2026年。6月8日。月曜日。
夕方、SA:Oにログインした俺は、そのまま自室でうとうとしていた。適度に陽もあって、暖かく、さっぱりとした良い天気だった。
「ん⋯⋯」
寝返りをうつように、俺は体を左に向ける。すると、手がベッドではない何かに触れた。柔らかく暖かな感触に、二度三度と手を動かす。
「んっ⋯⋯ふ⋯⋯」
俺の声ではなかった。
丸みを帯びた、可愛らしくも艶やかな声が耳に届く。弄る手を動かせば動かすほど、その声は艶っぽさを強めていった。
「は⋯⋯キリト⋯⋯」
「んんっ!?」
今、確実に名前を呼ばれた。
俺は意識を覚醒させ、目を開いて目の前を確認する。
そこには、俺にぴったり寄り添うようにして寝息をたてるストレアがいた。そして、俺の右手は何をどう見ても彼女の臀部へと伸びている。
「⋯⋯んぉっ!?」
たっぷり3秒かけて自分のやらかした事実に気付き、慌てて手を引き戻す。ストレアはまだすぅすぅと心地良さそうな寝息をたてたままだ。
それにしても、どうしてここにストレアが。大方、俺が寝かけている間に用か何かあって来て、そのまま俺の隣で寝てしまったのであろうが。
しかし、まぁ⋯⋯。
「気持ちよさそーに寝てんな⋯⋯」
これは起こすにしのびない。しばらくこのまま寝かせてやろうか。
だがそれはそうと、俺はそろそろ起きなければいけないので失礼させてもらうとする。
そう思って体を起こそうとするが、服が何かに引っ張られるようにして上手く起き上がれない。見ればストレアが俺の袖をぎゅっと握っている。
「しゃーないな」
ストレアが起きるまで付き合ってやるしかあるまい。急ぎの用事もないし構わないだろう。
そう思って、改めて隣のストレアに意識を向ける。
右手で服の二の腕あたりを、左手で裾を掴み、ガッチリとホールドしている。けっこうな力で握られているため無理に外そうとすれば起こしてしまうだろう。
間近に見る顔は可愛らしくも綺麗で、端正な美人顔をしている。頬にほんのりと差す薄桃や唇の赤が血色の良さを感じさせた。
肢体は触れるか触れないかの微妙な距離を空けていて、トワレの甘い香りがした。
「キリト⋯⋯」
そう、寝言で口にする。全く呑気なものだ。こっちは余裕がなくて心臓がバクバクと音を立てているというのに。
ふにゃりと幸せそうに破顔して、俺との僅かな距離を詰めようと身をよじった。
一体どんな夢を見ているんだか。
起きたら聞いてやろうと思いながら、俺はストレアの髪を撫でた。甘えた猫撫で声で応えがあるのを確認して、俺もまた目を閉じる。