そして徐々に数が減っていき残すは空を飛ぶ降魔だけとなった。
「これで終わり!」
そして最後の1体にソラは高く跳んでキーブレードを上から振り下ろして着地した。
現れたすべての降魔を倒し終えたソラたちは一息をつく。
「やったな!」
一安心して笑い合っていたのも束の間、ソラたちの目の前に大きな魔方陣が現れそこから巨大な何かが姿を現した。
それは怪物のような容姿をしており機械の装甲を装着している巨大な存在だった。
傀儡機兵『狂骨』
傀儡機兵と融合した巨大な降魔である。
狂骨はソラたちを見つけるや否や断末魔のような叫び声を上げて威嚇する。
「また降魔!?」
「今度はすごく大きいよぉ!」
「コイツも倒すぞ!」
狂骨の大きさに少し圧巻されるもソラはキーブレードを握りしめて立ち向かっていった。
狂骨に二撃、三撃と攻撃を繰り出すも効いている様子がなく大きな爪を振り下ろしてきた。
「うわぁ!?」
咄嗟にソラはでんぐり返しをするように狂骨の爪をかわして構え直す。
「ファイア!」
「そーれっ!」
ソラに続きドナルドとグーフィーも狂骨に攻撃を繰り出すも中々倒しきれずジリジリと追い詰められてしまう。
「しぶといな…!」
他の降魔と違い攻撃力や狂暴性が桁外れに高い狂骨にどうすれば倒せるのかソラが考えているといいことを閃いた。
「そうだ!ドナルド!グーフィー!」
「ん?」
「グワ?」
ドナルドとグーフィーにソラが耳打ちをすると2人は頷いた。
そして実行に移すべく3人は動いた。
まずグーフィーが前に立ち盾を構え、その後ろでソラとドナルドが支えるフォーメーションを組んだ。
『トリニティラッシュ』
ガードをしながら目標へ攻撃を与えることができる3人の連携技である。
狂骨はお構い無しにソラたちへ大きな爪を振り下ろすと、グーフィーの盾に弾かれてしまう。
それにより狂骨は大きく後ろへ仰け反ってしまうと、ソラたちは動いた。
『いっけぇー!!』
そのまま勢いよく火を吹きながら突進して狂骨の顔面へと直撃する。
手応えがある攻撃を受けた狂骨の頭の装甲に大きなヒビが入り仰向けに倒れていった。
「やったー!」
「作戦通り!」
「今のうちに倒そう!」
立ち上がる前にトドメを刺そうとした時だった。
いつの間にかソラたちの後ろから別の狂骨が姿を現した。
しかも1体だけでなく計3体の狂骨たちはソラたちにジリジリと詰め寄って来る。
その隙に倒れていた狂骨も立ち上がり他の狂骨たちと一緒にソラたちを取り囲んでしまう。
「増えた!?」
「囲まれちゃったよぉ!」
「どうしよう!?」
どんな状況だろうと諦めずにキーブレードを握るソラであるが圧倒的不利な状況であることは確かなこと。
3人でようやく狂骨1体を追い詰めたというのに狂骨の数は4体に増えた。
正に絶体絶命。
そして狂骨たちが一斉に襲い掛かろうとした時だった。
「Grace de Diable!Arbitle d'enfer!」
どこから途もなく無数の光の弾が飛んできて狂骨たちに降り注ぎ吹き飛ばした。
突然のことにソラたちは唖然となるも、もしやと思い光の弾が飛んできた方向を見ると、
『帝国華撃団!参上!!』
そこには帝国華撃団の霊子戦闘機が並んでいた。
降魔出現の連絡を受けて誠十郎たちはここへ駆けつけたのであった。
「誠十郎!みんな!」
「ソラ!大丈夫か!」
助けに来てくれた帝国華撃団の元へソラたちは駆け出していき礼を言う。
「ありがとう!」
「さっきのはクラリスの魔法だったんだね」
「間に合ってよかったです」
先ほど狂骨たちを吹き飛ばした光の弾はクラリスの魔法であることをドナルドは当てた。
駆けつけた時には既にソラたちは狂骨に囲まれていたためクラリスは咄嗟に魔法を使ったのである。
しかし手応えが浅かったのか狂骨たちは立ち上がって帝国華撃団と対峙する。
「もう起き上がったか…!さくら!初穂!あざみ!アナスタシア!一気に決めてくれ!」
『了解!!』
クラリスは魔法を使った反動でエネルギーを消費したため誠十郎はさくらと初穂とあざみとアナスタシアに命令を下すと4人は前に出る。
まず最初に飛び出したのは初穂。
「悪いヤツには神罰てきめん!御神楽ハンマー!」
装備しているハンマーが火を吹いて回転していき大きな炎の竜巻が出来上がる。
そのまま狂骨目掛けて回転してハンマーを頭部へ振り下ろすと、狂骨は爆発して倒される。
次に動いたのはあざみ。
「望月流忍術・奥義!無双手裏剣!」
別の狂骨に無数の手裏剣を飛ばし口、喉、関節と的確に急所へ当てていく。
そして堪えきれなくなった狂骨は粒子となって消滅する。
それに続きアナスタシアも動く。
「運命を閉ざす青き流星!アポリト・ミデン!」
右手の傘を広げて先端を更に別の狂骨へ向けるとエネルギーが溜まり始め解き放たれる。
そのまま狂骨の体を貫通して爆発する。
そして最後に動いたのはさくら。
「蒼き空を駆ける千の衝撃!天剣・千本桜!」
刀に桜色のオーラが纏い横一線に振るうと花吹雪のように斬撃が放たれる。
それが最後の狂骨に当たり上半身と下半身が分断され粒子となって消える。
さくらたちがそれぞれの必殺技を繰り出したことにより、見事に狂骨たちを倒すことができたのであった。
「すげぇ…!」
誠十郎の時も驚いてしまったがさくらたちの必殺技を見て再びソラたちは驚いてしまう。
しかし我に返り誠十郎の機体へ駆け寄り礼を言う。
「ありがとう誠十郎。助かったよ」
「いや、お礼を言うのは俺たちの方だ。街の人たちを守ってくれてありがとう」
降魔の警報が発令され急いで準備を整えた誠十郎たちだが、もしソラたちが現場にいなかったら街の人たちに被害が及んでいた。
駆けつけるまでに降魔たちを引き付けてくれたソラたちに誠十郎は逆に礼を言うのだった。
「それにしても流石だな…」
自分たちが苦労した狂骨を一撃で倒してしまったさくらたちにソラが感心した時だった。
「ッ……これは?」
クラリスが何かに気がつき辺りを見渡した。
それに気がついたドナルドはクラリスが乗っている機体に話しかける。
「どうしたのクラリス?」
「感じます…!何か、邪悪な気配を…!」
「えっ?」
「降魔か?」
もしやまだ降魔が残っているのかと思い辺りを見渡すも姿が見えなかったがクラリスが感じているのはまた別の気配であった。
「違います!降魔とは別の何かがいます!」
「降魔じゃない?」
「クラリス、それって一体…?」
クラリスが感じている気配とは一体何なのかと思った時だった。
突如ソラたちの前に黒い靄のようなものが現れ横一線に広がった。
そしてそこからそれは現れた。
それは黒く小さい人のような形をしており頭からは触覚が生え、2つの黄色の目がソラたちを捉えていた。
しかも1体だけでなく次々にソラたちの目の前に姿を現していく。
「な、何だよアレ!?」
「降魔…!?いや違う!?」
「私が感じたのはアレです!」
「モノノケの類い…!?」
「あれは一体…!?」
「気をつけろみんな!」
降魔ではない得体の知れない存在に帝国華撃団が身構える中、ソラたちは揃って声を上げる。
『ハートレス!!』
それはソラたちが訪れた世界で幾度もなく対峙し続けた魔物『ハートレス』だった。
「ハートレス…?」
「知ってるのソラ!?」
「あぁ!アイツらは闇の魔物だ!」
ハートレス
別名『心なきもの』
心を失った存在の成れの果て。
心を奪うという目的で活動を続ける闇の存在である。
「ここは俺たちに任せて!」
ソラとドナルドとグーフィーは前に出てハートレスたちと対峙をする。
しかし、
「そうはいかない!俺たちは帝国華撃団だ!帝都を守ることが俺たちの使命だ!」
誠十郎は下がらずソラの隣に立ち刀を抜刀する。
降魔でなかろうと帝都を脅かす脅威を振り払うためにハートレスと対峙する。
それはさくらたちも同じ。
「そうです!例え降魔でなかろうと私たちが帝都を守らないと!」
「えぇ!ソラさんたちだけに任せるワケには参りません!」
「ハートレスだか何だか知らねぇけど倒しても大丈夫なんだろ!」
「ここで引いたら忍者の誇りを捨てることになる!だからあざみも戦う!」
「勇者様たちに任せる程、私たちは弱くないわ」
さくらもクラリスも初穂もあざみもアナスタシアも誰1人として下がらず未知の存在であるハートレスと対峙する。
帝国華撃団として強い意思を見せつける誠十郎たちにソラは笑顔になってしまう。
「分かった!一緒に戦おう!」
「あぁ!目標、ハートレス!帝国華撃団・花組!出撃するぞ!」
『了解!!』
そして誠十郎の掛け声と共にソラたちは帝国華撃団共に共にハートレスたちへと駆け出していった。
「それっ!」
「はぁ!」
「ていやぁ!」
ソラと誠十郎とさくらはハートレスの一種『シャドウ』たちに各々の武器を振り下ろし倒していく。
慣れた感覚でソラはシャドウを倒すも、誠十郎とさくらが同じように刀を振るうとシャドウたちは避けるように地面へ沈み移動する。
「えぇ!?地面に潜った!?」
「何だこの能力!?」
「後ろに回り込まれないように気をつけて!」
シャドウたちの能力に戸惑ってしまう誠十郎とさくらであるが、ソラは対策方法を教えて次々に倒していく。
「そこっ!」
一方でアナスタシアは銃を撃ち続け別の種類のハートレス『ソルジャー』を倒していく。
しかしソルジャーたちの動きが素早く、1体ずつしか倒せていない。
「すばしっこいわね…!」
「攻撃を防いで怯んだところを狙うしかないよ」
ソルジャーたちの素早さに苦戦するアナスタシアであるがグーフィーが倒し方を教える。
そしてソルジャーたちが一斉に襲い掛かってきたところを合わせるようにグーフィーとアナスタシアがガードしようとすると、無数のクナイが降り注ぎ的確にソルジャーたちへ命中し消滅する。
「素早さならあざみの方が上」
着地したあざみは鉤爪を構えてソルジャーと対峙する。
グーフィーとアナスタシアは頼りになるなと思いながらも任せきりにはさせまいと立ち向かっていく。
「ぐぬぬぬ~!」
初穂も奮起はしていたが大きな体格のハートレス『ラージボディ』と押し合いをしている。
霊子戦闘機に負けず劣らずの体格であるため豪腕な腕に少しずつ押されてしまう。
「コイツ…!」
「初穂!」
「今助けます!」
ラージボディのパワーに押されていく初穂を助けようとドナルドとグーフィーはラージボディの背中へ回り込む。
2人は同時に魔法を放ちラージボディの背中へ直撃させる。
それによりラージボディの力が緩んだ隙を初穂は逃がさずハンマーを振りかぶる。
「食らいなぁ!」
ハンマーが直撃したラージボディは数回バウンドして消滅する。
「ありがとな2人とも!」
「お礼には及びません」
「早くハートレスを倒そう!」
礼をしっかり言う間もなく再び別のラージボディが数体現れる。
これも倒すべくドナルドとクラリスと初穂は立ち向かっていく。
次々に現れるハートレスを倒していくソラたちと帝国華撃団。
そしてついに最後の1体となったハートレスにソラはキーブレードを振り下ろした。
「ふぅ…」
ようやくすべてのハートレスを倒したソラは一息ついてみんなと合流する。
「みんな大丈夫?」
「あぁ」
「もちろん」
誰も大きなダメージもなくハートレスを倒したことにホッと胸を撫で下ろすとソラは誠十郎にハートレスについて聞いた。
「誠十郎。今までに帝都でハートレスが現れたことってある?」
「いや、あんな魔物見たことがない」
誠十郎曰く、ハートレスが現れたのは今日が初めて。
つまり今までハートレスはこの世界にいなかったということになる。
にも拘らずハートレスが現れたということは…
「もしかして、誰か心に大きな闇を持っているヤツがいるってことか?」
ハートレスの好物は人の心の闇。
それに反応して現れることもあれば、闇の使い手に従うこともある。
つまりこの世界で心に大きな闇を持っている存在に反応して現れたということになる。
「ハートレスは心の闇に応えたってことか?」
「けど、一体誰が…?」
「うーん?」
この中にいないとなると帝都にいる誰かということ。
しかし一人一人調べるとなると骨が折れてしまう。
一体誰の心の闇に反応してハートレスが現れたのかソラが考えた時だった。
「いや~流石は帝国華撃団!相変わらずの強さだなぁ!」
『!!??』
突然誰かの声が聞こえソラたちが辺りを見渡すと路地裏から1人の男が現れた。
初めて見かける男にソラたちが首を傾げる中、霊子戦闘機に乗っているさくらたちは驚きを隠せずにいた。
「う、うそ!?何で!?」
「どうして貴方が…!?」
「オイオイ…!?どういうことだよ!?」
「あり得ない!」
「だって、あの時…!」
「さくら…?どうしたんだ…?」
霊子戦闘機から聞こえるさくらたちの動揺の声にソラたちが心配そうになるも、誠十郎も同じように驚いてしまっている。
「ど、どうなってるんだ…!?何で…何でお前がこんなとこにいるんだ………
朧!!」
「キッヒヒヒ!久しぶりだなぁ!帝国華撃団!!」
ゴーグルの仮面を着けている『朧』と呼ばれた男は動揺している誠十郎たちにギザギザの歯を見せながら三日月のような笑みを浮かべるのであった。